十二話 顛末
「そこまで。ヒューバート。お前が王太子となることはない。セシリア嬢との婚約を勝手に破棄した時点で、その道は絶たれた」
国王の言葉にヒューバートは焦り始める。
「何故ですか!?」
「この舞踏会には、これから未来、王国を支えていくものが集められている。お前は、ここにいる者たちのことを知っているか?」
ヒューバートは回りを見回す。
けれど、全く身に覚えがない。いや、実際には見たことはあるのだ。しかし、何故か名前が全くと言っていいほどに出てこない。
これまで一度も舞踏会などでは困ったことが無いのに。
「何故……くそっ……シックスは知っていると、でも」
シックスは肩をすくめ、うなずく。
そしてヒューバートは思い出す。自分が舞踏会に出たときには横からセシリアが誰なのかをすぐに教えてくれていたという現実を。
「ここにいる者たち皆が満場一致で、シックスとセシリアを次期国王と王妃に望んだのだ。お前には一票もはいらなんだ。セシリア嬢がいたからこそ、お前は首の皮一枚繋がっていたというのに、残念なことだな」
「そん、な」
ヒューバートはすがるようにセシリアへと視線を向けるが、それを遮るようにシックスが前に立つ。
「兄上も、エヴォナ嬢とお幸せに」
シックスはそういうと、幸せそうにセシリアをエスコートする。
二人の姿はまるで絵本の一ページのように美しく、似合っており、ヒューバートはがくっとうなだれ、そしてエヴォナも顔をひきつらせる。
「私が、王妃になるはずだったのに!このアバズレ女!いつのまにシックス様とそういう関係になっていたのよ!」
その言葉に、セシリアは振り替えると言った。
「言葉使いにはお気をつけになって。ご自身の品位を落としますよ」
セシリアは幸せそうに、シックスと共にきらびやかな場へと戻っていく。
エヴォナもその言葉に愕然とし、拳をぎりぎりと握りしめた。
シックスはクスリと笑うと横に並ぶセシリアに言った。
「お見事」
「意地が悪かったかしら?」
「ふふっ全然」
「ならよかったです。ちょっとすっきりしました」
煌めくダンスホール。
シックスと、セシリアはみんなの、拍手をうけ、音楽にのって踊り始める。
セシリアはシックスを見つめる。
「本当に私でいいのですか?」
「ふふっ。貴方でなければ、私は王位を望まなかった」
「え?」
「愛しています。これから覚悟していてくださいね」
「なにを・・」
シックスは楽しそうに言った。
「私はちゃんと貴方にも私を愛してほしい。だから、これから毎日、愛を囁かせてもらいます」
セシリアはほほを赤らめる。
「お、お手柔らかにお願いします」
「全力でいかせてもらいます」
二人はくすくすと笑いあい、そして皆の祝福を受けるのであった。
それをヒューバートは睨みつけながら、悔しげに唇を噛む。
そして思うのだ。
大丈夫だと。
口元がにやりと歪む。
自分はこのままでは終わらないと、ヒューバートはそう、思い、顔を歪ませた。
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