三話 周りの皆様がディスリ始めました。
婚約破棄をしてからしばらく経ったある日、セシリアの家へと友人たちが訪ねて来た。天気が良いという事もあって庭にテーブルを準備してもらい、小さなお茶会が始まった。
茶うけは令嬢達の持ってきてくれた色とりどりのお菓子であり、セシリアは体型維持の為に我慢してたが、これからは我慢しないと、美味しそうにお菓子を食べている。
そんな化粧もやめ、派手な装いもやめ、お菓子を食べることにしたセシリアを見て、友人達は皆が嬉しそうに話をする。
「セシリア様が自分らしく出来るようになって良かったです。」
「本当に。」
「こちらのお菓子も食べて下さいね。どうぞどうぞ。」
どんどんと進められるものだから、セシリアは手が止まらない。
友人達もセシリアが部分的な記憶喪失になっていると思っているのだが、記憶がなくなってむしろ幸運だろうとセシリアに言った。
そしてそれから思っても見ない事に、今まで我慢していたうっ憤を晴らすように令嬢達のおしゃべりが始まった。
一応不敬にあたってはいけないと心得てはいるのか、皆がヒューバート王子の事を、あの方と呼び、エヴォナの事をあの女と呼ぶ。
「あの方、本当に最低ですね。言っておきますが、セシリア様はあのお化粧でもお美しかったです。それにあのドレス姿だって、ハッキリ言って、もう、皆ドキドキでしたよ!」
「えぇ。えぇ。そうですとも。」
「私達でしたら似合いませんが、美しい顔立ちのセシリア様でしたから、むしろあのお化粧はセシリア様にしか似合わないものでした。そしてあのドレス姿、はぁ、艶めかしくて新たな扉を開きそうでした。」
「なのに、あの方ときたら、本当に腹立たしい。」
「あの女もですよ!」
「あの女、いつもあの方にさりげなくアピールしてると思っていたら、すべて計画的だったのですね!」
「本当に!セシリア様の味方のような顔をして、なんていう女かしら!」
「それに騙されるあの方も酷いですわ!」
次第にヒートアップしていく姿は両親と似ていて、セシリアは慌てて言った。
「皆様そんなに怒らないで下さいませ。気づかなかった私が馬鹿だったのです。」
その言葉にその場にいた令嬢皆が声をそろえて言った。
『そんなはずありません!』
令嬢達は鼻息を荒くすると言った。
「セシリア様の努力を私達は知っています!」
「というか、学園の成績をしっかりと把握されていれば、セシリア様がいかに優秀かなどすぐに分かる事でしょう?」
うんうんと皆が頷く。
「学園は成績を個人情報の観点から公にはしませんが、それでもセシリア様が優秀な事は、最優秀学生賞という学園の栄誉ある賞を受賞されたり、読書感想文最優秀賞を受賞されたりしている面から見ても気付かない方がおかしいのです。」
「それに、あのちょっとお馬鹿そうな喋り方も、本当に、可愛らしかったです!」
「あのしゃべり方には海外から来られた外交官の方達もメロメロでしたよ。」
語彙力が次第に落ち始めていく中で、セシリアは恥ずかしくなり始め頬を赤らめる。
「恥ずかしいわ・・・もう、それ以上言わないでちょうだい。」
両方の頬に手を当てて、困ったように上目づかいをするセシリアの姿に令嬢達は胸を射抜かれると言った。
『セシリア様!婚約破棄されて良かったですね!』
「あのバカと結婚しなくて、本当に良かったです。」
「あのバカ女にもある意味感謝ですね!」
「まぁ!皆様、そんなに言ってはダメよ。」
慌てるセシリアも可愛らしく、令嬢達は頬を赤らめた。
誰かが読んでくれるそれだけで、今日も息が出来ます(*´▽`*)