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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

台風

作者: kaHo

台風には皆様気をつけましょう。

台風の目。

それは、この世界・・では死を現していたーーー


俺は森智和もりともかず

どこにでもいそうな成りをして、どこにでもいそうな事をする。

極々平凡な高校一年生であった。

今日は台風で、ラッキーなことに学校は休み。

俺は自分の部屋の二階で寝転がって漫画を読みながら、ゴロゴロしていた。

そこに、野良猫のニャーという鳴き声がしたあとだった。

ゴロゴロと雷が鳴り、俺の家は停電になった。

「おいおい、最悪じゃねーか」

と、俺は一階のリビングに下りようと階段を歩こうとしたところであった。

とんっ、と背中を押され俺は階段から転がり落ちる。

下まで落ちると、

「痛たたた……」

と、落ちた歪に打った右肩や肘をさすりながら立ち上がろうとした。

しかし、急に台風や雷の音がしないなーと呆けながら埃を払いながら立つと、そこはリビングでも廊下でもなかった。

「は?」

と、俺はそれ以上の言葉を失う。

だってそこは、どこかの路地裏で天気も良く晴れているのだから。

後ろを見るが、階段はない。

どん詰まりだった。

思考が追いつかないが、とりあえずこの路地裏からでなくては。

そう思い、路地裏から出ると見た目は俺と何ら変わらない日本人のようだが、身なりや建物が全く違う。

今の俺は、Tシャツにジーンズというどこにでもありふれた格好だが、周りの日本人はまるで異世界のアニメと同じような服装ではないか!?

そして建物は、レンガで積み立てられた家々である。

なんだこれは?

俺は、夢でもているのか?

そう思い、頬をつねろうとしたときであった。

隣のお店の人から、ぽんぽんと軽く左肩を叩かれ、

「お兄さん、珍しい格好をしておるのう。とても高価な代物と見える! お兄さんその服を20ベラで買おうじゃないか。どうだい、悪い話ではないだろう?」

と、老人で頭がハゲており不気味な雰囲気を醸し出している。

やばい。

なんか嫌なことを企んでそうな目だ!

俺は、

「いえ、結構です」

と、言いながら人混みに紛れその店から遠ざかる。

「ちょっ、お客さん!……ちっ行っちまいやがった」

と舌打ちして、いいカモを逃して残念そうな表情をしていた。

俺は少しホッとしたのも束の間。

これからどうしたらいいのかと不安が込み上げてきた。

とりあえず、人があまりいない展望につき、この世界・・を見渡した。

通りすがる人が話してるのは日本語。

でも、じろじろとみんなが俺を見てはヒソヒソ話をする。

居心地が頗る悪い。

が、しかし俺はここから行くあてもないのだ。

やばい、泣きそう。

そう思いながら、泣くのをこらえただただ時間が過ぎていった。

夕方ごろであろうか?

また、声をかけられることとなる。

「そこの坊主。そんなへんちくりんな格好で何をしている!」

と、後ろからドスの効いた声で問いただせれる。

俺は後ろを見た途端、へなへなと座込み咄嗟に手をあげ、

「な、何もしてません。本当です、信じてください!」

と、涙目になり、鎧を着た女性が俺の喉元に剣を突きつけてくる。

「本当か?なら、何故そのようなへんちくりんな格好でいる!」

と、なお剣を喉元に押し付けてくる。

怖ーよぅ……俺ここでわけもわからず死ぬのか?

