四話 兄の愚かさに弟もディスる。
時は少し前に遡り、舞踏会の会場での事。
セシリアが泣きながら馬車に乗った姿を見たシックスは欠席しようと思っていた舞踏会会場に足を向けた。
すると、その場は異様な雰囲気で包まれていた。
楽しそうなのは兄であるヒューバートと、その横の、最近ヒューバートの周りをうろちょろする姑息そうな女だけであった。
「兄上。先ほどセシリアが馬車に乗る姿を見ましたが・・・何かあったのですか?」
会場に突然シックスが現れ、舞踏会に参加していた貴族達は慌てて頭を下げる。
シックスの姿にヒューバートは眉間にしわを寄せた。
「何だお前来たのか。はぁ・・・お前がくると会場がしらける。さっさと帰れ。」
辛辣な言葉など気にも留めず、シックスは言葉を続けた。
「兄上、セシリア嬢に何をしたのです?」
その声には怒気が含まれており、会場の空気はさらに悪くなっていく。
「セシリアに?ふ・・ふふふ。あの馬鹿な女とは婚約を破棄した。あぁ、清々した!」
「何ですって!?兄上!兄上とセシリア嬢との婚姻は、王家と公爵家を繋ぐ大切なものです!そう簡単に婚約破棄できるものではありません。何より、今は父上も母上もいない状況ではないですか!」
いつもは温厚なシックスが声を荒げる様子に、会場はざわめく。
その様子にヒューバートは舌打ちをすると言った。
「お前には関係がないことだ。父上と母上には帰って来てから話をする。はぁぁ、馬鹿なお前と話をするのは疲れる。さっさと去れ!」
いつから兄はこんなにも馬鹿になったのか。シックスはヒューバートの事を睨みつけると背を向けて歩き始めた。
会場を出て廊下を歩き宰相の元を目指す。
王宮の執務室にいるこの国の宰相であるランドルフの所へと向かうと、部屋をノックしてはいる。
書類に目を通していたランドルフはシックスの登場に驚いたように目を丸くすると立ち上がった。
「シックス殿下、どうかなさったのですか?」
国王と王妃がいない今、ランドルフが忙しい事は知っていたが、すぐに対応しなければ王家と公爵家とで亀裂を生むやもしれない。
「あのバカが、セシリア嬢との婚約を勝手に舞踏会の会場で破棄したらしい。」
「・・・はぁぁぁ!?」
最初は何を言っているのかと困惑していた宰相であったが、シックスの言葉の内容を理解すると同時に顔が歪んで行く。
「な・・何と言う・・とにかく、公爵家にすぐに連絡を入れ、謝罪を・・あぁ、こんな時に限って国王陛下も王妃様もいらっしゃらないとは!」
「いや、あのバカはだからこそ今破棄したんだろう。バカなりに頭を使って、父上と母上が説得できない今なら婚約破棄できると浅知恵を出したのだ。」
いつもは温厚なシックスの口から、バカバカと連発される言葉を聞き、宰相は少しばかり期待のこもった瞳でシックスを見る。
「ほう・・・もしや、気持ちが替わりましたかな?」
シックスは怒りのこもった瞳でランドルフを見ると言った。
「あぁ。あのバカな兄にはこの国も、セシリア嬢も任せられないと、やっと分かった。」
その言葉に、ランドルフは内心、『よくやったバカ王子!おかげで眠れる獅子が目を覚ましたぞ!』と歓喜した。
ランドルフは胸に手を当てて頭を下げると言った。
「私は貴方様こそが王太子にふさわしいと考えております。お覚悟は決まったのですね?」
「あぁ。他の者達にも連絡をしろ。あのバカに現実と言う物を見せてやろう。・・セシリア嬢を傷つけた罪は重い。」
怒りに燃えるその様子に、ランドルフは頭を下げて頷いた。
作者かのんは豆腐メンタルです。豆腐です。ふにゃふにゃメンタルです(*'ω'*)
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