16 俺、盗賊の親玉に制裁をくだそうとする前に、親玉がスザクによってぼこぼこにされる。
俺たち3人はヤマダのあとを、のんびりとした足取りで追っていた。
「そういえば、スザクの件はうやむやのままだったな。なし崩しに護衛を頼んじゃっているけど、大丈夫そう?」
「えぇ、それはもう……」
「そっかそっか。それならよかった。今から敵のアジトに乗りこもうとしているのに、土壇場でスザクに抜けられたら、戦力が笑えないからね」
「もしも、そんな状況になりましたら、私はご主人様を置いて逃げますから、安心してください。先ほどのご主人様は、とっても男らしかったですよ」
いくらドロシーが過去に学ぶ賢い子だとしても、全力で見捨てようとするその潔さには、涙を禁じえない。
結果的に金を出すことに不満はないが、財布くらいは見せてくれ。そんな感じの気持ちだ。俺はデートなんかしたことねぇけど、たぶん合っているんだろう。ドロシーのステータスは、一般女性じゃないんだからさ。
仕方なく、俺はドロシーの嫌味を、真正面から受け止めることにしていた。
要するに、あえての選択肢っていうやつだ。
もちろん、これが浅はかな行動だったと、すぐに分からせられることになる。
「……。それならもう少し声音を弾ませてちょうだいよ。台詞と感情が見合っていねぇぞ? もっと笑顔でさ」
「身のほどをわきまえてくださいって、全部言わないと分からないんですか? 失笑がついたほうがいいなんて、ちょっと引きます」
「なんでだよ! いや、ドロシーの怒る気持ちも、もっともだと思うよ? 弱いやつが粋がるなってことでしょう? でもさ、仕方なかったんだって! あのときは、俺が前に出るしかなかったの――男として。それに、向こうはおいそれと、俺に危害を加えられなかったわけだし、やっぱり俺が壁になるのが、ベストだったはずでしょう? これが2人で助かるための選択じゃないの!」
俺は必死に言い訳を重ねたのだが、ドロシーは何も言葉を返して来なかった。
俺のあからさまな結果論に、心底、呆れはてていたのかもしれない。
(どうして私が怒っているのかなんて、絶対理解していないんだろうな……。いくら私が武闘派のメイドじゃないからって、主人に守られるなんて情けない。これじゃあメイド失格だ)
「……もういいです」
しばらくしてから、ドロシーが吐き捨てるように呟く。
いたたまれなくなった俺は、すがるようにスザクへと話題をずらしていた。
「と、ところでスザクはさ、どうして偽名なんか使っているわけ?」
「どうして……?」
「うん。……えっ? 理由とかない感じなの?」
「すみません、深い理由はないんです。ただ、最初にいた組織が、本名を明かさない方針だったもので。以降は、そのときの習慣でスザクと名乗っています」
最初にいた組織とはまた、妙な言い方をするもんだと思った。
スザクが以前にドラ=グラにいたことは、俺もドロシーも承知している。
それよりも昔となると、いったいどこだろう……。おまけに、ギルドと言わずに組織と呼んでいる点も、なんとなく気がかりだ。
あんまり闇が深くないといいんだが。
「それは、やっぱりやばい系のやつなのかな?」
「どうでしょう……。ご迷惑をおかけするかもしれませんので、私からは何も。ただ、今はもう組織とはなんの関係もありません」
「そっか。分かったよ。もう深くは気にしない」
スザクの実力は本物だ。
それに、このぶんであれば、俺たちの寝首をかくような悪さもしないだろう。
当分はずっと一緒にいる予定なのだから、彼女が、自分から事情を打ち明けたくなるのを待つ。その方向で俺は心を固めていた。
そうしている間に、ドロシーは機嫌を直してくれたようで、敵のアジトに着いてからのことを、俺に尋ねていた。
「オジロワシのリーダーに会うといっても、ご主人様はどうなされるおつもりなんですか?」
