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5話

 



「ほら、アルベル」

「うん……」


 ピエールに背を押され前へと出た。


 十年前と随分と変わってしまったお義姉様と伯爵。お義姉様自慢の輝くブロンドは艶が消え、手入れが行き届いてないのが目に見えて分かる。よく見ると着ているドレスも派手なだけでセンスがなく、お義姉様の好きな高級ブランドのデザインではない。お肌もカサカサで化粧で誤魔化しきれていない。伯爵にしても十年前の肥満体型からかなり痩せている。これについては良いことなのかと思うも、頬の窶れ具合や髪の毛の量の減り具合から苦しい生活を送っているのが知れる。



「お義姉様……いえ、レッドライン伯爵令嬢、レッドライン伯爵。キャメロット公爵令息の言う通り、私は彼と婚約破棄をする気はありません。王家が許可を出そうと納得しかねます」

「王家に逆らう気!?」



 私の言葉に憤慨するレッドライン令嬢にある点を指摘した。



「十年振りにお二人にお会いしますが随分と変わりましたね」



 何度も私に言っていた平民よりもはっきり言って下だ。私の指摘に二人は顔を真っ赤にし、伯爵令嬢に関しては目を吊り上げ大股で私の許へ近付いた。



「誰のせいだと思っているのよ!!」

「私は何もしておりません」

「我が家の財政は十年前アルベルティーナがリュビ様に引き取られてから悪化の一途を辿るばかり! どうせ、わたくし達のことを恨んでリュビ様に頼んで呪いを掛けたんでしょう!!」

「掛けていません」



 牧場から家に戻る道中、ピエールからレッドライン家の財政がこの十年間悪化し続けている話は聞いていた。原因は多岐に渡るものの、一番の原因は私への虐待が露見してしまったせいだ。

 伯爵が平民の女性に産ませた子供で自身の血が繋がっていなかろうと大切な娘だと伯爵夫人が周囲に吹聴し、子供達の方も可愛い末の妹だとアピールしていたのだ。私は屋敷の外はおろか、部屋の外すらあまり出られなかった為、世間について疎く、現在はキャメロット公爵夫人の助けもあって改善してきている。虐待の件が露見すると王妃と親しいレッドライン家から人は離れ、リュビが半壊させた屋敷の修繕費の他に様々な不幸が彼等を襲った。


 毎日飽きもせず私を虐げてきたのに、外では理解ある母、姉兄を演じていたと知った時は戦慄した。



「レッドライン伯爵。貴方は少しでも私を伯爵夫人達から守ってくれませんでしたね。キャメロット公爵に嫌がらせをしたくて私を引き取ったのなら、少しは世話を焼いた方が良かったと今後悔しているのではありませんか」

「育ててやった恩を忘れたか!」

「最低限もない生活でしたが飢え死にしなかったことだけは感謝しています」



 私を育てたお金を返せと喚いた際には、リュビが伯爵令嬢を八歳まで育てるのに必要な金額をキャメロット公爵に算出してもらい全額渡している。

 言い返したくても私の言葉に嘘がなく、反論する余地がない。歯を噛み締め、顔を震わせ私を睨む伯爵から伯爵令嬢へ視線をやった。



「ピエールは貴女が嫌いです、大嫌いです。レッドライン家に来ていた頃から貴女が嫌いでした。仮令、私と婚約破棄をしても貴女が次の婚約者になることは決してありません」



 レッドライン伯爵令嬢が腕を振り上げた。昔の癖で咄嗟に顔を腕で隠した。



「殴らせると思うか?」



 腕から顔を離してみれば、不快なものを見る眼で伯爵令嬢を睨むピエール。振り下ろされた手を私の顔寸前で掴んでいてかなりの力を込めている。



「いた、痛い! 離してピエール様!

「ぼくの目の前でアルベルに暴行しようとしたね? 増々君を嫌いになるよ、レッドライン伯爵令嬢」



 痛いと叫ぶ伯爵令嬢に注ぐピエールの言葉は全て氷の如き冷たさを纏っていた。



「リュビは今寝ている。彼が起きて来ない内に帰れ。ぼくとアルベルの婚約破棄については、すぐに父上の方から陛下に抗議してもらう」


「しなくていいぜ〜」



 眠そうな声が後ろから飛んで来た。

 振り向くと起きたばかりと思しきリュビが寝ぐせのついた髪をそのままに外に出て来た。


 二人はリュビを見るなり顔色を赤から青へと変えた。

 リュビは二人を視界に入れると口端を吊り上げた。



「話はほぼ聞いてた。アルベルとピエールの婚約破棄を国王が承認したってやつ、王妃が勝手に言っているだけで国王の方は何も関与してないぜ」





読んでいただきありがとうございます。



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