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【完結】コミカライズ重版!〜悪役令嬢はもう全部が嫌になったので、記憶喪失のふりをすることにした~周りの皆が突然王子をディスリはじめました~  作者: かのん
加筆編

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16話

婚約破棄をしてからしばらく経ったある日、セシリアの家へと友人たちが訪ねて来た。天気が良いという事もあって庭にテーブルを準備してもらい、小さなお茶会が始まった。


 茶うけは令嬢達の持ってきてくれた色とりどりのお菓子であり、セシリアは体型維持の為に我慢していたが、これからは我慢しないと、美味しそうにお菓子を食べている。


 そんな化粧もやめ、派手な装いもやめ、お菓子を食べることにしたセシリアを見て、友人達は皆が嬉しそうに話をする。


「セシリア様が自分らしく出来るようになって良かったです」


「本当に」


「こちらのお菓子も食べて下さいね。どうぞどうぞ」


 どんどんと進められるものだから、セシリアは手が止まらない。


 友人達もセシリアが部分的な記憶喪失になっていると思っているのだが、記憶がなくなってむしろ幸運だろうとセシリアに言った。


 そしてそれから思っても見ない事に、今まで我慢していたうっ憤を晴らすように令嬢達のおしゃべりが始まった。


 一応不敬にあたってはいけないと心得てはいるのか、皆がヒューバート王子の事を、あの方と呼び、エヴォナの事をあの女と呼ぶ。


「あの方、本当に最低ですね。言っておきますが、セシリア様はあのお化粧でもお美しかったです。それにあのドレス姿だって、ハッキリ言って、もう、皆ドキドキでしたよ!」


「えぇ。えぇ。そうですとも。」


「私達でしたら似合いませんが、美しい顔立ちのセシリア様でしたから、むしろあのお化粧はセシリア様にしか似合わないものでした。そしてあのドレス姿、はぁ、艶めかしくて新たな扉を開きそうでした。」


「なのに、あの方ときたら、本当に腹立たしい。」


「あの女もですよ!」


「あの女、いつもあの方にさりげなくアピールしていると思っていたら、すべて計画的だったのですね!」


「本当に! セシリア様の味方のような顔をして、なんていう女かしら!」


「それに騙されるあの方も酷いですわ!」


 次第にヒートアップしていく姿は両親と似ていて、セシリアは慌てて言った。


「皆様そんなに怒らないで下さいませ。気づかなかった私がバカだったのです。」


 その言葉にその場にいた令嬢皆が声をそろえて言った。


『そんなはずありません!』


 令嬢達は鼻息を荒くすると言った。


「セシリア様の努力を私達は知っています!」


「というか、学園の成績をしっかりと把握されていれば、セシリア様がいかに優秀かなどすぐに分かる事でしょう?」


 うんうんと皆が頷く。


「学園は成績を個人情報の観点から公にはしませんが、それでもセシリア様が優秀な事は、最優秀学生賞という学園の栄誉ある賞を受賞されたり、読書感想文最優秀賞を受賞されたりしている面から見ても気付かない方がおかしいのです。」


「それに、あのちょっとおバカそうな喋り方も、本当に、可愛らしかったです!」


「そうですよ!」


 語彙力が次第に落ち始めていく中で、セシリアは恥ずかしくなり始め頬を赤らめる。


「恥ずかしいわ・・・もう、それ以上言わないでちょうだい。」


 両方の頬に手を当てて、困ったように上目づかいをするセシリアの姿に令嬢達は胸を射抜かれると言った。


『セシリア様! 婚約破棄されて良かったですね!』


「あのバカと結婚しなくて、本当に良かったです。」


「あのバカ女にもある意味感謝ですね!」


「まぁ! 皆様、どんなバカな人だろうとも、そんなに言ってはダメよ」


 その言葉に吹き出しそうになるのを令嬢達はぐっと堪える。


 そして気になっていたことを一人の令嬢が尋ねた。


「ですが、記憶喪失とは大変ですよね。ご不便はありませんか?」


「え? えぇ。お二人の事だけ記憶がぬけているだけ……なので」


 皆を騙してしまい罪悪感をセシリアは覚えるが、令嬢達はその言葉に笑みを浮かべて言った。


「いえいえ。二人のことを忘れられたなんて、なんて僥倖でしょうか」


「そうですよ。覚えていない方が幸せです。ですから、今を楽しみましょう?」


「そう、かしら?」


 令嬢達は満場一致で大きく頷く。


 それにセシリアは苦笑を浮かべながらも、皆の優しさが嬉しかった。そして気になっていたことを尋ねた。


「あ、あの。私、悪役令嬢って言われることがあって……その」


 すると、それに令嬢達はくすくすと笑う。


「えぇ。そうですわね。悪役令嬢のような美貌をセシリア様はもっていらっしゃるから」


「そうですわ。けれど、ふふふ。セシリア様ったらお優しいから、悪役令嬢のような非道なことはなさらないし、なんだか悪役令嬢が慈善事業されているようで、ふふふ。見ていて面白かったです」


「口調は悪役令嬢?のように頑張られていましたけれど、ふふふ。セシリア様には申し訳ございませんが、あんなにやさしい悪役令嬢はいませんわ」


 その言葉に、悪役令嬢を演じていたつもりだったが、上手くいっていなかったという事実にセシリアは恥ずかしくなる。


「頑張ったのですが……」


 令嬢達はその言葉に皆が笑い声をあげた。


「残念ながら上手くいかなかったようですわね。私達以外の皆様も、“見た目は美しい悪役令嬢”と噂をしていましたわ。けれど意地悪なことなどなさいませんし、全て相手のことを思いやった行動でしたので、セシリア様を悪役令嬢などと本当に思っている人はいませんわ」


「いるとしたら、噂のうわべだけを聞いて勘違いされた、お二方だけでしょう」


 その言葉に、セシリアはほっとしたような、悪役令嬢を頑張って演じていたつもりなのに上手くいっていなくて残念だったような、そんな気持ちを抱いた。


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