二十七話 エヴォナの末路
こっそりと逃げ出そうとするエヴォナ嬢に、シックスは騎士に指示を出す。
「エヴォナ嬢も牢屋に入れろ」
その言葉を聞いた瞬間、エヴォナは慌ててセシリアのドレスにすがりつくと泣きながら言った。
「お、お願いします! 許してください! もう、もう二度とこのようなことはしませんからぁぁ」
泣きながら訴えられ、セシリアはどうしたものかと思っていると、騎士がそんなエヴォナをセシリアから引きはがそうとする。
「おねがいしますうぅぅぅぅー」
エヴォナはセシリアのドレスを離すまいと必死にしがみつく。
シックスはその様子に、エヴォナが諦めるようにはっきりと言った。
「すでに侯爵家の不正についても、あなたが裏でセシリア嬢を暗殺しようとしていた一件も、証拠をそろえてあります。もう、貴方に救われる道はありませんよ」
告げられた言葉に、エヴォナはガタガタと震えだし、そしてなおもすがる。
「セシリア様! 私が悪かったわ! 全部! だって、だってあなたは全部持っていてうらやましかったんだもの! 私だって、私だってほしかったんだもの! ずるい! ずるいずるいずるい!!! 」
その言葉に、セシリアはかつての自分を思い出す。
何故、エヴォナの言うとおりに厚化粧をして、ヒューバートの好みを聞き、それに合わせようとしたのか。
それは自分自身に自信がなく、自分で考え決めなかったからだ。
セシリアは呼吸を整えると、エヴォナにはっきりと言葉を返す。
「私は、かつて自信にあふれているあなたがうらやましかったわ」
「え?」
呆然とするエヴォナに、セシリアは言った。
「だから、あなたに頼ってしまった。けれどそれではだめだったのだと今ならちゃんとわかるわ。一人の意見を聞くだけでなく大勢の意見を聞くことの大事さや、自分自身に自信を持つこと。難しいけれど、私はそれをこれからはしていかなければならないのよ」
その言葉に、エヴォナは言い返す。
「何言っているのよ! 私の言いなりになっていればよかったのに!」
「……エヴォナ様、私たちの道は分かれました。手を、離してください」
「何よ……何よ……」
エヴォナはうなだれて手を離し、騎士に連れていかれる。
その背中を見送っていると、シックスが優しくセシリアを抱きしめた。
「怖い思いをさせてすみません」
セシリアは首を横に振る。
「いずれ、対峙しなければならなかった相手です。ですから、大丈夫です」
そう。
ヒューバートとエヴォナと同じ道を歩むことは二度とないのだ。
セシリアはしっかりと自分自身の足で立っていかなければならないのである。
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