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異世界⇔地球間で個人貿易してみた【コミカライズ】  作者: 肥前文俊
第三章

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第39話 仕立て服

 一時は売れないWebライターだった渡は、最近では急にトップアスリートや芸能人、異世界では裕福な商人や貴族と出会うことが増えた。

 社会に評価されている一廉の人物と出会えば出会うほど、身形をしっかりとしている人が多いことに気づかされる。

 昔はどこにでもいる幼なじみだった亮太も、今ではとても見た目の良いイケメンに様変わりしている。

 若井満は喉を壊して落ちぶれてなお、一流らしいカリスマ性を保っていた。


「みんなオシャレだよなあ」

「そうですね。皆さん自分のスタイルを確立されている方が多いように感じました」

「野球選手って筋肉質だから、合わない服も多いはずなんだけど、上手く合わせてるし」

「そういう見立てをする方がいるのかもしれませんね」


 お金があるというのも理由の一つだが、人から見られる商売ということも大きな理由なのだろう。

 年中同じシャツを着たり、Tシャツだけで報道に出るようなIT企業のCEOも世の中にはいるが、大半の人は服装にも気を遣う。

 渡はオシャレに深い興味があるわけではなく、だらしなくなければ良いというスタンスだったが、最近では少し、意識に変化が生じていた。


 また自分だけの問題ではなく、マリエルやエアは圧倒的な美人という自分の素材を引き立てるように服を着こなしている。

 クローシェの服はまだ買い揃えていないが、おそらくは同じレベルなのだろうという気がする。


 彼女たちの横に並んで、自分が見劣りしてしまわないだろうか、と考えた時、否定できない自分がいる。


 なによりも異世界において、服装は思った以上に重要な意味合いを持つのだと、マリエルの学園での振る舞いをみて、感じいらずにはいられなかった。


「マリエル、俺が今後貴族と商談をこなすのに、今の服装で問題ないだろうか?」

「ご主人様の持っている服で足りるものもありますし、問題があるものもあります」

「具体的には?」

「そうですね。こちらの製品は新しく生地はしっかりしています」

「そんなのは当然だろう?」

「いいえ、ウェルカム商会は貴族から奴隷まで客を選びませんでした。また中には日雇い労働などで汚れた人も多いでしょう。清潔な身なりは、それなりに裕福でなければ保てません」

「ああ、なるほどな。向こうだと風呂に毎日入るのも難しいしな」

「はい。ご主人様の清潔な身なりはそれだけで大きな利点です。ただ、装飾や縫製は簡素に過ぎて、格が落ちていると捉えられてもおかしくないものが多いです」

「装飾かあ。いま着てるのも、刺繍とか全然ないし、単色だしな」


 日本発の世界的アパレルブランド、ユニホワイトの品だが、シンプル極まりない。

 装飾性のかけらもない服だ。

 だが、異世界でのお金持ちは付与の装飾品が良い例だが、色々と飾り付けていることが多いし、服装もマリエルのドレスにフリルが沢山あったように、装飾性を重要視する。


 シンプルよりも華美。

 どちらかといえば明治時代の華族や、あるいはバブル期の服装を想像したほうが良いかもしれない。


「あと、鮮やかな発色の布地が多いので、その辺りも商人としては認められるのではないでしょうか?」

「淡い色合いとか暗い色は良くないのか?」

「はい。一目で分かるような鮮やかな色合の生地は貴族でも大切に扱われます。特に真紅、明るい紫は王族や上位貴族にのみ許されている色ですね」


 貴族や金持ちが豪華な服を着ているのは伊達ではない。

 外見におけるシグナル(・・・・)の豊富さは、封建社会において分かり易い身分差を示す。

 そのことによって、下位の者が上位の者に万が一にも失礼に及ばないように、分かりやすく示す必要があった。


 見た目で判断ができないと、とんでもない過ちを起こすことがある。

 見窄らしい格好をしていたので会社の雇われ用務員かと思って失礼な態度を取ったら、実は本社のお偉いさんだった――などという悲劇が起きないようにしているのだ。


「あとは自分の体にどれだけフィットしているかも大切です」

「一応体格に合わせた服は着ているぞ?」

「普通の商談であれば、もともとの服でも問題ありません。モイー男爵のように、市民をよく知る貴族も問題ないでしょう」

「そうじゃない貴族もいるってことか」

「ええ。もちろん会わないに越したことはないのですが、ご主人様の活躍を見ていると、砂糖や膨らまし粉を用立てたいから来いなどと急に呼び出されることもないとは限りません」

「問題はその時ってことか」

「はい。座っている時、立っている時はもちろんですが、腕の良い仕立て職人による作品は、動きを妨げず、またシワもすぐに戻ります。そういった品でないと、見くびられてしまうかもしれません」


 マリエルの予想を聞いて渡は嫌な気持ちになった。

 砂糖に関しては貴族も食いつくということで、わざわざウェルカム商会を間に挟んでいるのだ。

 異文化コミュニケーションの末に、お前失礼だから打首な、などとなっては目も当てられない。

 とはいえ、今後も異世界を中心に販売を続けるならば、避けては通れない。

 これは一つ、一張羅を用立てよう、ということになった。


「異世界の素材を地球で仕立てる。地球の素材を異世界で仕立てる。ご主人様の場合、この組み合わせがオススメです」

昨日、10000Ptに到達していたようです。

多くの方に読んでいただき、また評価も頂いてありがとうございます。

これからも頑張ります。


もし良ければ、高評価や感想をよろしくお願いいたします。

作者が(本当に)すごく喜びます!

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― 新着の感想 ―
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