それは単純でいて、その実、かなり難しい質問だった。
「まずは事情を確認してからだけど、平気で女を襲うようなやつは、やっぱりぶっ飛ばさないとダメだろうな」
俺を殴ったことはともかく、ドロシーに切りかかったことまでは、さすがに無視できない。
……まぁ、俺が襲われると、大抵の場合はドロシーが対応しちゃうから、彼女だけを狙った犯行じゃないんだけどさ。そういう細かいことは、気にしないようにしようぜ? わかちこだ。
俺の考えとは対照的に、ドロシーは呆れ顔だった。
「えっ、ご主人様がまた殴るんですか? その腕で? ご自分の指を破壊したいだけなら、私が代わりに、丁寧に1本ずつ折ってあげますよ?」
屋敷での俺の残念な結果を知っているだけに、ドロシーの突っこみも容赦がない。
彼女の辛辣な発言に耐えかね、すぐさま俺はスザクに頼みこんでいた。
「そこはなにとぞスザク先生、どうかひとつよろしくお願いします!」
「……はぁ。とにかく、相手を殺せばいいんですね?」
「ダメだよ! なんで君はそう、ぽこぽこ人を殺しちゃうのかな!?」
「し、しかし……殴ると、大体はその部位が消し飛びます。殴ったうえで、殺さないというのは……いささか不可能なのではないかと」
しまった、忘れていたぜ。
こいつは次元が違う強さだった。
あぁ、すっげぇや。
あのドロシーでさえ、ドン引きしている。やっぱりスザクっておかしいんだな、よかった。俺の感性はバグっていなさそうだ。
「と、とりあえずはさぁ? オジロワシのリーダーが本物のうんこ野郎なのか、俺が見極めてからにしてね? 話はそれからにしよう。間違っても、先走らないで。お願いだから」
そうやって、自分なりの善悪に、あてはめてからの制裁じゃなけりゃ、やっていることが単なる快楽目的の殺人者と、そんなに変わらなくなっちまう。
ましてや、手を汚すことになるのは俺本人じゃない。
ドロシーやスザクたちなのだ。
一層、慎重な対応が求められるのは当然だろう。
「ご主人様、少しは急がないと、敵に無意味な時間を与えることになります。もう少し、歩みを早めませんか?」
盗賊の拠点に向かっているというのに、いつまでも俺が遠足気分でいることに、嫌気が差したらしい。
まぁ、もっともな意見ではある。
「分かったよ。ちょっとは急ぐか」
そうは言ったが、内心では、スザクのパワーは場あたり的な対策で、どうにかなるようなものじゃないだろうと、俺は確信していた。
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アジトに帰って来たヤマダの様子は、それはもう大変な慌てぶりであった。
だが、それについて疑問を持たないランドルフは、自分の部下の意外なほど早い帰りに、大いに喜んでいた。作戦が順調に進んだと思ったためである。
「もうガキを捕まえたのか。褒めてやるぜ。もうガキを捕まえたのか!」
もちろん、返事は異なる。
「い、いえ。それが違うんですよ、ランドルフさん!」
話してみろと言いたげに、親玉であるオスカーが顎を軽く動かした。
「へい、オスカー。あいつら、とんでもねぇ! もう俺たちの仲間を、何人も殺しているっていう口ぶりでした。実際、仲間の数人をあれから見かけていねぇんです! 俺も命からがら、やっとの思いで逃げだして来たという具合で。おまけに、いったいどんなからくりなのか、このアジトの場所もすでにばれているみたいでした。やつら、もうすぐ報復しに来るっていうんです! どうしましょう、オスカー! 俺は怖くてたまらねぇや!」
スザクによって、一瞬にして組み伏せられたことを思い出したヤマダは、喋りながらパニックになりつつあった。
だが、オスカーは曲がりなりにも、オジロワシの面々を束ねる長である。
相応のカリスマ性を備えたリーダーの一言で、瞬く間にヤマダは冷静さを取り戻していた。