そう、思ったときだった。

「待って、ヘレリア。何だか訳ありのように見えるわ」

と、馬車から、ドレス姿できれいな女の子が俺に近づいてくる。

「なっ、ダメであります!アリア様!どこぞの馬の骨ともわからんやつに近づいては!」

と、ヘレリアと呼ばれた鎧の女性が注意されてもなお、俺を心配して俺の頬に手をそっと触れてくるアリア様という女の子。

暫くして、

「ほら、怖がってるだけじゃない!こんなに震えてかわいそうに……ごめんなさいね、私の護衛隊の人が剣なんて向けて。さぁ、ヘレリアその剣を閉まって、早く!」

と命令するとヘレリアという鎧の女性は言われたとおりにし、アリア様という女の子は俺の溢れて今すぐにでも流れそう涙を指で拭ってくれた。

「もう大丈夫よ、何か訳ありのようだけれどあなた名前はなんていうのかしら?」

と、問われる。

俺、めっちゃかっこ悪い。

しかしながら、この子は俺の話を聞いてくれそうだ。

アリア様という子の右手を俺は両手で握り、泣きつくように今まで何があったかを話した。

そこにいる皆が皆信じられない、という顔をしているのは俺でもわかった。

涙を服で拭いながらも、俺は、

「俺、これからどうしたら帰ればずか?」

と、問うてみた。

アリア様という子は、

「正直私は貴方の話を全て受け入れられないわ。だって、異世界から来る方は我々ダイアナ帝国の救世主と呼ばれているの。貴方が異世界から来たのなら、申し訳ないけど到底救世主には見えないわ。でも、それが本当の話ならもうすぐ台風・・が来る。そうなるなら貴方には申し訳ないけど、民の皆を守って欲しいの。ここでは、何だから私の城に来て。」

と、言われた。

何が何だかさっぱりだが、俺が救世主?!

そんなわけあるわけ無いじゃん!

しかしながら、ここにいても仕方がないので促されるままアリア様という子のお城まで馬車に乗せてもらった。

ヘレリアも疑わしい眼で俺を睨めつけていた。

城は、大層大きなお城で東京ドーム何個分だろう?と思うほど大きく立派な建物であった。

俺は待ち合いの部屋で待たせられることに。

「王様、例の救世主とやらはこちらの部屋で待機してございます」

と、廊下から少し漏れて聞こえていた。

ギィと音がなるとそこには白ひげを生やし王冠を被り、『The王様』が入ってきた。

そこで、『台風』というものがどんなものなのか。

俺の使命がなんなのかを知らされた。

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!台風の目に入れば人は干からびて台風に持ってかれる?そんなの日本じゃありえない!どう信じたらいいのさ?」

と、俺は事実を捲し上げた。

「君が言うのも、仕方あるまい。救世主である君だけが台風の目に入っても何も起こりはせん。しかしながら、我々は違う。何百年何千年も台風が来ても救世主である君達・・に助けられてきたお陰で我々はずっと安泰を守ってきたのだから。しかしね、これもこの世界において事実でしかないのじゃよ。我々は台風の目に入れば枯れて飛ばされる。これも事実無根なのじゃ。この通りじゃ、この帝国を守ってくれはしないじゃろうか?」

と深々と王様に頭を下げられる。

そうは言っても、今でも信じられない。

でも、俺が救世主になれるのか?

台風なんてどうしたらいいんだよ。

なんでも、救世主が来てから、数週間後には台風が来るのだとか。

その間、俺はどうしたらいいんだ?

悩みに悩んで結果が出るわけでもなく。

髪をくしゃくしゃにしてもどうにかなるわけでもなく。

ため息交じりで、用意された部屋のベッドに座る。

なんやら尻に違和感がある。

そっと尻を触るとケータイがあった。

これだ!

俺はすぐさま台風について調べた。

何故か電波が通っている。

ありがたい。

『最大風速が毎秒17.2メートル以上の熱帯低気圧』

というのはわかった。

だが、台風なんてどう扱えばいいんだよ!

俺は項垂れていた。

すると、ボッという音とともにアリアが、

「大丈夫ですか?無理もありません。貴方が背負い込みないようおまじないをかけて差し上げますね」

そう言い、アリアはブツブツと何かを唱えると俺の身体が何故かポカポカしてきた。

「ありがとう」

と、俺はアリアに言うと目を疑った。

「これ何?」

と、人差し指の上に小さな炎が灯されていたのだ!

「?これは魔法ですよ?それがどうかしまして?」

頭の中にクエッションマークが浮かぶアリアだが、俺は続けて、

「ねぇねぇ、炎はどれくらい出せるの?」

「えっと……人それぞれですが、私の家系は代々氷を使うのが主ですが。他の家でもそれぞれ相性のある魔法は家系で違いますわ」

驚きながら、アリアが言う。

これじゃね?

