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異世界⇔地球間で個人貿易してみた【コミカライズ】  作者: 肥前文俊
第四章

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第4話 大切な物の保管場所

 祖父江との会談は、渡にポーションの可能性を感じさせてくれるものだった。

 日本でも有数の資産家が、慢性治療ポーションの効果に目を輝かせている。

 投資を持ちかけて、実用化を本気で目指してくれるだけの効果とポテンシャルが、このポーションには存在するのだ。


 そんな貴重なポーションを、渡は喫茶店の収納場所にしっかりと保管しなければならない。

 この価値を知るものが増えれば増えるほど、盗難には気をつけなければならなかった。


 ここは喫茶店のスタッフルームだ。

 シンプルなロッカーと、休憩用のイスとテーブル、奥に大きな棚がある。

 店舗の改装の際、渡は客席を減らして、代わりにスタッフルームを拡張した。


「エアとクローシェ、悪いけど頼む」

「んっ、よいっっっしょっっと!」

「ですわっ! ですわわっ!!」


 地球人離れした力の持ち主である二人が、グッと力を込めて棚を持ち上げて移動させる。

 たわわに実った乳房が棚に潰れて形を変える。

 持ちやすいように取っ手がつけられていたが、すさまじく重たい棚は二人の手でも苦労した。


 移動された棚の奥にあったのは、隠しスペースだった。

 難解な鍵などは存在していない。

 ただただ純粋に堅く(・・・・・・・・・)、重すぎる(・・・・・)異世界製の棚そのものが障壁となって、大切なポーション瓶を隠していた。

 スペースの四方には、棚と同じ超硬度の素材で補強されている。


「目に見える金庫の方には偽物の瓶を入れてるし、まあこれは誰でも騙されるだろうなあ」

「主様って考え方が結構悪辣ですわよね?」

「絶対にバレたらダメだから、これでも必死に考えたんだぞ。生意気な事を言う口はお仕置きが必要かな?」


 渡がクローシェを見つめると、ビクッと背筋を伸ばしたクローシェが、潤んだ目で縋るように見つめてきた。

 その目は怯えているようにも期待しているようにも見える。


「あーあ、また怒られてる」

「いえ、あれは多分誘い受けですよ。見てくださいあの尻尾。媚びるようにブンブンと左右に勢い良く振って」

「いやらしい」

「ちょ、ちょっと、聞こえていますわよ!? ち、違いますからね! わたくしはお仕置きなんてされたくありませんわ!」

「そうなのか。俺の勘違いか。じゃあお仕置きはなしだな」

「えっ……!? っ!? な、なんでもありませんわ!」


 ここで素直になれない辺りがクローシェの性格の損な部分であり、可愛がられる一面でもあるのだろう。

 クローシェは悔しそうに歯噛みするのだった。


 〇


 大切な慢性治療ポーションを収納した後、渡たちは喫茶店に残っていた。

 渡が自らの手で珈琲豆を選別し、焙煎していく。

 均一に火を煎れるには、豆の大きさを揃える必要がある。


 それに豆は製造元である程度選別されているとはいえ、利用に耐えないものも混じっていることが多い。

 ピンセットでテキパキと撥ねていく姿は生き生きとしていた。


 これらのコーヒー豆をパッケージングして、異世界で売るのだ。

 今後、購入者が増えれば渡が厳選したプレミアムな豆を特別価格で販売する予定だった。

 その他にも、粉に挽いたもの、焙煎済みのもの、生豆のものと段階に分けることも考えている。

 生豆に近い状態ほど状態が長持ちするため、ウェルカム商会が異国にも持ち込みやすいだろうからだ。


 まだマリエルの領地で珈琲豆の栽培をするという計画は断念していない。

 今後、両親が南船町に派遣されてきて会ってからが勝負だろう。


 大量の生豆をピンセットで選別しながら、渡が言った。


「どうせなら急性ポーションについても相談してみたら良かったな」

「まあまあ、どっちにしろ、薬草がちゃんと育たないと意味ないんでしょ? それからでも良いじゃん」

「まあ、それもそうか」


 急性ポーションは慢性治療ポーションに比べて、薬草、術師ともに必要な魔力量は少なく、量産が可能なようだ。

 薬師ギルドをはじめ、各町の薬屋でも急性ポーションは多く取り扱われている。

 ちょっとしたケガなら精製のあまりされていない低級の物が。

 純度の高い物は、冒険者をはじめとして大きなケガにも使われている。


「タメコミ草がちゃんと育っているのか、そして錬金術師の確保ができるのか、そういった面に今は集中しておいた方が良いのではないでしょうか?」

「後は魔力の豊富な土地を探すことですわ!」


 魔力の有無についてはとても大きな意味がある。

 今後、量産できる規模には限りがある、というマイナスの点。

 そして、もし何者かの産業スパイが薬草を持ち帰って量産しようと思っても、同じものがおそらくは生産できないという点だ。


 魔力自体を把握できていないだろう産業スパイには、同じ物が生産できない。

 パクリものが溢れる現代だからこそ、これには大きな意味があった。


 薬草の栽培にしても、珈琲の栽培にしても、どちらも今すぐ渡たちが動けることは少ない。

 そんな時、奴隷商であるマソーから、呼び出しの連絡があった。

少し短いのですがご容赦を。

クローシェの「ですわ!」って叫び、実際に想像してみたら相当シュールだなあと思いつつ、キャラ付けとして外せないな、と思い書きました。

あと、こういう隠しスペースとか大好きです。

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― 新着の感想 ―
一番怖いのは苗泥棒の西大陸人だよね パクリ民族だし。
[一言] >ですわ あれ?てっきり某VTuberのネタと思っていたんだが…
[良い点] 読み続けると本に引き込まれ良い感じがします。 [気になる点] コーヒー豆についての記述の誤りが見受けられました。 アラビカ種の豆は均等なサイズの豆は不良品でとして扱われ廃棄対象になりま…
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