「まぁ落ち着け、ヤマダ。そう怯えるな。俺がついているだろう?」
「そうでした……。オスカーは無敵だ!」
「あぁ、そうだ。俺がいる限り、オジロワシに敗北はない。だが、念のために防衛線は張っておけ。仮にもネモフィラを根城にしている俺たちが、地元の人間に舐められたまま、終わっていいはずがねぇからな。ランドルフ以外の全員は、外でガキともを迎え撃つんだ……。俺たちの本当の力、今こそ思い知らせてやれ!」
長の鼓舞に部下たちが呼応し、無数の雄たけびが発せられる。
怪我をしていない無傷のヤマダも、当然のように廃墟の外へと出ていった。
不敵に笑うオスカーの前にゼンキチたちが現れたのは、これから僅か数分後のことである。
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ヤマダを尾行した俺たちは、一軒の廃屋へとたどり着いていた。
ご丁寧に、倉庫の入り口の前には、オジロワシの成員と思わしき男たちがたむろしている。
そんな目の前に張られた防衛線を、俺は複雑な表情で見渡した。
今からスザクにワンパンされるというのに、結構なことだと思ったのだ。
敵の数は人数にして10人ほど。
オジロワシの人員は全部で18人とのことなので、残っていたメンバーが総出で、俺たちを通せんぼしていることになる。
「自分からのこのこやって来るたぁ、殊勝な心掛けじゃ――」
威勢のよかった男の威嚇も、最後までは続かない。
途中でスザクが一振りしたため、全員がその場でノックアウトだ。
この中で飛びきり不運なのは、最もスザクに近かったデブに違いない。
全員が戦闘不能になったところに差はないが、こいつだけ位置の問題で、頭から明後日の方向に飛ばされていた。
……あいつ、死んでねぇだろうな?
「私たちを歓迎している様子ではなかったようですが、彼らはいったい何がしたかったんでしょう? なぜ、全員で出迎えを?」
不思議そうにスザクが呟く。
「あぁ、うん。スザクは気にしなくていいよ」
説明するだけ労力の無駄だ。
入り口が空いたので、俺たちは古びた倉庫の中を進んでいく。
中の様子からは、最近まで使われていたことが手に取るように分かり、運び出されなかった機械や、いくらかの物資がまだ、廃棄されずに散乱していた。
その奥。
扉から一番遠い壁のところに、親玉たちは座って俺たちのことを待っていた。
「お前がオジロワシのリーダーだな?」
俺の質問に、大男が鷹揚な態度で応じる。
「いかにも。俺がこいつらを束ねるオスカーだ」
自分から名乗ってくれるとは好都合だ。
俺はとっさに、世界攻略指南を発動しそうになったのだが、途中で考えなおした。
スキルを使ってずるをするよりも、自分の目で確かめて、正面から白黒をはっきりさせようと思ったのだ。
俺たちの登場は予想外に早かったようで、オスカーがその点を訝しむ。
「俺の配下たちはどうした? そんなすぐには倒されねぇ連中のはずだが……」
「あぁ? そりゃこんなに天気がいいんだ、のんびりと昼寝中だろうよ」
俺の煽りに、オスカーのこめかみがぴくりと動いた。
もちろん、意趣返しがしたかったわけじゃない。
腹を立たせれば、少しは、本音での話がしやすくなると思ったからだ。
「お前らさ、いったい俺になんの用なわけ? 武器を持ち出して大勢でやって来てさ」
「決まっているだろう? 埋蔵金だよ。ありゃ俺たちの獲物だったんだ。それを横取りなんかしやがって」
呆れたぜ、全く。
そんなくだらないことで、ドロシーは怪我をする羽目になったのか。ドロシーが最初に予見していたとおりじゃねぇか。
「はぁ? たったそれだけの理由で、ドロシーを襲ったってのか?」
「ふざけてんのか? お前が大金を手にしたことは、もう知れ渡ってんだよ。寄越せ、丸ごと。それで今回は勘弁してやるよ」
