表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/79

十三話 現実と妄想の狭間

 ヒューバートは舞踏会が終わると、自室へと戻り、そして笑い声を上げ始める。


「くく……はっはっはははははは!」


 自分が王太子となる未来以外を、思い描いたことなどなかった。


 シックスが王太子?


 腸が煮えくり返るような怒りと、ふつふつと燻る感情。


 今でも耳障りな、ひそひそと囁かれる声が蘇る。


 ヒューバートは怒りのままに部屋にあるものを壊し、枕を剣で引き裂く。


「ふざけるな! 王になるのはこの私だ……くそくそくそ……分からせてやらなければ」


 獣のようなその瞳に、今日のセシリアの姿が思い浮かぶ。


 美しかった。


 一目見た時、この人こそが自分の求めていた女性であると、そう感じた。


 それと同時に、エヴォナに対しても怒りと憎しみを抱き始めた。


「あの女が、私とセシリアとの仲を引き裂いたんだ……私達は愛し合っていたのに」


 頭の中で、真実と虚構が重なり始め、ヒューバートの思考は自分の都合のいいように、自分の物語を作り上げていく。


「そうだ……エヴォナが私を洗脳していたんだ。セシリアは私のことが好きだったのに、それを。何ていう女だ。魔女だ。あいつは魔女だったんだ。いや、そうだ。きっとシックスがこれを計画したんだ。私からセシリアを奪うために」


 狂っていくヒューバートは、部屋の調度品を壊し続けながら、ぶつぶつと言葉を呟く。


「あぁ、可愛そうなセシリア。私から引き離されて、きっと泣いたに違いない。そうだ。記憶喪失なのだから、きっと私との思い出も失っていることだろう。うんそうだな。思い出させてあげよう。そうすればきっと、私の所に帰って来てくれる」


 ヒューバートの瞳には狂気が宿る。


「セシリアが戻ってくれば、きっと父上も分かってくれる。それにシックスはダメだな。どうにかあいつを消さなければならないだろう」


 部屋の中にぶつぶつという声が呪いの言葉のように響く。


「あぁぁ、待って居てくれセシリア。お前を私が救い出してみせる」


 妄想の中、ヒューバートは恍惚とした笑みを浮かべた。




 シックスが王太子となった舞踏会から数日後、セシリアは久しぶりに学園の門をくぐる。


 王立学園に通っていたセシリアではあったが、婚約破棄の一件以来休学していたのだが、本日より復帰することとなっている。


 ただし、本来は第二学年にいたセシリアであったが、一つ下のシックスと同じクラスへと移動となっている。


 今まではヒューバートとエヴォナと同じクラスであった為、学園側と王家とでシックスと同じクラスが望ましいだろうということに落ち着いたのだ。


 重複しての授業であるため、日程は妃教育にも時間を当てることとなったのであった。


 この時のセシリアは、まだ、ヒューバートが狂い始めたことに、気づいていない。



 


 

いいね機能っていいですよね。なんか、応援されているみたいで嬉しいです(*'ω'*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズこちらから 一話無料で読めます!

img_f13f059679b249de89cae1c4b84edf7a2060
書籍特集ページはこちらから
― 新着の感想 ―
[良い点] 困ったら全部女のせい、女が悪い。清々しいまでにクズ男ですね。 悪役はやっぱりこうでないと。王道で良いです
[気になる点] ボンクラ王子、闇堕ち!? 闇魔法、魔族っぽい感じになるのかな。 [一言] >ヒューバートが狂い始めたことに、気づいていない。 元から狂ってる説^^ 振り切った感じかな。 面白かった…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