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異世界⇔地球間で個人貿易してみた【コミカライズ】  作者: 肥前文俊
第三章

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第58話 薬草の分析結果

 実家に泊まって翌日、渡たちは早速異世界へと移動していた。

 向かう先は薬師ギルドだ。


 ギルドの受付も渡の顔をすでに覚えていて、ああ、例の人か、という表情を浮かべた。


「今日も慢性治療ポーションのお求めですか?」

「そちらも欲しいんですけど、今日は別の用件で」

「となると、媚薬の新薬ですか。開発はしてると思うんですけど、まだ新製品はできてないんですよ、すみませんね」

「違いますよ!!」

「えっ、違うんです? じゃあ一体何しにうちに?」

「そんなどっちかしか用がないだろう、みたいな扱い、やめてもらっていいですか!?」


 信じられないという表情で見つめられて、渡の方がビックリだ。

 一体人を何だと思っているのか。


 とはいえ、薬師ギルドで大量の慢性治療ポーションを定期的に購入する客は相当に珍しいようだし、媚薬も薬師ギルドで直接買うものは少ないようだった。

 珍しい客はそれだけ注目されるし、奇異の目を向けられても仕方ないところだ。


 渡はクローシェから袋を受け取って、そこから薬草を取り出した。

 青々としていて元気そうだ。

 乾燥させた方が良いのかとも考えたが、あるいはそういった作業にもやり方があるかもしれないと思い、できる限り状態を保って持ってきた。


 受付の目がすぐに薬草に向いて、あらよく育ってるわね、と呟く。


「今日は私が栽培した薬草が、ちゃんと使えるのかどうか調べてもらおうと思ってきたんです」

「そうでしたか、そういえば以前、株を分けたと聞いていましたが……てっきり新しい女性を連れてるものだから、満足できなくなったのかと」

「ち、違います。とにかく調べてください。どれくらい時間がかかりますか?」

「そうですね。お得意様ですし、優先的に処理させてもらいますから、一時間はかからないくらいかと」

「じゃあ、お願いします」


 渡は腹立ちを収めて、薬草の検査をお願いした。




 慢性治療ポーションをひとまず購入し、自宅に運び込んだ。

 販売拠点である喫茶店に置いておく手もあるのだが、防犯設備は自宅の方が整っているので、迂闊に他の場所に置いておけないのだ。

 再び薬師ギルドに向かう頃には、丁度良い時間帯になっていた。


「検査結果はどうなっただろうな。せっかく爺ちゃんが作ってくれたんだし、上手くいくと良いんだけど」

「あんなに青々と育ってるんだから、アタシは大丈夫だと思う!」

「さて、どうなんでしょう。一見した感じではとてもよく育っていますし、問題なさそうですけど」

「そうですわね、土壌の質や魔力の濃度など、生育環境によっても効能は変わりそうですし……難しいところだと思いますわ」

「クローシェは薬草について詳しいのか?」

「詳しいというほどではありませんけど、昨日お伺いした主様のご祖父母の方の家の畑は、魔力が薄かったので」

「え、地球に魔力ってあるのか!?」


 意外な情報に渡は驚愕した。

 異世界には魔力があっても、地球には魔力などのファンタジーな要素はないと思っていた。

 そんなものがあれば、世界中にカメラが光っている今、魔法使いの存在が明らかになっていてもおかしくない。


「基本的にこちらは魔力がとても薄いですわね。一部、オテラ? とかジンジャ? とか、魔力の濃いところはありますけど……」

「ご主人様、魔力が全くないと、多分こちらのゲートも開かないと思います」

「あ……」


 不思議な力でお地蔵さんがゲートを開いてくれていたが、その動力がどこから来ているのか。

 それを考えれば、魔力が存在していてもおかしくないのは確かだった。

 あるいはそれを神力とか理力といった、人によって呼び名は変わるにしろ。

 他でもない、常識外な事態に遭遇している渡だからこそ、そんな力を認めないわけにはいかなかった。


 ◯


 薬師ギルドに戻ると、すでに分析は終わっていた。

 受付のおばちゃんは渡が来ると早速声をかけてくれて、結果を教えてくれる。


 テーブルの小皿に置かれた、切断されて、あるいは乾燥や粉末化された薬草。

 その横には羊皮紙で記録が書かれていた。


「良い薬草だね。しっかりと薬効成分が含まれていて、手間ひまをかけて育てられたのがよく分かるよ」

「そ、そうですか!」


 祖父の徹が頑張ってくれたのだろう。

 それが結果として出ていることに、渡は嬉しく思った。

 とはいえ、話はそれだけで終わらなかった。


「だけど、魔力含有量が少ないから、用途が限定されるねえ」

「どういうことでしょうか?」

「慢性治療用のポーションは、調合の過程で必要な魔力量が多く求められるんですよ。薬草自体に魔力が少ないと、他に調合する素材で高品質な物が求められるので、かえってコストが高くなるの。この薬草は魔力量という一点においては、かなり問題があるみたいね」

「ということは、これは使い物にならないってことですか?」


 渡が感情を押し殺した質問に、おばちゃんは顔を横に振った。

 早合点しないでほしい、と一言断って、言葉を続ける。


「そうとも言えないわねえ。急性治療ポーションは、慢性用に比べると、必要な魔力量が少なくすむのよ。だから使えるとしたら急性治療用の素材としての利用に限られるかな」

「そう、ですか。今の方法だと難しいのか……」


 現状、渡の使用しているポーションは慢性治療用にほとんど限られている。

 だからといって、まさか神社や寺で薬草を栽培させてくれとは言えないだろう。


 そう考えると、なかなか頭の痛い問題だと言えた。

 落ち込んだ渡に対して、受付のおばちゃんが同情したように眉を下げると、思わずといった様子で声をかけた。


「まあ、薬草の栽培に魔力量を増やすことも不可能じゃないけどね」

Skebの原稿頑張ってました!

お待たせしました。


もし良ければ高評価や感想をよろしくお願いいたします。

作者が(本当に)すごく喜びます!

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