「これじゃん!これが台風を弱らせるんじゃんか!」

嬉々として、俺は言う。

「はい?」

アリアはわけもわからず首を傾げる。

ケータイには、

『潜水艦で水深30メートルにある冷たい海水を、海面まで汲み上げることで、海面の温度を下げる。その潜水艦を20隻用意して、1時間で5万7600平方メートルの水温を3℃程度下げることができる。台風存続に必要な海面の温度は27度以上であり、その辺まで海面の温度を下げることが出来れば、台風の勢力を弱くすることができるという。』

と書かれてあった。

ーーーー

それから、数日。

水や氷を扱える魔法もつ者を集い、これから台風が来ること伝えたのち、対象者は大人であり、命をかけてもこの国を守りたい者であること。

これを条件に沢山の魔法使いの者が集えた。

「この国の未来のために!」

と、皆勢いのある者たちばかりだ!

救世主が現れた事で皆余計にやる気満々のようだ。

アリアは、

「ありがとう、トモカズ!貴方のおかげよ!」

そう、涙ぐんで感謝された。

感謝っていいもんなんだな。

しみじみと感じていた。

「いや、俺のおかげってでもないけどさ。アリア、君はまだ大人ではない。これを後世に残しておくんだ、王様のためにも!」

そう言い、肩をガシッと掴んだ。

そう、王様も対象者の一人。

王が行かずして、何が民を守れようかと、王様自ら志願しているのだ。

不安なわけない。

アリアは俺の胸の中で泣いた。

落ち着くとアリアが、

「私のこの耳飾り貴方に託します。どうか、皆を守って……」

そう言うと、そっと耳飾りを俺につけてくれた。

「ありがとう、頑張ってみるよ」

そう言うと、アリアは安堵したのか微笑んだ。

ーーー

沢山、皆での話し合いの結果。

ここから一番近い海に行き決行することに。

ダイアナ帝国の民には避難してもらうよう頼んだ。

ここから馬車で数日かかる。

間に合わないと皆枯れちまう。

ここまで来たんだ、迷うな俺!

準備も整い、出発した。

長旅になったが、幸い台風も来ずあと明日には海に着く予定だそうだ。

風が強くなってきた。

まずい。

俺は王様に、

「台風が近づいているかもしれない。有余はない。休まず行きましょう!」

と言った。

王様は意を決して、

「皆の者!もうすぐ台風とやらが来る!休まず行こう!」

と、威厳のある声で言うと、

「おお!!」

と、皆が唸る。

次の日。

海が荒れていた。

「やっぱり台風だ」

俺はそう言うと、皆もあれが台風かと見定めるようにくいついて見る。

王様も、

「あれが台風かね?」

と俺に問う。

「はい」

俺は一言で返事をする。

王様は、

「皆の者!?予定どおり行くぞ!!」

と剣を掲げる。

「はい!」

威勢のいい返事とともに海の水を深水を海面にあげ、氷でさらに冷やす。

皆は必死で風に負けじと頑張る!

中には飛ばされる者もいた。

しかしながら、構っておけない状況。

数時間闘った!

風は弱まり、ダイアナ帝国から進路がそれる。

ありがたい。

しかし、一人の民が言った。

「晴れた」

と。

俺は不安になる。

上を見ると、そうそこには台風の目があった。

やられる。

みんなやられる。

俺は今までにないような叫び声で、

「皆逃げろー」

そう言った。

しかし、遅かった。

小さく弱まって入るが、消えるように台風の目は皆を包み込んだ。

本当に皆が干からびて枯れていく。

王様さえ、

「あ、待って。待って下さい。枯れないで!」

そう言いながら、俺は無力だ。

皆が枯れていく姿を見ながら、晴れやかな太陽が差し込んだ。

なんでだよ!

あと少しで、あと少しで皆生きて行けたのに!

俺は枯れた皆を集めるかのように抱きしめる。

声にならない泣き声で俺はただただうずくまっていた。

そこには、もう皆いなくなっていた。

でも、何故か黒い猫が現れ、ニャーと鳴いた。

「うっ、頭が痛い」

頭を両手で支え蹲るーーー


はっとなり、頭が冴えるとそこは俺の家だった。

一階の階段の下。

俺、夢でも見てたのか?

頭が痛くてぼーとする。

チャリンと左耳の方で音がなる。

そっと手にとってみる。

そこには、アリアに託された耳飾りを付けていた。

ーーー

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