37話
セシリアを公爵家まで送り届けた後、シックスは王城の自室に帰り、今後どのようにしていくかについて、こめかみに手を当てて考えていた。
湯気のたっていた紅茶はとうの昔に冷めきっている。
そこに、部屋をノックして現れたのは、元ヒューバートの側近の三人である。
ジョバンニ、ローレン、ヴィクターの手には様々な資料が抱えられており、それぞれ任されていた仕事についてシックスへと報告していく。
シックスは報告を聞き終わると、三人に尋ねた。
「兄上は、どうだ?」
その言葉に、三人は苦笑を浮かべながら顔を見合わせ、そして、ジョバンニが口を開いた。
「なんといいますか、どうやら、本格的に道を踏み外され始めております」
「ほう」
シックスは嬉しそうに微笑みを浮かべると、腕を組んで三人に言った。
「そろそろ、本格的に兄上の今後について、動いていこうかと思うんだが、準備はどうだ?」
その言葉に三人は同意するようにうなずく。
「その方がよろしいかと」
「これ以上、王家の醜態をさらすわけにはいきませんし、私もそれがよろしいかと」
「遅いくらいです」
三人が首を縦に振るのを見て、シックスは満足そうに微笑みを浮かべると、今後の道筋を頭の中で決め、そして、言った。
「エヴォナ嬢の父については?」
「横領と、脱税についての資料が整っております。先代から引き継いだようで、罪悪感もあったのか、すでに子爵家当主は全てを返上し罪を償う気があるようです」
「ふむ。こちらからの手紙に、逃げられないと諦めたのだろうな」
「はい」
シックスは頭を指でコツコツとたたく。
「兄上との関わりについても、問題は?」
「ありません。そちらの証拠もそろっています」
シックスはうなずく。
ある程度の罪と、証拠はそろってはいるが、兄を今後どうするべきか、最終的な道筋がまだ残っている。
どうしたものかと考えていると、ジョバンニが一つの資料をシックスの目の前へと差し出した。
「これは?」
「業を煮やしたようで、強行手段に出る準備かと」
ヒューバートが裏で暗躍しているその資料を見つめながら、シックスはにっこりと微笑み、そしてうなずいた。
「よし、これで、終わりへと追い込もうか」
その言葉に三人は少しばかり考えると自分の手持ちのカードを揃え、そして、シックスに頭をさげる。
「では、私は騎士の手配と指揮を取ります」
「私は、証拠と、証人を揃えておきます」
「私は、裏にて、状況の把握と報告を行います」
優秀な三人に満足そうにシックスは微笑みながら言った。
「期待しているよ」
「「「はっ!」」」
後は追い込み、仕留めるだけである。
シックスは、冷たくなった紅茶を一気に飲み干して、微笑みを浮かべるのであった。





