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エミリーはネムいのですZzz  作者: ネットモ
2/2

蒼石神社

 放課後、エミリー達は神社そばにある里子の家に集まった。

「では、早速今回の計画だが…」

 そう言って仕切り始めた黒髪ツインテールの小さな女の子。里子では無い。エミリーでも悠子でもない。名は佐々木詠美。悠子の幼馴染だ。

「いや、何故お前が参加している」

 悠子が詠美に突っ込む。

「だって何か面白そうな事話してたでしょ?私も参加します。それにエミリーの頭じゃ足りないだろうしね」

 エミリーはネトゲのやり過ぎもあり寝不足で授業を受けている事が多い為、成績は言わずもがな。そして、この詠美は最下位争いをしているライバルと言って良いだろう相手なのだ。しかもネトゲをしてるわけでも寝不足で授業を受けている訳でもない正真正銘の「ソレ」なのだ。

「何をー!ガルルルル!」

 エミリーが挑発に応戦する。

「はいはい。底辺を争わない」

「底辺言うな!」

 エミリーと詠美の声が揃う。なんだかんだ仲が良いというか気が合うのだろう結局は。レベルが、波長が合ってしまうのだろう。

「古い地図ありましたよ。戦争の頃のですからきっと地名もあるでしょうけど。空襲とかもあった土地ですから、かなり建物とかの位置関係は変わってしまってるかもですね」

 里子が持って来てくれた地図を開き皆で探す。

「えっとね、風谷ふうやって言う場所らしいよ。この辺りなんじゃないかな?学校に現れたんだし」

 エミリー達の住吉中学校のすぐそばに悠久山という小さい山があり、その上がこの蒼石神社である。学校に現れたからには、きっとこの辺りに思いがあるのだろうからその地はきっとこの近辺だろうという推理だ。

「あった!この山を東に降りた辺りだ。かなり近いな」

「あ、私も見つけてたけど言うの悠ちゃんに譲ってあげただけだから!」

「詠美…。その負けず嫌い今いるか?」

「本当本当!私も見付けてたけど譲った事わざわざ言わなかったもんねー!」

「エミリー…。言葉が見つからないよ…」

 悠子が突っ込みを断念していると、

「今は住吉町になっている辺りですね。確かに小さな集落がありますが、今はもうお年寄りがほとんどで、学校に通ってる子供達も確かいないはずです。直接一軒一軒お話を聞いてみましょうか?」

 里子が冷静に場の空気を戻す。

「そうだな。近いし今行ってみるか。「善は急げ」だ。出来れば即解決してあげれたら良いけどな。喜ぶ顔が目に浮かぶ」

「悠ちゃんは見えないんでしょ?」

「てめぇ詠美。こんな時だけ的確に突っ込んでんじゃねーよ!」

「それもそうなのですが、気になっていることがありますエミリー」

「何?里子ちゃん」

「力が発動して今回は見えて会話したのですよね?今も見えてるのですか?若しくはまたその力を発動できるのですか?見付けても伝えられないのでは…」

 そうなのである。発動する能力は選べない。見えたままで無いのなら、最終的な解決には至らない可能性が高い。

「ふふふ。…とりあえずもう見えてない」

「えぇ…」

 テンションが下がる一同に、里子が気を利かせて何か言わなければいけないと考えた結果見つけた言葉が、

「とりあえず…お参りしていきます?」



 蒼石神社のそばには公園と小動物園がある。ここには都市伝説のようなものがあって、それを達成すれば願いが叶うといわれる言い伝えがある。それと言うのは、先ず蒼石神社でおみくじを引き大吉を出す。次に小動物園に行き、そこに孔雀がいるのだが、その孔雀が羽を開いてくれる、又は、開いていたら願いが叶うというものだ。女子にはおまじないや占い的な感覚で信じるかどうかはさておき、そういった話が好きなもので有名な話であり、ゲン担ぎでそれをやりにくる人達も多くいる。ついでに言うと、その人気に目を付けた里子の父親である神社の神主が孔雀グッズを売り出して売れ行き好調である。

「くーちゃん羽開かないな」

 悠子が待ちくたびれた感じで呟く。

「くー太郎開かんね」

「くー助でしょ」

 孔雀には特定の名前は付いておらず皆好き好きに名前を付けて呼ぶというシステムになっている。

「やっぱり開く時期ってありますからね。寂聴先生」

「いや、里子その名前は色々アウトじゃないか?」

「いやー本当。先生というよりも神様だからね」

 突然後ろから声がする。その声の主は里子の父親、商売上手な神主である。

「お父様。神様は言い過ぎでは?」

「いやいやー。孔雀王のおかげで商売繁盛。まさに神様だよ。七福神に潜り込ませたいくらいだ。本当にありがたいありがたい。参拝客もグッズも収入がうなぎ上りだよ孔雀なのに」

「上手い事言った風だけど、あんま上手くも無いような」

「しー!」

 エミリーの呟きに悠子がすぐに突っ込む。しかしながら、神主は上手いセリフが決まったと得意気な顔をして暫く頷いている。

「やっちゃいましょうか?」

「里子ちゃん父親に何て事を!」

 里子は基本喋り方が丁寧すぎるくらいなのだが、毒舌の時はかなり毒舌で、丁寧なのがかえって怖さを増幅する。

「みんなも孔雀グッズは買ってくれたかな?おすすめは等身大ぬいぐるみ。羽を開いた状態だからいつでも願いが叶う!かも」

 詠美が唖然としながら、

「娘の友達相手に営業しに来たの?この神主は…」

「お父様…。お母様に、言いつけますよ」

「え!あ」

「お母様に、言いますよ」

「あ、いや、仕事に戻ろう。そうだ。そうだった。仕事があったんだ」

「お父様、悪霊でも憑りついているのなら、お母様に払って頂かないと」

 逃げるように神主はその場を去っていった。

 里子の母親は英国人で、神社に嫁いだものの元々は悪魔祓いを生業としている家系で、今でもこの神社や出張で悪魔祓いをするらしい。その時の気の凄まじさは恐ろしい程で、夫である神主も怒られるときはその凄まじい気で押され耐えられない。雷に打たれると言うよりは、ゆっくり静かに一トンを背負わされる感覚らしい。神主曰く、「重力を支配した女」だそうだ。 静かに怖い辺りは、まさに里子の母親という感じである。

