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異世界⇔地球間で個人貿易してみた【コミカライズ】  作者: 肥前文俊
第五章

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第11話 曝露の代償 後

 早速、安高は連絡を取り始めた。

 某国は連絡手段として、メッセージアプリは日本国産の最大手RIMEではなく、エンドツーエンド暗号化機能を用いたPORTを用いるように要求してきた。


 PORTはユーザー同士が個別の暗号表を持っているようなもので、第三者がデータを取得しても、そのままでは内容が分からなくなっている。

 秘匿性が高いということで、情報機関はもちろん、昨今では闇バイトや暴力団でも使用するケースが増えているツールだ。


 安高は少しでも高く情報を売りつけるため、まずは小出しにすることにした。

 素晴らしい治療法が発見されたこと。

 すでにプロスポーツ界や芸能界、政財界の一部に利用者がいることを伝えた。


 某国は国の威信を高めるために、スポーツの成績には非常に力を入れている。

 何よりもトップの人間が若さを求めないはずがない。

 必ず食いつくはずだった。


 だが、肝心の提供元についてはまだ秘密を貫いた。

 自前の諜報員を使われてしまえば、お金に換えられなくなる。

 日本がスパイ天国だという話は、安高だからこそよく知っていた。


 安高の強欲によって、かろうじて渡の秘密はまだ守られていた。


 渡の情報と、可能ならば治療法の特定、そして薬の実物を手に入れたい安高は、渡の尾行を再開した。

 最悪、自宅や喫茶店に忍び込む覚悟も決めていたが、捕まりたくはない。

 これは最終手段とするべきだろう。


 まずは決定的な瞬間を写真に収めることだ。


 地道に張り込み、渡が外出する瞬間を待つ。

 渡たちがよく、決まって同じ方向に向かうことは掴んでいる。


 自宅から徒歩数分に、なにか大量の荷物を運んでいる。

 どうも偽装のためか、わざわざ砂糖袋などに積み込んでいるが、あれが薬なのだろう、と安高は睨んでいた。


「くそ、あいつ等どこに行きやがった! あ゙~~ッ! 念を入れてずっと見てるはずなのに、どうして撒かれてしまうんだっ!?」


 尾行が決まって撒かれる場所があった。

 ふと気付いたら、いつも姿を見失ってしまうのだ。


 美女をずらずらと引き連れてあれだけ目立つのに、どうして見失うのか。

 安高は自分の目がおかしくなったような気がして仕方がない。


「ん? こんな所に汚え地蔵があるじゃないか。お前が邪魔だから見落としたんじゃねえか!?」


 苛立つ気持ちをそのままに、ムシャクシャとしていた安高は、地蔵を蹴り上げた。

 罰当たりなどと気にする余裕もなかった。


「くそが! 邪魔なんだよ! 邪魔!」


 腹立たしさを暴力に代えて、ガンガンと何度も蹴り続ける。

 地蔵が衝撃に震え、表面に靴の汚れが付着する。


 何度も強い衝撃にさらされたせいで、土台部分が緩み、石の一部がポロリと欠け落ちた。


「はあっ、はあっ! くそ、落ち着いて――」


 ――あいつ等を探さないと。

 でないと、俺は破滅してしまう。


 言葉を最後まで言うことはできなかった。

 突如光が安高を包むと、次の瞬間には、これまで見たことのない景色に移り変わっていたからだ。


「な、なにが起こった?」


 安高は知る由もないが、そこは異世界、南船町だった。

 キョロキョロと辺りを見渡すが、ここが何処なのか、そしてどうして自分がここにいるのかまるで理解できない。


 ゲートを渡った渡たちと違うことは、すでに安高は祠もゲートも(・・・・・・)認識(・・)できなくなっていた(・・・・・・・・・)ことだ。


 少しでも見覚えのある土地を探し求めて、安高は路地を歩き始めた。

 後ろ暗い生活を続けてきた安高の足は、自然と大通りではなく、裏通りへと進んでいく。

 それが破滅へと続く一方通行とも知らず。


 だが、路地がどんどんと細く、薄暗くなってきたことで、さすがに安高も不安が強くなったようだった。

