表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】コミカライズ重版!〜悪役令嬢はもう全部が嫌になったので、記憶喪失のふりをすることにした~周りの皆が突然王子をディスリはじめました~  作者: かのん
加筆編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/79

32話

 シックスが話をしてから、ヒューバートがセシリアに学園内で近づくことはなくなった。


 それにセシリアは安堵し、これからはシックスと共に学園生活を楽しめると思っていたのだが、最近、シックスの様子がおかしいのである。


 自分は何かをしてしまったのだろうかと、セシリアは不安になり、シックスと一緒にカフェでお茶を飲んでいる時に、思い切って尋ねた。


「あの、最近、ご様子がおかしいように感じるのですが……何かあったのですか?」


 その言葉にシックスは少し驚いたように目を丸くすると、両手で顔を覆って言った。


「いえ、何もないのです。ただ……」


「ただ?」


 やはり何かあったのかとセシリアは言葉を待つと、ちらりとシックスはこちらを見て呟くように言った。


「思っていた以上に、自分が許容の狭い男だったと、思い知ったのです」


「え?」


「すみません。なんでもありません。」


 シックスはそう言うと、話題をわざとずらし、それ以上話をすることはなかった。


 それがセシリアの中ではもやもやとなり、この数日間、ため息をついてはシックスのことばかりを考えている。


 そして、ぼうっと午後の昼食を食堂で食べていた時であった。


 ざわめきが起こると、自分の目の前にエヴォナがやってきたのである。


 久しぶりに見る姿にセシリアは一体何のようだろうかと思っていると、エヴォナは可愛らしく笑みを浮かべながら猫なで声で言った。


「セシリア様ぁ~。お久しぶりですぅ。」


 舞踏会での一件もお茶会での一件も全て記憶から抹消しているかの如く気安いその雰囲気に、今更自分に何の用だろうかと、返事を返さずにいると、エヴォナは図々しくもセシリアの席の隣に腰掛けしゃべり始めた。


「あのぉ、やっぱり考えたのですが、お友達として、もう一度チャンスをもらえませんかぁ? やさしいセシリア様なら、受け入れてくれますよね?」


 何なのだろうかとセシリアは思い、思わずため息をつくと席を立った。


「エヴォナ様、それは以前お答えしたかと思いますが」


 立ち去ろうとするセシリアの腕をエヴォナは掴むと、にやりと笑って言った。


「えぇ~。恋愛のレの字も知らないセシリア様には、私がいないと、シックス殿下と上手くはいかないんじゃないですか?」


「恋愛のレの字……そうかもしれませんが、だからといってエヴォナ様から教えてもらおうとは思いません。それにエヴォナ様だって上手くいってはいないではないですか」


「そんなことありませんよー。じゃあ良いことを教えてあげますぅ。シックス殿下が悩んでいるのは、ヒューバート殿下が何か言ったかららしいですよ? ふふっ」


 その言葉に手を振り払おうとしたのを止めると、セシリアは眉間にしわを寄せた。


「ヒューバート殿下が?」


「えぇ……ねぇ、セシリア様、いつまで逃げるんです?」


「え?」


 ぎりぎりと爪が食い込むほどにエヴォナはセシリアの腕を掴み、そして言った。


「ちゃんと、向かい合って、ヒューバート殿下と話を着けないから、シックス殿下が不安に思うんじゃないですか? 逃げてないで、ちゃんと向き合ってはどうです?」


 その言葉に、セシリアは力を入れてその手を振り払い、はっきりと言い返した。


「大きなお世話です。それに、ヒューバート殿下はすでに貴方様の婚約者でしょう?」


 エヴォナとヒューバートは国王陛下の命令によって婚約することとなった。いずれはヒューバートが王族の席から抜け、エヴォナの家へと婿入りするだろうと考えられている。


 しかし、エヴォナは顔を歪ませると言った。


「私が欲しいのは、王妃の座ですから」


「王妃?」


「ヒューバート殿下が王座に着けないなら、一緒にいる意味はありません」


「貴方、どれだけ不敬なことを言っているか、分かっていますの? それに、エヴォナ様の成績はいかがでしょうか。あの、少なくとも上位10位くらいには入っていないと、難しいかと思いますが……」


 セシリアの言葉にエヴォナは唇を噛み、それからセシリアを睨みつけると言った。


「成績が何だっていうの! それに貴方に何が分かるのよ」


「え?……意味が分からないわ。私には貴方がよくわからないわ。王妃という立場は欲しいからと言って手に入れられるようなものではないと思いますし……」


 その言葉にエヴォナは声を荒げた。


「……けれどあなたは手に入れられるのよね。いいわねぇ。環境に恵まれて、親に恵まれて、欲しいものは全て手に入れられるのですから! 記憶を失ってもそれすらも問題にはならない。そればかりかシックス殿下まで手に入れて!」


 妬まし気なその瞳に、セシリアは眉間にしわを寄せ、そして、言葉を返そうとした瞬間、先ほどの表情とは一転してエヴォナはにやりと笑い、席を立つと手をひらひらと振って立ち去る。


「ふふふ。私、絶対手に入れて見せますからぁ~」


 あえて、何をとは言わず、エヴォナは立ち去り、セシリアはため息をつくとその場を離れた。


 そして考える。


「私今までエヴォナ様の何を見てきたのかしら……あのような考えの人だとは、全く気付かなかったわ。でも……一度向き合う、か」


 たしかに、いつまでも記憶喪失のふりはしていられない。


 セシリアはどうすべきか、ため息をつきながら考えるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズこちらから 一話無料で読めます!

img_f13f059679b249de89cae1c4b84edf7a2060
書籍特集ページはこちらから
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