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霧刀の戦姫

 平和な世界ガーリーライフ。人間と妖精が暮らす緑豊かな世界。人間は各地に村を作り、村には妖精が守護者として人々と共に世界の繁栄につとめていた。妖精は魔法を使い、枯れた大地には雨を降らせ、疫病も、消し去ることができた。広大なガーリーライフの大地は、瞬く間に人間の知恵と妖精の魔法で発展を続ける。

 増え続ける人口と共に妖精たちは不吉な予兆を感じた。東の空から闇が広がったのだ。

 大邪神が闇の次元から突如現れた。大地を揺るがしていく闇。大邪神は悪の軍団を召喚すると、街を次々と襲った。人々の抵抗を前に情け容赦ない悪の軍団は殺戮の限りを尽くす。妖精たちと人間たちは力を結集して戦った。男たちは剣を手に持ち、家族を守るために戦いに身を投じていく。

 妖精たちは人間に魔法の力を与え、闇の力に対抗できるようになると、大邪神討伐に向けて大規模な攻撃に打って出た。妖精たちも殺されていくなか、2人の人間が大邪神と対峙した。

 霧刀と呼ばれる刀を手にした少女マナ。人類最強の剣の使い手である青年シタク。魔法で二人を寄せ付けない大邪神。呪いの魔法でシタクを殺した時であった。そこに一人の妖精が自らの命を犠牲にして、大邪神の魔法を封じることに成功した。

 マナはその隙を逃さずに大邪神の首を刀の一閃で切り落とした。その瞬間、闇に覆われていた空に光が差し、悪の軍団は光りに包まれ消えていった。

 ガーリーライフは、多大な犠牲を払い悪を倒すことができた。マナはシタクのそばにフラフラになりながら歩み寄った。刀を地面に落とし、その亡骸に手を添えて抱きしめるように倒れ込んだ。戦友であり、兄のような存在であったシタク。失ったものがあまりの多すぎる戦いであった。

 亡くなった者たちへの祈りが終わると、人々は再建のために動き出した。

 ガーリーライフは光を取り戻し、繁栄を広げ続けていた。村は集結して国となり、各地に大規模な都市が作られていった。先の大戦の英雄たちが、各国を治める。人間たちにはいつ悪が再び戻ってくるかの恐怖があった。妖精たちは人間たちから魔法の力を取り上げることはしなかった。彼らの勇気と犠牲がなければ、悪に滅ぼされていたからだ。

 しかし、この選択が人間たちに亀裂を生むこととなる。国同士による争いが頻繁に起こるようになったのだ。人間たちの争いに大きな悲しみを抱いた妖精たちは、魔法の力を取り上げガーリーライフから消えていったのだった。

 魔法の力を失っても人間たちの争いは止まることはなく、そして霧刀の戦娘も戦場に駆り出されていた。彼女は戦陣に立つと相手の軍勢に単騎で乗り込み、一番の強者に刃を一閃放つだけだった。相手の武器と心を砕く。マナは誰も殺さずに戦いを終える。魔法が無くとも、マナに敵う人間は存在しなかった。

 アップルランドと呼ばれるマナの国は戦をすることよりも、守ることを国の理念とした。攻め込まれることない国。攻め込まれたとしても霧刀の戦姫が守る国。アップルランドにはシタクの石像が建てられ、その足元には錆びたシタクの剣が飾られていた。


「シタク。あなたが居たら、どうするのかな。こんな戦いばかりの日常を、あなたならとめられるのかな」


 花を飾るマナの瞳には、もう戻ることのないシタクの笑顔が浮かんでいた。

 そして10年の時が経過していった。

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