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異世界⇔地球間で個人貿易してみた【コミカライズ】  作者: 肥前文俊
第二章

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第27話 デート

 祖父母たちの住む実家でゆっくりとしてからしばらく、渡は忙しくしていた。

 ポーションの販売は続けなければならないし、相談のメールの返信は毎回相手が異なるため、何気に定型文が使いづらく時間がかかる。


 また、食品衛生責任者の講習を受ける手続きを進め、大阪での引っ越しもついに考えることにした。

 とにかくお地蔵様の近くを押さえることは欠かせない。

 行き来し、商品を運ぶうえで一番の問題になるためだ。


 今よりも広めの部屋で、セキュリティ意識がしっかりとした場所が良い。

 選択肢は多少絞られるだろうが、大阪市内は物件の数も多いため、見つかるだろうと思われた。


(まあ、見つからなくても俺がマリエルとエアのどちらかと一緒に寝ればすむ話だしな)


 ある程度ネットで候補を探しておいて、不動産屋で内見を頼む予定だ。

 不動産屋の都合で要らない物件を連れまわされないかが、渡には少し心配だった。


「主、まだー!?」

「もうちょっとだけ待ってくれ」

「エア、あまりご主人様を急かすものじゃありませんよ」

「だってだって! マリエルだってそわそわしてるじゃん!」

「そ、それは……。でもそこをぐっと堪えて、用事が終わるまでお待ちするのも私たちの仕事よ」

「はううう。それはまあそうなんだけど……だって今日は……」

「楽しみにしているのは私もなんですから。邪魔したらますます出発が遅れてしまいますよ」


 エアがばっちりと外出の準備を整えてソワソワとしている。

 今日はオフショルダーのラインの出た黒シャツにショートパンツという外見で、これでもかと肌をさらけ出している。

 耳がピコピコ、尻尾がブンブンととても分かりやすい。


 その横で必死に我慢しているマリエルは、ベースボールキャップを被り、ダボTに脚の長さが分かるスキニージーンズを履いていた。

 エアを窘めながらも、じっとしていられないらしく、コップを持ったり時計をチラチラと見たりと落ち着きがない。

 二人とも出かけるのをとても楽しみにしてくれているのだ。

 渡としても早く用事を済ませて出たかった。


「よし、待たせたな。行くか! まずはお前たちのスマホを契約するぞ!」

「はい、行きましょう」

「しゅっぱつしんこー!」


 というのも、今日は二人のスマホを購入する予定だった。

 二人を奴隷として購入して以来、地球では常に渡がともに行動してきた。

 異世界で一人で行動するのは常識が分からないためにトラブルを招きやすいことに加え、二人はとびきりの美人だ。

 ナンパをはじめスカウトなど余計な交流が予想された。


 そのうえ二人は異世界人ということで戸籍もなく、トラブルが起きたときに問題が大きくなる可能性が非常に高い。

 渡としては単独行動を許せる状況ではなかった。


 だが、いくら気心が知れているとは言え、一人で行動したいときもあるだろう。

 またマリエルは祖母にレシピを教えてもらうのに、スマホがあった方が何かと便利だ。

 家でパソコンやスマホを取り合うのも好ましくない。


 そういった諸々を考えて、今回スマホを契約することにした。

 契約できるのは、住民票のある渡だけ。

 そのため、今回は会社名義で契約だ。




 携帯電話の契約は大変だった。

 何故こんなにも時間がかかるのかというほど手続きに時間がかかったが、別に店員が手を抜いているわけでもない。

 ないが、必要以上のプランを何度も勧めてきたり、余計なオプションを次々と提案してくるのには、渡も辟易とさせられた。


 なぜ携帯の契約に、ファイナンシャルプランナーとの面談を推奨されなければならないのか。

 ネットで三分の一の価格で売っている大型SDを、なぜ買わなければならないのか。


「もー、はやく帰ろーよー」

「お前が欲しがったんだからもうちょっと待て」

「ううう、長いよー」

「エア。それなら私とデモ機を使ってみましょう」

「うん……」

「大変申し訳ございません」

「いえ、必要なことだとは思います。ただ、失礼ですが、できるだけ簡潔にお願いします」

「分かりました」


 最初はワクワクと端末を見ていたエアも、終わる頃にはぐったりとしていた。

 こういう時分かりやすい態度を示せる性格は少し羨ましい。

 渡はつい外聞を気にしてしまい、態度を秘めてしまいがちだ。

 販売店員もストレートに言われてしまえば、それ以上の提案はしづらいのか、そこからは端末の操作を行い、渡の手に二台の端末が渡された。


「ほら、お前たち持っておけ。絶対失くすなよ。あとエアは壊すなよ」

「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」

「主、ありがとう! 大好き!」

「おう。じゃあ、マリエルはこの書類を管理しておいてくれ」

「了解しました。あとご主人様」

「どうした?」

「好きなのはエアだけじゃなく、私もです。忘れないでくださいね?」

「お、おう……今日はぐいぐい来るじゃん……」

「ふっふーん、アタシの携帯だあ」


 二人ともとても嬉しそうに貰うものだから、まあ手続きは面倒だったけれど、その甲斐はあったな、と渡も素直に嬉しく思った。

 携帯ショップを出て、そのまま街を練り歩く。


 平日ということもあって、人通りは休日ほど混んではいない。

 まだまだ暑いこともあって、テナントビルの中の方が人は多いだろう。

 天王寺の駅前の大きなビルの一つに渡たちは入った。


「いやあ、長かったけどようやく終わったな。スマホは後で俺が見守りアプリを入れるが、あとは好きに使ってくれ。マリエルには後で婆ちゃんの連絡先を教えるから」

「お願いします。これでいつでもお婆様とご連絡が取れると思うと、とても嬉しいです」

「俺が言うのも何だが、あの婆さんに嫌気が差したら言えよ」

「ウシシシ、アタシはこれでいーっぱい調べものするぞー」

「大丈夫です。ご主人様の大好きな料理、きっと作ってあげますから」

「まあ、スマホは今は置いといて、次は久々に遊ぼう!」

「はい! ご主人様とのお出かけ、楽しみです!」

「おー!」


 今日の外出のもう一つの目的。

 それは普段日本での遊び方を知らない二人と、デートを楽しむことだった。

 こちらの世界の楽しみを知らない二人に、もっともっと楽しい思いをしてもらいたい。

 渡はその日、とても張り切っていたのだ。

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