「まぁ、くー助の等身大ぬいぐるみ持ってるけどね。っていうかおそらくグッズ全部持ってる」

「詠美さん、お買い上げありがとうございます」

「効果は何かあったのか?今回の件が上手くいくようにお祈りでもしといてくれよ」

「今のとこ特に効果ないわね。というか、特に何もお願いしてもいないわね。願い事は自分の力で叶えてこそよ」

「変なとこ真面目。てかなんでグッズ買った…」

 ライバルと意識しているエミリーもこれには呆れたようだ。



 風谷地区で聞き込みをしたエミリー達。その女性の実家を見つける事は容易であった。もう件数も少ない地区でその点では良かったのだが、現在、探している女性は嫁いで市内の宮内という町内に今も存命でいらっしゃる事は分かった。そこまでは良いのだが、女性は痴呆が入っているという事で色々話を聞くのは難しいかもしれないという事だった。加えて、エミリーは既に依頼主の男性を見えていない為、どう決着を付けるかが難しくなっている。とりあえず会いに行くのは良いとしても、依頼主がそれに付いてきてるかも分からないし、付いてきて無いのであれば、どんな事を聞きたいのか伝えたいのかを聞いておけば、また見える事があればその時それを伝えるという事も出来たのだが、今回それは聞いていない。会いに行って自分達の解決した感という自己満足的な事で終わりという訳には出来ないので、結果、エミリーの発動待ちとなった。そもそも本当にまた発動するのかも分からないのだが…。



「おはよー!」

 教室に飛び交う爽やかな学生達の明るい声。そんな青春ドラマのような光景とは明らかに空気が違う領域がある。眠そうな、もっと言えばくたばる寸前のような女のそばに集まる少し空気の重い集団。エミリー達である。

「エミリー今日はどうだ?」

「うーん。何も発動はしてないぽいねー今日は。ネトゲ頑張ってるんだけどなぁ」

「エミリーさん。ネトゲを頑張ると発動するんじゃなくて、極限に眠いと発動するんですよね?」

「そうなんだけどね。ネトゲを頑張る事によって寝なくなる。極限の眠さが生まれるって仕組みなのさ。私のはね。今日は何か時間通りに起きれたし疲れもなんかあんまり無いような気がするんだよね」

「それ発動していませんか?」

「発動してるのかもな。でもなんで眠そうなんだ?」

「これはもう私の癖のようなもの。学校に来たら私はこう。それが根津恵美理」

 中学生にして人生を悟ったようなエミリーはさておき、解決まであと一歩だというのに足止めとなってしまいもう一週間程が過ぎている。極限に眠いからといっても必ず何かしらの力が発動するわけでもない上に、狙い通りの力が発動しないといけないのだ。これは非常に難しい。エミリーも霊視の能力が発動したのは、こないだの件が初めてだったという事で、この先の発動は全く未知数だ。因みによく発動する能力としては、足が早くなる、遠くがよく観える、力が強くなる、なので、どれが発動しても今回の解決に少しも役にたたない。まぁ大体丁度良い場面で丁度良い能力が発動する事もなかなか無いのだが。せっかくの能力もランダムとは不便というか宝の持ち腐れである。

 何が起こるか分からないという事で、詠美が昔流行ったゲームの呪文から「パルプンテ王女」と揶揄したのだが、「王女」の点をエミリーが気に入ってしまい、詠美的には馬鹿にしたつもりだったのだが失敗に終わり、二度とそうは呼ばなくなってしまった。

「会うだけ会ってみようか?どうしていたかを伝えるだけでも、何も結果を残せないよりは随分マシだと思うし」

「そうですね。連れて行って上げれないのは残念ですが…。ひょっとしたら近くで見ていらっしゃるかもしれませんしね。場所も分かったので既に会いに行ってたりする事もあるかもしれませんが」

「だと良いけどねー。自分でも探してたみたいだから、また色々探し回っててここにはいなそうな気はするかなぁ。それに念の強さで移動してるみたいだから知らない場所だと行けないのかも?」

「そうなんですね。ではやはり会いに行くという事で」

「そうね!土曜あたり天気も良いらしいし良いわね」

 詠美が話の輪に突然加わった。本来は隣のクラスなのだが恐るべし嗅覚と地獄耳。それをテスト勉強に活かせると良いのだが…。

「お前暇ならもっと勉強ちゃんとした方が良いんじゃないか?成績やばいぞ本当に」

「大丈夫よ。それでもエミリーには負けないわ」

「もっと上目指さないとしょうがないだろ」

 エミリーが椅子から転げ落ちて、

「悠子ちゃんが暗に私をディスって来た…」

 まぁ、実際二人とも成績は酷いのでしょうがないのだが。

 こうして土曜に行くことに決定した。一応能力の発動も期待しつつ待ってみたのだが、やはり霊視は出来なかった。特に意味が分からなかった能力発動は、神社近くの小動物園でエミリーが孔雀をみると、孔雀が羽を必ず開くというものだった。勿論なんの役にも立たなかったが、とりあえず今回の件が上手くいく事をお祈りしておいた。孔雀を観に来ていた子供達にはかなり喜んで貰えていたが。


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