 はあ、ふうと息を荒くし、びっしょりと全身が汗に塗れる。


 ある意味では常識的な人間だった安高は、自分が天王寺から西成区に入ってしまっていて、しばらく歩けば駅なりの何処かにでると信じていたのだ。

 見慣れないのは飛田新地にでも来たのだろう、などと自分をだましだまし歩いていたのだが、とうとう目の前に起きた現実を受け入れるしか無くなっていた。


 そして不安と緊張から、ふと通りを歩いていた人物に、不用意に声をかけてしまう。

 これまで少しもすれ違わず、遠巻きに見られていたというのに……。


「おい、ここはどこだ?」

「ん、どうしたんだ? 迷子か?」

「おい、バカ野郎! 何言ってるか(・・・・・・)分からねえ(・・・・・)よ。もっと俺に分かるように言え!」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()安高には、異世界人の言葉が理解できない。

 不安と恐怖を隠すために、虚勢を張ってつい余計な一言を言ってしまう。


「それにその格好はなんだ、ふざけやがって。もうハロウィンは終わってるんだ。いったいいつまで着ぐるみ着てコスプレしてんだ、この汚え羊野郎」

「あん? テメエ、俺を侮辱しやがったなっ!!」


 だが、その失言は致命的な過ちになった。

 様々な亜人種族が集まる異世界において、あるいは地球以上にそれぞれの種族への侮辱はタブー視されている。


 白羊族の獣の性質が強く出ていた彼は、器用に手を使って物を作ることはできず、言葉を流暢に扱うのも難しい。

 顔だけでなく手や足も人とは違うことで、中々いい職にありつけず、望まないながらもスラムにほど近い地域で生きてきた。

 だが体は頑健だし、力だって強い。

 最近は荷運びの仕事を黙々とこなしてきた。


 だが、着ぐるみなどとバカにされて黙ってはいられない。

 安高は特大の地雷を踏みぬいたのだ。


「おい、きてくれ! このクソ生意気な異国人、俺を襲おうとしてきたぞ!」

「ん? なんだって?」


 白羊族の男の知り合いが瞬く間に集まった。

 スラムならばこそ、仲間の結束は強い。

 安高は周りを囲まれたことで、強い危機感を抱いたが、すでに遅かった。


 周りからボコボコに殴り倒される。

 そのどれもが、コスプレではすまないリアリティに満ちた異形の持ち主だった。


「こいつ、俺の種族を、種族をバカにしやがった!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。ぐっ!? わ、悪かった!」


「おい殺すなよ。殺したら売れなくなる」

「人として最低限の礼儀も守れないやつなんだ。最低保証の奴隷にしてやろう」

「それはいい! 知り合いの奴隷商に売れば酒代には困らないだろう」


「……やめ、止めでぐれ! ぐぶっ!?」


 急に、この世界の存在と、渡の関係に天啓が走った。


 ああ……。これが、堺の秘密だったのか。

 特大のネタだったが、手を出すべき存在じゃなかったんだ……。

 失敗した……。


 さらに何度も殴られ蹴られ、痛みとともに安高はゆっくりと意識を失った。


 さて、安高の未来はどうなってしまうのか?(誰も別に期待してなさそう)

 海外諜報機関とやらは、渡の正体に気付くのか?

 そして、欠けてしまったお地蔵様の影響はあるのか……?


 いつも感想や評価ありがとうございます。

 こうして更新できてるのも皆様のおかげです。感謝。


 次回!「山の管理人(仮)」です。

 お楽しみに。

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― 新着の感想 ―
え?これで終わり? 奴隷になった後のお話ありますよね?。
[気になる点] 相手の異世界言葉はわからないのに記者の日本語が通じてるのはもうちょい補足した方が良いかもー
[一言] 後書き内 海外情報期間→海外情報機関 かな? もしかしたら海外諜報機関?
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