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寡黙な魔法使い。

魔法使いが普遍的に存在する異世界、私的な場での魔法の使用は禁止されているが、魔法がお金で買われる国巨大大陸中央のリリニア。魔法使いのほとんどは国に雇われる。私はその東方の田舎町にすむ。私には魔術の師匠がいる。それは祖母のガーラで、すでに2年前に他界していたが私が昨年成人するまで大分おせわになった。祖母だけが私の法だった。


魔法使いは、だれもがその胸の中に赤くもえる竈があるという。炎を燃やす意思が。祖母の場合は、それは人形に乗り移り見る世界だった。幼少期から、まだ魔法使いが全面的に“許容”されていた時代ではなかったこともあって祖母は孤独だったという。祖母は人間に対する執着や嫉妬を持ち合わせていたがそれを“愛情”じみたものに変換する丹力があった。そのおかげで祖母の周囲には彼女に魔法をつかってもらおうと人が集まるようになった。幼少期に孤独を埋め合わせる『能力』を芽生えさせたのは、架空の人や友人を想像し、気持ちを想像して、その人にあったその人の本心を見抜きしゃべる“魔法人形”をつくることにのちのちやくだった。その人形は人の本心を語る、しかし、人の気持ちすべてを語りはしなかった、ただ本心の“一部”を語る。人々はよりよい未来を魔法で占おうとするが魔法ですべてをかなえてはならない。そうすれば魔法使いはありがたがられなくなる。それが祖母の考えだった。それに、本心すべてを見抜くことき人に教える事が“正しい”とも限らない。魔法人形、それはそのひとにちなんだものを人形の腹につめ魔力をこめた人形であり、その人の魂を人形に宿し、人形になすべきことを訪ねる、人形は答える。予言、占いの一種である。


小学生の頃の話をしよう。

よく喧嘩する二人、イダ、トールナ今でも私の親友の二人である。

その時期、私学校ではオカルトブームで飽き性のイダ、純粋になんでも興味のあるトールナが、ヴィジャボードに手を出して魔力を使えと、恐ろしいことになることをしっていた私はおばあちゃんに相談をすることにした。その時期は二人は大喧嘩の最中でおり悪くヴィジャボードの流行に乗り遅れてしまった。余計にに人は喧嘩をするようになり、いつもは私が仲裁すれば収まるのに収まらなくなった。


休み時間の二人はいつもはふざけていて面白いのに、その時ばかりはお互いに寡黙で、私もちょっと調子が合わなくなってぎくしゃくしていた。

『私に魔法使いの立派な能力があったら』

彼女たちには立派な魔法使いといっていたが、その時まだ弟子の身ですごい魔法は使えなかった。友人たちに話した理由は“学校では魔法は使えないから”そんなのは嘘である。私にはそのくらいの根性はあった。


それを祖母に相談する。祖母であり魔術の師匠であるガーラ祖母ちゃんは、魔術の使用を許可してくれた。といっても、自分で使うのではなく祖母の魔術を使うことをおすすめした。そのために魔法人形を二人分用意してくれた。

『魔法を使わずとも幽霊とあえる人形がある』

私はその試験品をみて、一人で部屋で笑った。やはりその魔法人形は精工につくられていた。

『二人の真似をする人形。あはは、笑いあう。』

込められたのは幻覚。一人の人形は、トールナのように、よくいえばぼんやりしていて、イダは本人のようにそそっかしい。しかもあまりに彼らの特徴がよくですぎたので、二人の人形は喧嘩をはじめた。それをいさめたのが喧嘩中の本人たち、そして、やがて二人の人形が協力して踊る。

“僕らは、お互いに必要さ”

“でこぼこコンビだね”


私たちは、休み時間に家庭科室にしのびこんでその魔術を堪能した。テーブルの上で、トールナの人形をイダの人形がそれをつつく、それを見て笑い、これが本来の私たちだといってお互い肩を組んで笑いはじめた。

『ね、ヴィジャボードなんていらないでしょう』

私はそういった。

“ふしぎだね”

といって友人二人は笑っていた。


二人はその後、うるさくなりすぎた人形にあわせて大声で歌いだす。そのせいでか、足音が近づいてくる。どう聞いても大人の足音、靴音だ。その魔術の使用の最中に、ある先生に見つかってしまった。家庭科室の扉が少し開いていて不信におもって入り込んできたのだ。

 『おまえたち何を』

私は入口のそばに隠れ、教師に魔法をかけようとした。

『魔術を唱える~(※詠唱)~眠れ』

だが私はそこで失敗に気づく。この呪文、私が半人前なので、煙が届く範囲にしか効果がない。春先で窓は開いていて煙はそとににげる。

『まさか、君たち魔術を!!学校では禁止……』

『しまった』

そこで、私の糸を汲んでか二人がかけよってきて、何をすればいいかときいてきた。私はとっさに応えた。

『先生を押し倒して!!』

『えっ』

『えっ』

二人は顔を見合わせて少し考えるようなしぐさをしたあと、先生の足の裾をひっぱり、私のいうとおり先生をころばせた。私は誤りながら、教師の背中の上にのっかり、煙を吸い込むのをまって魔術を唱えた。

『~~』


私が魔術人形にその場で魔力を込める。

『いいの?』

『先生に怒られるよ』

一件落着、オカルトブームに乗り遅れた二人のうるさい喧嘩は静かになった。私が仲介すると、収まるくらいに。


『もう大丈夫だよ、二人のためだから』


あとで祖母にこの成功を話すと、祖母は大笑いしてくれた。祖母の時代もこっそり魔術で悪さをしたのだと聞かせてくれた。だが教師の一人が魔法使いで、いつだってかばってくれたたしい。

『子供には、助けをするものが必要だ、特に真面目な子にはね』

そういって、祖母は私の頭をなでた。私はすべてが終わったあとに、彼女の安楽椅子のそばでゆっくり休んだ。魔力をつかったあとでそのあと体力をうしない風邪で2、3日学校をやすむことになる。


あのあと祖母が、魔法使いになることを選ばなかった母に学校で魔法を使わせるなと叱られたことを、その数年後に私は知るのであった。


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