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87 俺、タマーラからハヤテとの出会いについて聞かされる。

 下書きで申し訳ありませんが、先に投稿します(近日中に推敲(すいこう)したものに変更しますが、内容に大きな変更はありません)。

 追記:すでに清書のものに差し替えてあります。

「……やられたな」


 気がつくと、俺は青いドーム状の空間の内部にいた。

 タマーラの声に触発されて周囲に視線を回せば、すぐに彼女の姿を発見することができる。ちょうど俺たちは、突如として見知らぬプラネタリウムに、飛ばされたような状態だった。ただし、出入り口と思われるような穴は、どこにも認められない。


「今のはいったい何? っていうか、それよりここはどこなんだろう……」

「十中八九、フロアマップの中だろうさ」


 ……フロアマップ?

 それって、要するにダンジョンのことじゃなかったか。


愛朱香(あすか)の塔に、フロアマップがあったってこと?」

「そうじゃないさ。さっき、少年の拾いあげた札が、フロアマップを展開する呪詛(じゅそ)だったんだ」


 ……マジかよ。

 呪詛(じゅそ)って、そんな大がかりなことまでできたのか。

 タマーラの言葉に目をぱちくりとしていれば、俺の反応を意に介さず、彼女は説明を続けていた。


「おおかた、人との接触をトリガーにして、呪いが発動するような仕掛けでも、札に施されていたんだろうよ。ハヤテに対する嫌がらせのつもりかねぇ。……ハヤテのうっかりミスという線も、ないわけじゃないが、彼女への悪意のほうが現実的だろうな」


「……詳しいんだな」


 さすがは知識階級。本職でもないのに、よくもまぁ色々と知っているものだ。

 ……俺なんか、そんなのを覚えたら、前に学んだことを全部忘れちゃうぜ。


「以前、似たような経験をしたことがあるんだよ。規模は大違いだったけどねぇ。ヌーベル九間(きゅうかん)というらしいが、名前のほうは大して重要じゃない。この呪詛(じゅそ)よりも数段、深刻だったというところだけ、とりあえずは理解してくれればいいさ」


「ふ~ん。そのときはどうしたの?」

「ハヤテと一緒だったからねぇ。瞬間移送(テレポート)でお手軽に脱出さ。今回もそうだろうよ。外からなら、私たちと同様に好きなだけ入って来られるはずだ。大人しく、彼女の到着を待とう」


 そう言って、タマーラは両腕を枕にして床に寝転がってしまう。


「……そんなに都合よく来てくれるのかな」

「おいおい。私たちは彼女の機嫌を直すために働いていたんだぜ? 遠出したわけじゃないんだ。帰りが遅けりゃ、気にしてくれるだろうよ。下の階から、プレゼントを引っこ抜いて来るだけだってことは、お付きのメイナードだって承知しているしな。ハヤテが察せなくても、彼女に話は伝わる」


 予選の時間が(ひど)く気がかりだったのだが、俺のほうに妙案があるわけでもない。タマーラに促されるままに、俺もその場に腰をおろしていた。……どうしていいのか分からなかったので、とりあえずは体育座りだ。


「……。ハヤテのことをずいぶんと信頼しているみたいだけど、2人の付き合いって長いの?」


「そうさねぇ。かれこれもう、9年くらいになるんじゃないか?」

「えっ、そんなに?」

「あぁ」


 なんでもないふうに言っているが、ハヤテの年齢を考えるなら、これは驚きの年数になるだろう。


「ハヤテって何歳よ? 俺より下じゃないの」

「今年で15とか16じゃなかったかねぇ」

「そもそも2人はどこで出会ったのさ」


 顔の向きをこちらへと戻したタマーラが、少しだけ疑うような視線を送って来る。


「なんだい? 今日はずいぶんとお(しゃべ)りじゃないか」

「まぁ……うん」


 元々、ハヤテを紹介してくれるという話ではなかったのか。

 タマーラのことは気に食わないままだが、彼女とは仲良くなれそうな気がしていた。……俺も布団の中でごろごろするのは好きだ。特に、夏場。二度寝しそうでしない、まどろむ感覚を堪能できる。


