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世界最高の錬金術士、異世界地球にて  作者: ライナ・スニーク


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1/1

プロローグ〜転生は異世界にて〜


「し、師匠……! 師匠!」

「ああ……聞こえているさ……ロイド……いいかい……錬金術を悪用するんじゃないよ……私の後は君に、任せた……」

「ぼ、僕なんかじゃ……まだ……まだ無理ですよ! 師匠の後継者なんて!」

「ふふ……もっと早く弟子を取っておくんだったなぁ……500年から先は覚えてないが、私は……これだけ長生きしたというのに、今更後悔ばかりだ……」

「師匠……!」

「大丈夫……君にならできる……君になら……──」


 この日、至高の大錬金術士と呼ばれた隠者アルケスは、ただ一人の弟子に見守られながら大往生を果たした。

 その類稀なる錬金術の才能によって齢は1000を越え、見た目も20歳程度の若さを保っていたが、とうとう延命が限界になっていることに気付いたのが20年前。慌ててロイドという少年を弟子にして、自分のあらゆる知識を伝授し、悪に加担しないよう限定封印処置も施して……。それでもまだまだ足りなかったが、時間は待ってはくれなかった。

 闇の中に溶けていくアルケスの魂。


 そしてアルケスは、再び目覚める事となった。アルケスは目覚めてすぐ、自分の置かれている現状を理解する。

 場所はアースという世界、国は日ノひのもと、名前は当然アルケスではない。

 新たな名前は杉原すぎはら ただし、冴えない16歳だ。

 両親と弟妹がいるが、関係は良好とは言えない。理由は、正がボーッと日々何事もなく生きようとするぼんやり人間であり、弟妹が才能を発揮していく中で何もしようとせずに、無意味に生きてきたからだ。

 アルケスが覚醒するまでの正は、才能のある弟妹と比較してまるで無才な自分を諦観しており、彼なりの努力はしたものの花開く事はなく、両親共に弟妹を可愛がっており正はほとんどいないものとして放任していた。


 弟のみつるは14歳になってすぐに頭角を表し、すぐに剣士系ジョブの二番目である剣豪になったため、将来的には剣聖にまで至るのではと目視されている。

 妹のまつりは12歳で天才と持て囃され、13歳になって魔法使い系ジョブの三番目である魔導士に至っている。

 対して正は……武術系のジョブも魔法系のジョブも上手くならず、その他のジョブも空振りに終わり、冒険者の才能ナシと烙印を押されている。


 とにもかくにも、なんの才覚も発揮しなかった正であったが……。

 それも今日までの話である。

 アルケスこと正はベッドから起き上がると、大きく伸びをした。


「うーん……なんとも……まさか私が転生する事になるとは……構想はあったものの、流石に不老遅死程度で研究を打ち切ったというのに、神のいたずらというものだろうね。しかし、前世の記憶は酷く曖昧だな……」


 アルケスという錬金術士だった事は覚えている。錬金術の頂に立った事も覚えている。錬金の事も全て覚えている。ロイド……という弟子がいた事も覚えている。

 が、それ以外の事は朧気で、今こうしている間にも情報が零れ落ちていくような、奇妙な感覚があった。


「もう少し早く前世の事を思い出せていたら……などと悲観しても、無意味なものだよ、正くん。道なんてどこにでもあるものだ」


 だらしなくヨレている制服に《修繕》と《清掃》の魔法を使う。新品同様になった制服袖を通し、鞄を手に部屋を出る。

 今日から正となった自覚は芽生えた為、家族というものの存在が新鮮だったが……とはいえ、正として家族から冷遇されていた事は克明に覚えており、正の怒りと悲しみもまた、心に刻み込まれている。

 両親との会話はもう数年はなく、料理も正の物は用意されない。勝手に作って勝手に食べろというスタンスだ。材料を使っても文句は言われないが、正は料理ができなかった為、簡単なものしか食べていない。

 正はクスクスと笑いながら、家族団欒しているであろうリビングの前を通り──入る事なく、真っ直ぐ玄関から家を出た。


(もう戻る事も無いだろう。正としても、この家に特別愛着がある訳でも無し。才能の有無で子への接し方を変える親に、兄を汚物を見るようにする弟妹と、下劣な人達にも用は無し。彼の痛みは私の痛みでもある、二度と関わりたくないものだ)


 ──リビングから聞こえた、四人の楽しそうな話し声についカッとなってしまった。

 アルケスとして長く生きた記憶はあるが、数十年を過ぎてからはどんな時にも感情は大きく動く事は無かった。穏やかで優しく慎ましい至高の錬金術士にして隠者と評される、そんなアルケスは今、大きな感情のうねりに突き動かされている自分に笑いが堪えられなかった。


「いやぁ……若さとは良いものだよ。薬で調整された若さにはない、情熱と勢いがある」


 もう二度とあの家には帰らない事を決め、そして学校にももう行く必要が無いと判断した正は、近くの公園へ向かうのだった。


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