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異世界⇔地球間で個人貿易してみた【コミカライズ】  作者: 肥前文俊
第七章

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第45話 モイーへのお礼の品

 モイーの口利きもあって、渡とクローシェの婚約は最終的に同意が得られた。

 最初の対応は何だったのかと言わんばかりの掌返しだが、それだけモイーの御用商人という立場は、本来は相当に尊重し、警戒されて然るべきものなのだ。


 そこらの一商家ならば、こぞって羨ましがり、何らかの便宜を図ってくれたり、なんとかしてお近づきになろうと、機嫌を伺われる。

 何と言っても財務次卿という一国のお金を動かす立場を持つ存在だ。


 モイーの立てた計画に一枚噛むだけで、相当な利益や利権を得ることは容易い。

 そういった相手に対して、感情的になってしまったクロイツェルは、一族の長として相当危うい立ち位置になってしまったのも仕方がないことだろう。


 一族の長としての資格なし、としてクローデッドたちから押込隠居を食らったとしても不思議ではない。

 が、そこは群れとしての生き方を大切にする黒狼族である。


 クローデッドも直情的になってしまった過去もあり、またクロイツェルが渡とクローシェの婚姻を最終的に認めて、渡とモイーの許しが出たことで、現役続行が決まった。

 とはいえ、流石にしばらくは以前ほどの強権的な決断は難しくなったのではないだろうか。


 渡はモイーへのお礼を言いに行く途中、事の成り行きと、自分のしてきたことを振り返って、少し情けなく感じた。


「俺としては自分で解決して見せて、格好いいところを見せたかったんだけどな」

「え、ザコザコ主には無理じゃない?」

「こ、こいつぅ。主人に向かってザコザコとか言うなよ」

「えー、でもアタシたちと腕相撲したら、多分主が最下位だよ?」

「ムグググ……」


 そういったエアは、大きな荷物を抱えている。

 渡では相当な負担になるそれを、ヒョイヒョイと持ち上げ、抱えたまま移動しているのだ。


 金虎族のエア、黒狼族のクローシェ、そしてエルフの戦士として鍛えられてきたステラ。

 この三人は、明らかに渡よりも力が強いことは否定できない。

 というか、本当に腕相撲などしたら、秒殺されること間違いなしだ。


 だが、マリエルにならまだ勝てるはず。

 渡がマリエルに視線を向けると、コクコクと頷かれてしまったが、それが一層なんだか悔しい。


 ますます情けない気持ちに落ち込んでいると、エアが肩をすくめた。


「主には主の良さがあるってこと」

「というと?」

「主は腕力は敵わないし、ポーションだって作るのはステラだし。まあお世辞にもものすごく優秀って感じじゃないけど、でもそんなの気にすることないじゃん。主の強みは、アタシたちを使える立場でしょ。モイモイとの人脈だって、十分主の強さの一つだと思う」

「戦う土俵(せんじょう)を間違えるなってことですねえ」


 ステラに補足されて、渡もエアの言いたいことが分かった。

 たしかに、自分で何でも片付けようとするところがある。


 大金を持って、人を使う立場になったはずだけれど、俺のスタンスはまだまだフリーランス時代からほとんど変わってないってことだな。

 渡は自嘲の笑みを浮かべたが、そもそもが激動の生涯を送り始めたばかりなのだ。


 意識はそう簡単には切り替わらなくても当然のことだった。


 とはいえ、渡の一番の強みは、なんといっても異世界と行き来できたり、マリエルやエアといった、本来ならば得られなかったであろう奴隷を購入できたりという、強運や数奇な縁にあることは間違いない。


「じゃあ、まあモイー卿との貴重な伝手を大切にするか。モイー卿のおかげで、クローシェとの婚約も認められたし、感謝は思ってるだけじゃなくて、言葉と行動に示さないとさ」

「モイモイは主のこと気に入ってるみたいだし、これからも良い関係を続けられるといいね」

「そうだな」


 エアの言葉に、渡は頷いた。

 稀少な代物を持ち込む商人として、蒐集家のモイーは明らかに渡に肩入れしてくれている。

 ならばこそ、その期待に応えなければならない。


 渡としては、次の商品を気に入ってもらえるのか、相当にドキドキと緊張させられた。



 ◯



 モイーは南船町の代官屋敷にいた。

 つい先日まで王都にいたのに、すぐに移動しているのだから、慌ただしい。


 この前の緊張状態を考えれば、ゆったりとした空気が流れていた。

 王都とは違い、自分の直轄領だからか、モイーもくつろぐ余裕が生まれるのだ。


 応接間に入った渡たちは、すぐに礼を述べて頭を下げた。


「先日は婚約の件でお骨折りをいただき、誠にありがとうございました。モイー卿のご尽力なくしては、クローシェとの婚約も認められなかったでしょう」

「構わん。我の方こそ、まさかあのような凶行に及ぶとは思っても見なかった。せめて最初の顔合わせのときぐらいは、我もそこに居ればよかったと反省しているぐらいだ」

「なんとか丸く収まって、何よりでした。うちのクローシェが絶縁したままでは、可哀想でしたし」


 ペコリ、とクローシェが頭を下げた。

 上品な笑みを浮かべ、きれいなお辞儀をする姿は、普段のクローシェと比べれば、別人かと思うほどに様になっている。


 が、彼女はもともと一族の長の娘。

 最低限の行儀見習いもされているし、本来ならばできて当然だった。


 ですわー! と喧しいのは身内用の顔なのだ。


 渡はエアに目配せして、ここまで運んできた荷物をテーブルに置かせる。


「御礼に、稀少な品を用立ててみました。モイー様にお気に入りいただけるかと思います」

「うむ、我の蒐集心を掻き立てるような、面白いものなのだろうな?」

「……おそらくは」

「楽しみだ」


 モイーの目が、カバンに注がれる。


 蒐集品は、それこそ好みの世界だ。

 稀少であれば何でも食いついてくれるわけではない。

 相手の好みや趣味を把握し、気に入ってもらえるかどうかを予想して、商品を用意しなければならない。


 渡の心臓が、ドクン、ドクン、と激しい音を立て始めた。

 思わず手に汗が滲み始め、表情がこわばりかける。


 渡としてはかなり高確率で気に入ってもらえるはずだとの予想をしているが、果たして……。

もし良ければ高評価をよろしくお願いいたします。


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ぜひ読んでください。


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― 新着の感想 ―
お酒はさておき万華鏡や浮世絵と来てるからな〜 素材はあっても真似できなさそうなもの? 漆塗りとか……?
一体何を用意したのか?せめてヒントだけでも…。
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