「これは彼女の機微にもあたるんだけどねぇ……まぁ、いいだろう。紹介するといった手前、少年にも話してやろうか。そもそもだ、少年。ハヤテはどうして愛朱香(あすか)の塔にいるんだ?」


 質問の趣旨がいまひとつよく分からなかったが、ハヤテが重宝されている理由を尋ねているんだろう。


 これについては明白だ。前に、タマーラ自身が、その話をしている。


「強力なスキルを持っているから、色んな人たちに贔屓(ひいき)されているんじゃなかった?」


「それはそうなんだが、ここには望んで居るのか否かってことだな」


 完全に盲点だった。

 ハヤテが貴族出身じゃないことは、ほぼ確定しているだろう。それは、様々な貴族たちから、もてはやされている点からも理解しやすい。


 彼女が、政治的な意味を持たないでいるからこそ、純粋にその能力を慕われているんだ。

 そうだとするのであれば、ばりばりの貴族街である、クラスティアナ領にいるハヤテという平民は、ほかでもなく、()いられて今の立場になったことを、意味するんじゃないだろうか。


「じゃあ、タマーラとはそのときに?」


 彼女の口ぶりからしても、ハヤテが自発的に、愛朱香(あすか)の塔の(あるじ)になったとは考えにくい。ひと悶着(もんちゃく)あって、その問題にタマーラが介入していたと見るほうが自然だ。


「察しがよくて助かるよ。そういうことだな。結果はご覧のとおりだ。私が彼女を逃がせなかったからこそ、ハヤテは愛朱香(あすか)の塔の姫になってしまったわけだ。自慢じゃないが、この塔自体は、私がこの国に譲歩させて、ハヤテのために引き出したものだぜ。もっとも、ハヤテのためには、それしかできることがなかったというのが実情だがねぇ」


「その……逃亡でいいのかな。ハヤテからの依頼は、一応、受けるつもりだったんだ」

「人の失敗談を、あまり深掘りしないで欲しいな」

「いや、そういうことじゃなくてさ。当時から、ハヤテはお金持ちだったのかなって思って。第1印象だけでの判断になっちゃうけど、ハヤテがばりばり仕事しているところって、なんだかうまくイメージできなかったから。周りにせっつかれて、ようやく動くみたいな。そのときが出会いなら、別にお友達割り引きってわけでもないんでしょう?」


 珍しく(ほう)けたような表情をタマーラが浮かべていたので、俺の発言は、彼女にとっては意外な反応だったらしい。……そこまでおかしなことをいったつもりじゃないんだけど。


「あぁ……。9年も前だからねぇ。当時はまだ、そこまで私も吹っかけていなかったのさ。それにハヤテに恩を売っておくほうが、得だとも思ったような記憶がある。親御さんから格安で請け負ったんじゃなかったかねぇ」


「あぁ、ね。人としての優しさを、お前に期待した俺が馬鹿だったよ」


 ……あれ?

 でも、どうしてハヤテは追われたのだろうか。

 瞬間移送(テレポート)ほどのスキルであれば、狙われることは想像できる。

 問題は、それ以前の話だ。

 どうして、ハヤテのスキルの中身が、追っ手に発覚しているのかという部分のほう。

 タマーラは内容を濁しているが、国から、愛朱香(あすか)の塔を引き出したという言葉から考えても、ハヤテのケースはチェミンのときと同じだろう? 国に追われた結果なのだ。


 だからこそ、自然と疑問が浮かぶ。

 なぜ、国は瞬間移送(テレポート)のことを知っていたんだろう。

 だけど、この問いを声に出すよりも早く、タマーラが先に俺に話しかけていたんだ。


「思ったよりも時間がかかるな……。悪いな、少年。このぶんだと拳闘士(グラディエーター)の予選には間に合わない。一応、ハヤテも出席する予定だったから、彼女が私たちを探しに来るだろうという、公算があったんだが……面倒くさがり屋のハヤテのことだ。きっと、私たちがいなくなったのを理由にして、観戦に行かないつもりでいるんだろう。お付きのメイナード1人が来たところで、現況は好転しないしな」