「オスカーとかいったか? お前は状況がよく分かってねぇみてぇだから、もう1度だけ言ってやる。今の話のどこに、女を平気で襲っていい理由があったんだ? 馬鹿たれが」
失笑。
俺を鼻で笑ったオスカーは、これまでで最も下品な笑みを浮かべながら、こっちに近寄って来ていた。
「なんだ、おめぇ。自分のメイドが襲われたことじゃなくて、俺たちが女を襲ったことにキレてんのかよ?」
白状しよう。
正直、俺はこのとき、ちょっとだけ小便をちびっていた。
いくらスザクがそばに控えているとはいえ、ひょろがりの俺に、並外れた勇気は突然湧いて来ない。
それでも、中学の俺ならば決して退かなかっただろう。
ならば、中二病をぶり返しつつある俺も、同様に対応しなければならん。
負けじと俺は足を前に運んでいた。
「そこ以外にねぇだろうが、ボケナス」
「はっ、知るかよ。女のほうが男より弱ぇ。これは生まれたときから決まっている自然の摂理だ! 自分より弱ぇやつをぶっ飛ばして、いったい何が悪い――」
弱肉強食の理論は、最後まで語らせてもらえなかった。
いかにもどこかで見たような光景だが、瞬時に移動して来たスザクによって、オスカーは後方へと吹き飛んでいたんだ。その体は当然のように、頭の一部が壁にめりこんでいる。
「えっ……ちょ、スザクさん? 何しているんすか!? 俺が最初に話してからって、ちゃんといいましたよね!?」
「……いえ。私よりも強いという発言があったので、つい手合わせをと思いまして」
……全然理由になってねぇよ。
俺は放心しながらオスカーを見つめた。
どうにか生きているようで、ほどなくして身悶えると、壁から頭を取り出していた。
ぽかんとした顔つきは、自分の身に何が起こったのか、まるで理解できていないようだった。
それも無理はないと思ったのだが、すぐにスザクが煽りだしたため、もはやバトルは避けられないシークエンスに移ったらしい。
早い話が、俺の役目は強制終了ということだ。
「どうしました? 早くかかって来なさい」
「上等じゃねぇか――」
傍目にもぶちギレたと分かるオスカーだが、言い終わるよりも先に、スザクによって転倒させられる。
「あっ、やっぱり待たないんですね。スザクさんって、人の話を聞こうとしないですもんね」
後ろから、ドロシーがそんな突っこみを入れていたが、俺はそれに応える気力が残っていなかった。
あ~ぁ、計画が台無しだよ。
オスカーとの勝敗については、その詳細を語る必要がないだろう。
もはや勝負でさえなかった。
一方的になぶられ続けたオスカーは、それから二度とまともに立たせてもらえず、起きあがろうとするたんびに、スザクによって転ばされていた。
呆気に取られていた俺が我に戻ったときには、すでにオスカーが泣きだしていて、俺は大慌てでスザクを制止させていたんだ。
「ストップ! もうやめて、スザク。大丈夫! 大丈夫だから。相手は降参だよ、泣いているんだから……。……やめろよ、なんでまだ続けようとするんだよ!」
涙で顔をぐちょぐちょにしたオスカーが、俺のことを、化け物を見るような目で見つめていた。
敵ながら、さすがに今のこいつには同情する。
普通に殴り倒されただけなら、オスカーもここまで恥をさらしていないだろう。
でも、転ばされ方が尋常じゃなかった。
オスカーはスザクに、デコピンのみで倒されていたんだ。
しかも、全部が空振り。
風圧だけで足が刈られていたってわけ。
自分の肉体的な強さってやつに、アイデンティティーを持っていない俺であっても、号泣するような惨めさだ。
本人からすりゃ、ちょっとしたホラー以外の何物でもないんだろう。
怪奇現象に接した目で俺を見つめたことにも、納得がいくってもんさ。
『お前なんでこんなやつを連れて、平気でいられるんだ?』
そんなふうに、オスカーは俺に尋ねたかったんだろう。
お前たちのせいだよ、馬鹿やろう。
責任持ってさ、引き取ってくんない?
