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『粉焼き』
鍋がうまい季節に 何故たこ焼きなの?
「うちじゃ冬になると これが夕食になる」
彼女がつつき回しながらそう言った
僕は君の食生活をあまりよく知らないけど
それでも 一応食えるなら それを食べるよ
本音は鍋だけど とりあえず何でもいいんだ
早速つまようじでつつき食べてみたら
おや?いつもより何か足りない
コリっとしないから タコの切り身が無いようだ
粉焼き
ねえ? タコ入れなければ
そう呼ぶしかない食べ物
うまいけど
Ah 粉を丸く焼いて ソースかけただけ
僕は君の料理にケチつけたくない
そんな 粉焼きを全部食べてあげよう
「イヤなら 無理に食べなくていいから」
彼女は泣いた
嘘泣きだった
タコをなんでいれないのか訊かないの?
と、3個同時に 口に運ぶ君
そんなことより、食べ過ぎなんだよ
粉焼き ねえ
タコが嫌いならば そう素直に言えばいい
それなら イカやお肉でも 代わりがあるだろう?
粉焼き ねえ
ただ 粉だけだから かなりお腹が膨れる
それでも
Ah 君はおいしそうに 口いっぱいほおばる
粉焼き ねえ
タコが入ってない 粉だけ焼いたものが
二人の食卓に並んでる それが悲しいよ