 長時間、タマーラと無駄話をした自覚が、俺にもある。相当な時間が経過しているはずだった。


「えっ……困るよ、それは」


 事前に、ソーニャからも、パトロンとしての責任を果たしてくれと、念押しされているのだ。

 遅刻しました――なんていうみっともない真似は避けたい。


「だから、悪かったと謝っているだろう?」

「……あのとき、俺が言ったときにちゃんと解放してくれていれば、こんなことには――」


「それをいったら、少年がもっと注意深く、ハヤテの気に入りそうなものを、探すべきだったってことにならないかい?」


 タマーラに論戦を挑んでみても、俺に勝ち目がないのは自明だ。天地がひっくり返ったって、そこは変わらないだろう。


 だけど、それが分かっていても、不平を言わずにはいられなかった。


「……本当に出られないの?」


 言いながら、俺は先ほど認めた出口の不在を、もう一度確認していた。

 結果は、もちろん等しい。


「あいにくと、呪詛(じゅそ)のほうは聖女と同じくお手上げだ」

「お前にも苦手な分野があったんだな……」

「私をいったいなんだと思っているんだ? ……そうさねぇ。少年も記形-律筆咒(ライティング・ドール)のことは知っているだろう?」


「……いや、全く」


 本当に何を言っているのか、分からなかった。

 学校で、授業の内容を先生に問われたときと、気持ちは全く一緒だ。


「正しい名前は知らなくとも、見たことならあるんじゃないか? 市場指標板(マーケットボード)の書き換えを行っている、白い人形だよ。それとも、商人牙行(ギルドハウス)のほうにはまだ、訪れていないのかい?」


 タマーラの台詞(せりふ)で、王都ならではのクエストを、カリスたちと見に行ったことを、俺は思い出していた。


「あれって……呪詛(じゅそ)なの」


 レベルが違う。

 クソでかのマネキンから感じ取った威容は、すさまじいものだった。戦争で使われた兵器だと紹介されても、なんら違和感がないほどだ。


「広義には、あれも妖刀に分類されるんだろうが、私も記形-律筆咒(ライティング・ドール)をここに含めたくはないねぇ」


「……刀じゃなくね?」

「魔剣だって剣じゃないのも含むだろう?」


 ……そうなんだ。

 無知すぎて何も言えない。


「……」

「製作者はカユズミシだと言われている。人形を見ているなら、話は早い。記形-律筆咒(ライティング・ドール)は、市場指標板(マーケットボード)の内容が正確であることを、保証するためのものだな。だからこそ、私もあれを目にする機会は多いんだ。そこでだ。私はふと以前、このカユズミシという呪術師について、調査してみたことがある。結果はどうだったと思う、少年?」


「そりゃ、大層偉大な使い手だったんじゃないの?」

「そう思うだろう? ところがだ。何も分からなかった」

「えっ?」

「目ぼしい情報が、ほとんど何も出て来なかったんだよ。より正確な表現をすれば、どう見ても一般人としか言えないような経歴しか、浮かびあがって来なかったんだ。正直、震えたね。世に名も知られていないような人間が、あれだけの作品の残せるんだ。高名な呪術師なら、いったいどれだけのことがなせるのか、まるで分かったもんじゃない」


「呪いってやっぱ怖いんだな」


 ……そりゃ、命も削っちゃうよね。

 逆か。命を削って施すから、強大な力を持ってしまうんだろうか。


「実際、ヌーベル九間(きゅうかん)なんかがまさしくそれだしな。今いったような理由から、(こと)に相手が呪詛(じゅそ)のときは、警戒に警戒を重ねていてねぇ。自分ではやらないようにしているんだ。伝わったかな?」


「えっ、うん……」


 和やかな笑みを見せて来るタマーラに、俺は曖昧(あいまい)にうなずく。


「そうか、伝わら()()()()か」


 タマーラとの会話を続けてみても、現状を打破するのに役立ちそうな収穫はない。

 本当にどうしよう……。

 ここまで来て、ソーニャの勇士を見られないなんて考えたくないし、何よりソーニャにも失礼だ。人の夢に関わっておいて、いざ実現しようとする瞬間には、無視を決めこむなんていう、恰好(かっこう)のつかない人間には、誰だってなりたくないだろう?


 タマーラに隠れて、こっそりと世界攻略指南(ザ・ゴールデンブック)を発動させてみたところで、呪詛(じゅそ)に対する俺の浅い知識と、出来の悪いこの頭では、打開策が浮かぶことなどありえない。


 でも、たぶん方法はある。

 手段を選ばないのであれば、1つだけ。

 これだけは取りたくないのに、もうほかにないんだ。

 考えがぐるぐると回ってしまう。

 何度頭を(ひね)ったって、それしか方法がないと思ってしまう。


「なんで……なんでよりにもよって、初めてがお前でなくちゃならないんだ」

「……なんの話だ?」


 怪訝(けげん)な様子でタマーラが俺を見つめて来るが、それに俺は何も答えられない。

 泣きたい気分だった。

 せめて白状するにしたって、ドロシーが先なんじゃないのか。

 どうしてタマーラでなきゃいけないんだ。

 どう考えたって、タマーラよりもドロシーのほうが関係が深いというのに。

 それとも、これは今までスキルの存在をひた隠しにしていた、俺に対する罰なのか。

 迷う。

 決断できない。

 でも、うじうじとそんなことに悩んでいるような猶予は、きっともうないのだ。

 やらなきゃいけない。

 ソーニャとの関係を、俺が大事にしたいのであれば――。


「……ダーなんだ」

「なんだって?」

「だから……俺、スキルホルダーなんだ」


 タマーラの瞳が、俺にはきらりと怪しく光ったように思えた。


「ほぅ、そいつは興味深いな。いったい、どんなスキルなんだい?」

世界攻略指南(ザ・ゴールデンブック)っていう、この世界を題材にした百科事典みたいな効果」

「なるほどねぇ」

「……信じるのか?」


 自分でいうのもあれだが、簡単に納得していいような内容ではない気がする。


「当たり前だろう? 少年の資金力のからくりが読めたのだから、これで信じないやつほうのがどうかしているぜ。それで、少年は私に不羈(イリーガル)であることを告白して、何を期待しているんだい?」


「……だから、俺では無理だけど、タマーラならこのスキルを使って、ここから脱出するための方法も、どうにか見つけ出せるんじゃないのかって……」


 自分自身に、目的を達成するだけの力が足りていなくとも、周りの人の助けを借りて理想を実現する。


 このやり方というのは、図らずも往年の勇者と同じものだった。

 ちょうど、才蔵(さいぞう)が力を持った伴侶たちを、それぞれの集落に守護神として派遣したように。


「なるほどねぇ」


 わざわざ言わずとも分かっていたことだろうに、タマーラは人並みに感心したようなそぶりを見せて来る。


 実にあざとい。


「やってくれる?」

「その前に、いい機会だから、さっきの話の続きをしようか」

「……?」

「言ったろう? 相手が呪詛(じゅそ)のときは、自分からはやらないようにしているって」

金貨(シルガ)を大量に積まなきゃ協力してくれないのね。いくら?」


 彼女は(あき)れたように笑って、首を横に振る。


「いいや、違うさ。少年はまだ全然私のことを、理解してくれていないみたいだからねぇ。覚えているだろう? 私たちがどうして出会ったのかを」


 ワールドに来た俺にとって、初めての大イベントだ。

 忘れることなんてありえない。

 なんなら、バベルの塔のおかげで、あの一件は俺の中で、より鮮明なものとして記憶されている。


「アルバートがブロンズデーモンに、復讐(ふくしゅう)しようとしていたからじゃん」

「そうだ。そして、ブロンズデーモンは封印されていた。ほかでもなく、呪詛(じゅそ)によってねぇ。理由は定かじゃないんだが、この呪詛(じゅそ)は簡単に解呪(かいじゅ)できるものだったんだよ」


 説明がまだるっこしいが、要するに素人でも、呪いを無害化できるものだったと、タマーラは言いたいんだろう。


「……だからこそ、アルバートでも封印を解けたってわけね」

「いいや、全然違うさ。いいかい、少年? ほかでもなく、この私がブロンズデーモンの目玉を欲していたんだからねぇ。封印を解くのは、なにもアルバート君でなく、私でもよかったんだ。でも、相手が呪詛(じゅそ)だからやらなかった。自分から封印を解こうと、躍起になっている人間を見つけたから、代わりに解呪(かいじゅ)するように私が誘導したんだ。だって、自分の身に何かあったらいけないだろう?」


 ぷつんと、自分の頭の血管が切れる音を聞いた気がした。

 今のはブロンズデーモンの一件が、俺が考えていた以上に醜悪だったという解説だ。

 やはりこいつは、アルバートの復讐心(ふくしゅうしん)を利用する以外に、方法がなかったからこそ、仕方なくブロンズデーモンを復活させたのではなかった。それどころか、たとえアルバートの家族が全員無事だったとしても、こいつはなんらかの方法で、ブロンズデーモンの封印を誰かに解かせていたに違いない。


 反吐(へど)が出る。

 ぶん殴ってやりたい。


「お前は! お前は、お前は! なんで、このタイミングでそんなことを言うんだよ! お前は俺を不愉快にさせて、そんなに楽しいのか!?」


「心外だな。さっきの今で、また私に同じ台詞(せりふ)を言って欲しいのかい? 君が自分から私と仲良くしたがるよう、私は私にできる最大限を尽くしてみせると、予告してやったつもりだぜ」


「……」

「それで、どうする? 拳闘士(グラディエーター)の予選に間に合わせるためには、君は私に頼るしかないわけだ。どうだ? 少しは私と仲良くしたくなって来たんじゃないか? たっぷりと敗北感を味わいながら、友として私にこうべを垂れてみろ」


 歯ぎしりをしながら、俺はタマーラに侮蔑の視線を送る。


「泣いて(にら)んだって私は何もしてやらないぜ? あいにくと、私は偉そうな男の鼻っ柱を明かしてやることくらいでしか、ときめかないんだ。少年じゃ、ちょっとまだ力不足だねぇ」


「俺は、お前が心底嫌いだよ……。助けてください。お願いします」

「いいだろう。これで私と少年はお友達だ。残念だったねぇ?」


 指をピースサインにして(あご)にあてたタマーラが、蠱惑(こわく)的な表情を作ってみせる。

 対する俺は、涙をこらえるために喉の奥をひくつかせながら、世界攻略指南(ザ・ゴールデンブック)を発動させていた。

 開くやいなや、タマーラがそれを(のぞ)きこんでいる。


「……少年。これが君のスキルで間違いないんだな?」

「そうだけど」


 スキルを見せることに、恥じらいは感じなかった。

 たぶんタマーラに対する不愉快さで、それどころじゃなかったからだろう。


「そうか。私には、そこに文字が書かれているのかどうかすら、分からないねぇ」

「えっ……じゃあ、ダメじゃん!」


 全くの見切り発車だったが、日本語であった場合でもタマーラは読めないのだ。彼女が意味のある規則を見出せなかったあたり、世界攻略指南(ザ・ゴールデンブック)には、俺だけが分かる言葉が書かれてしまっているんだろう。


「落ち着けよ、少年。君が私の代わりに声に出して読みあげれば、それで済む話だろう? 君は私の目になれ。代わりに、私は頭を貸してやろう。ほ~ら、いつまでもすねていないで、さっさとこのフロアマップから抜け出すぞ」


 タマーラがフランクに俺の肩に手を置いて来る。

 いったい、どの口で言っているんだと思ったが、それでも俺は彼女と()()()しなくちゃいけないんだ。そして、俺がタマーラを友として慕っている間は、彼女は確実に結果を出すはずだった。


 これは俺の単なる直観に過ぎないが、きっと真実に違いない。

 アナザーワールドにおいて、肉体最強がスザクなら、頭脳最強は(まぎ)れもなく、俺の隣にいるこのタマーラなのだ。


 性格は最悪。

 もしも、女を選ぶ立場にいる男があれば、今後俺は一生言い続けるだろう。性格で選べと。

 俺の心中を見透かしている女が、くすくすと楽しそうに笑っていた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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