17話
舞踏会がお開きとなり、後日、貴族令息の三人は声を掛け合ってとある店を貸し切ると、酒を煽り始めた。
店内は貸し切りの為にがらんとしており、三人は今までのうっ憤を晴らすように酒を煽る。
「あぁ……あのバカのせいで、俺達の頑張りも水の泡だ」
「本当だよなぁ。あのバカ、もう……王子生命終わったよなぁ」
「たしかに。ありゃー、ダメだろ」
同じ学園に通う三人だが、実際の所学園内ではヒューバートの側近をしていた。
時にはヒューバートを支え、時にはヒューバートをよいしょし、時にはヒューバートの至らない所をさりげなく指摘して、王子を支えてきたのである。
なんだかんだ、勉強に関して問題のなかったヒューバートであったが、その傲慢な性格には難がありすぎた。また、学業の勉学に関しては優秀でも、貴族社会の中ではそれが発揮されていない。
これまではそれでも必死にヒューバートの為にと尽力してきた。
だが、先日の学園の舞踏会にて見切りをつけた。
泡立つ酒を一気に飲み干して、三人は、大きくため息をついた。
「あぁー……俺達の頑張りが無駄に終わったなぁ……」
「無駄だったなぁ……父上から頼まれたから、いやいやだったけれどちゃんとこなしてきたが……」
「あのバカじゃ、無理だろー。……はぁ。俺達も終わったよなぁ……」
そもそもヒューバートは思慮に欠ける。自分がこうだと思ったらそれ以外を中々に受け付けないものだから、学園内でも時折問題を起こしていた。それを問題として表立つ前にせき止めていたのは三人である。
駆けずり回るのはいつも三人の役目だった。
「これからどうするかね」
「俺達あのバカの側近だしなぁ……」
「はぁ……もっと、しっかり監視しておくべきだった。学園内で出来るだけ引き離そうとしたが、エヴォナ嬢があんなにも姑息な女だったとはなぁ……」
「……こんな事になるなんてなぁ……」
大きくため息をつきながら、ヒューバートを止められなかった自分達が責められるのは必然であり、頭が痛くなる。
もう自分達には未来がないことは決まったも同然であった。
その時であった。
貸し切りのはずが、扉が開いたかと思うと、一人の男性が三人の元へと歩いて来る。
「え?」
「え……なんで」
「あ……」
「やぁ、ヤケ酒かい?」
そこへ現れたのは、この国の第二王子であるシックスであった。
突然シックスが現れた事に意表を突かれ、驚いたまま固まった三人だったが、すぐに頭を切り替えると頭を下げた。
『シックス第二王子殿下にご挨拶を申し上げます』
酒を吹き飛ばして頭を働かせる三人は何故シックスがここに現れたのか、頭の中で考える。
だがその答えはすぐにシックスの口から聞かされることとなった。
「私はね、君達が優秀であることは分かっているよ。あのバカが学園で大きな問題を起こさずにやってこられたのは、君達が優秀であったからだ」
その声に、何故か冷や汗が流れ落ちる。威圧的な口調ではないのに、緊張せざるを得ない。
シックスは言葉を続けた。
「今回の一件は、君達の知らぬところだったのだろう。だからこそ、選択肢を与える。」
シックスはニコリと微笑を浮かべて言った。
「あのバカとの縁を切り、私につく気はあるかい?」
自分達が生き残る最後の糸が、目の前にたらされる。
三人は真っすぐにシックスに視線を向けると、即座に答えを出した。
以前から、三人には、思いがあった。
ヒューバートではなくシックスこそが王の器なのではないかと。
『この命、シックス第二王子殿下に捧げます』
答えはすでに決まっていた。





