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異世界⇔地球間で個人貿易してみた【コミカライズ】  作者: 肥前文俊
第四章

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第17話 山探し

 土地を見に行く。

 それも農地となるほどの大きさとなると、自然と場所は大阪市外に限られてしまった。

 大阪市外となると、移動には電車ばかり使っていられない。


 再びレンタカーを利用しての移動になった。


「まさかまた運転することになるとはな……。しかも今回は六人乗りだぞ。あー、やだなあ」

「ご、ご主人様、大丈夫です! 前回やったことですし、今回はもっとうまく乗れるはずです!」

「お、おおお、おう」


 渡は体を緊張させながら、車を走らせる。

 今回は渡とマリエル、エア、クローシェ、ステラと五人が移動することになったため、車体も相応に大きなものを運転するしかなくなってしまったのだ。


 無事故無違反とはいえ、それはほとんど運転経験がないためのこと。

 天王寺から十三号線を下って、南に制限速度でゆっくりと移動する。


 今後、山を購入すれば頻繁に訪れることになるだろう。

 そうなると、車の購入も考えなければならない。

 自営業者である渡の場合、リースにしたほうが良いのか、購入したほうが良いのか。

 その辺りも考えなければならなかった。


 それでも大和川を越えて堺市に入った辺りから、ようやく渡も落ち着くことができた。

 周りの風景を見る余裕が生まれて、少し話をすることもできる。


「ステラ、隠さないといけないのは悪いが、そんなに機嫌を悪くするなって」

「問題ありません。たしかにわたしが見る限りでも、こちらの方々はヒト種しかいないみたいですし。それに先輩であるクローシェさんに苦労をおかけしてますし……」

「わたくしは構いませんわ!」


 たそがれた雰囲気をしているのが、ステラだった。

 その誰よりも目を引く特徴的な目と耳は、今は周りの一般的な人々と変わりないように見える。


 『変化』の付与はステラが使うことになった。

 帽子で耳を、ズボンで尻尾を隠せるエアとクローシェの二人とは違い、ステラの耳は帽子では隠せないためだ。


 不動産会社の社員にあまりにも特徴的な顔を覚えられるのも、渡としては避けたかった。

 とはいえ、その努力もどこまで通用するか。


 なんといっても、マリエルやエアたちの外見が整いすぎているのだ。

 これだけのそれぞれ個性のある美人を連れていれば、どうしようもなく印象に残るのは避けられないだろう。


「これ、どこを目指してるの?」

「和歌山県方面に向かってる」

「わかやまけん、っと。へー、アタシたちが住むところより、ずっと南に向かってるんだね」

「ああ。今俺達が向かってるのは、熊野古道紀伊路って言って、昔の修行する人(・・・・・)たちが通っていた道なんだ。今回はこの道沿いの()に目を付けてて、どこかしら龍脈の影響を受けた土地がないかを調べる」

「え、山を買うの?」

「そうだ。山を買う」


 タブレットで検索していたエアが驚いた。

 山の価格は資産的価値によって、価格がまったく変わってくる。


 管理された貴重な木材や、何らかの資源が採れるなら高額になった。

 だが、管理がされておらず、大昔に杉や檜ばかりを植えて放置されていたような山は、それこそ一山いくら(・・・・・)にしかならない。


「俺が目星をつけてる山は、どこも百万円ぐらいなんだ。正直なところ今住んでるマンションの家賃五ヶ月分で山が買えてしまう……」

「そう考えると信じられないぐらい安いですわね……どうしてそんなに安いんですの?」

「クローシェの世界の土地持ちは、言ってしまえば貴族になるってことだけど、こっちの世界だと、平民のまま、誰も住まない、税金だけ払わないといけない。おまけに最低限の管理費がかかって、何らかの災害が起きたら賠償責任まで課せられる」

「ひえっ……それは手放すわけですわ」

「ああ。だがそんな安い山なら、税金も別に高くない。おまけに辺鄙で人も寄り付かないから、秘密に薬草を栽培するにも持ってこいなんだ。防犯用の設備も整え放題だしな」


 人の山に勝手に入ってくる不届き者は必ず今後出るだろうが、その辺りの対策も今から考えていた。


 話を続けながらも、車は郊外へと進んでいく。

 走る車の数が少しずつ減っていくことで、渡にはずいぶんと運転しやすくなった。

 車窓から見える景色も自然が色濃くでていて、わずかに残った紅葉が美しい。

 窓を開けるとひんやりと冷たい風が入ってきていた。

 もうすぐ冬が来る。


「このあたりだと、わたしにも見慣れた森の精霊が多いのですねー」

「へえ、そうなのか。魔力のほうはどうだ?」

「多少は感じられますが、まだ多いとまではいきません。でも寝泊まりしている家よりは、よほど快適ですよ」

「道中でもここが良いって場所があれば教えてくれ。売りに出されていなくても買える可能性もあるしな」

「分かりました」


 魔力自体はエアもクローシェも分かるようだが、錬金術師であるステラの意見を一番優先したい。

 樹木が多いところで落ち着くからか、ステラは機嫌良さそうに、車から景色を眺めていた。

 こういうところはやはり、エルフなんだな。


 車を走らせること、そこからさらにしばらく。

 阪南市、貝塚市、和泉市あたりの個人所有の山を購入する予定だったが、ようやく目的地にたどり着いた。


 不動産会社の人と会って許可をもらい、山を探索する。

 小屋とも呼べないような粗末な建物があったり、倉庫があったり。


 資源となる木は生えているのか、水場はあるのか。

 水と電気、ガスはどうなっているのか、といった最低限度の生活環境などを確認する。


「ないな……」

「ありませんわね。主様の目論見は破綻していたのでは?」

「僭越ですよ、クローシェ。まだ探す山はあります」

「いいんだ、マリエル。俺ももう少し早く見つかるかもって期待してたからな」


 不慣れな山道を歩き回って、さらに長時間慣れない車の運転をして、渡は疲労の色が濃い。

 自分の考えの浅さに反省していた。


 探している渡たちも大変だったが、案内した不動産屋も大変だっただろう。

 それでも仕事だからか、表向きは嫌な顔をせずに次の物件へと案内してくれる。


 そうして山を巡ること五つ目。


「ここ、ここは良いですね!」


 ステラが明るい声を上げた。

 ついに目的に合致する山を見つけることができたのだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 十三号線てどの道だろう……国道ではない、府道なら京街道、阪神高速なら東大阪線。 山の土地を買うのに何故阪南や貝塚目指すのだろう?パワースポットとしてピンと来るものもないし。 千早赤阪村…
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