「まるで話になりませんね……。ここの長は誰ですか? ……私が相手になりましょう。さぁ、早く出て来なさい」
当然のように、俺とオスカーの会話を聞いていなかったスザクに、誰も口を開くことができない。ドロシーまで明後日のほうを向いて、知らぬふりを決めこむ始末だ。
こりゃ、最初にコミュニケーションが取れたのは奇跡だべ。
……ところで、この人外に事情を説明するのって、やっぱり俺の仕事なの?
俺がスザクに向かって歩きだせば、同じタイミングで、今まで蚊帳の外にいたランドルフも立ちあがっていた。
これはあとで分かったことなんだが、ランドルフは出世欲に溢れている。要するに、オスカーがやられた機に乗じて、自分がスザクを倒せば、オジロワシを自分のものにできると考えたらしい。この戦闘シーンをじかに目撃しておいてなお、自分でスザクを倒せると思ったというのだから、ずいぶんと末恐ろしい思考回路をしている。断言しよう。こいつは俺より馬鹿だ。なんだか親近感が湧いちゃうね。
しかし、敵意を感じたスザクが、ランドルフを見過ごすはずがない。
勝利宣言の意味を込め、彼女が渾身のガッツポーズを取ると、その風圧に耐えきれなかった倉庫の屋根が、すべて吹き飛び、どこかに消えていった。
すかさず、ランドルフは座りなおす。
要するに、立って座っただけだ。
どんな馬鹿であっても、スザクが戦っちゃいけない相手だと、理解できたらしい。
恐ろしいね、全く。
「ふむ……。かかって来る相手がいないならば、私の勝ちでいいですね?」
オスカーたちは、首がもげる勢いで何度もうなずいていた。実際、ランドルフはちょっと首を痛めていた。
直後、ものすごい衝撃音と、次いで住人の悲鳴が聞こえて来る。
「な、なんだ! 急に空から屋根が落ちて来たぞ」
「きゃ~! ちょっと、あなた来て! 窓が全部割れちゃっているわ!」
「こっちの壁にはヒビが入っているじゃないか! さすがにこれは、弁償してもらわないといけないなぁ」
ギギギ。
まるでそんな音を鳴らしそうな動作で、ゆっくりとスザクが俺のほうに首を回す。
「……。すみません、ゼンキチ様。やってしまいました」
「あぁ……うん、いいよ」
やっぱり、これって俺が払うんだよね。
まぁ、スザクに護衛を依頼した時点で、薄々は覚悟しなきゃいけない未来ではあったのか。
やべぇ、ぜってぇ100万金貨じゃ足りねぇ。
それでも、一生負けない剣士を味方にできたと思えば、破格の金額になる……のか? ほとんど、剣は使ってねぇけど。
正面に向かって歩きだした俺は、オスカーの腕を取ると、その手に何枚かの金貨を握らせた。
「それだけありゃ、しばらくはまともな職探しに専念できるだろう? 二度と女を傷つけるんじゃねぇぞ」
埋蔵金の全額を譲るのは無理だ。
俺にも自分の生活があるし、何よりも世界中の女を幸せにしないといけない。
だからといって、殴った相手をそのままにしておくほど、自分をクソ野郎だとも思わない。
施せるなら、俺だって施すさ。
子供の頃に憧れたヒーローは、たぶんそんな感じの男だった。
もちろん、相手に更生の余地なしなら、俺だって違った対応になる。
「甘っちょろいな……」
「そのほうが女にモテるだろう?」
「ふっ……かもな」
たぶん、こいつらならもう大丈夫だろう。
そう認めた俺は、伸びをしながら倉庫の外に出る。
これでようやく、暴漢の一件が終わったことになるのだ。
何もしていない割にくたびれたな。主に心労という意味で。
そんなふうに俺が独り言ちれば、ドロシーが声を弾ませて俺に返事を返す。
「ちょっと甘いものでも食べたいですね。窓の弁償とか、屋根の修理とか、諸々のことは後回しでもいいんじゃないですか?」
「それ、いいな。露店にでも寄って帰るか」
太陽の日差しを浴びながら、俺たちは市場を目指した。
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次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ




