Chapter1 「0」
気がつけば「俺」はそこにいた。
いや、「これ」は『夢』か『思い出』だろうか?
「俺達」がここに居たのは10年以上も前だったはず。
大学に新設された綺麗なオープンテラスの食堂、備え付けのラウンドテーブルに座った「俺達」。
記憶にあるようで思い出すことができない、懐かしいとさえ感じるはずのこの状況なのに今まで自分が何をしていたのかどう過ごしていたのかさえ全く思い出すことができない。
そんな混乱の状況にあるにもかかわらず『あいつ』は俺らに質問を問いかけてくる。
「犬、猫、鳥ならどれが好き?」
…くだらない、だがこのくだらない会話こそが大学時代幾度となく繰り返された「俺達」の会話だ。
「俺は断然犬だな!家族揃って犬好きだしな。」
くだらないと思っていた癖に真っ先に答えてしまった、懐かしさ故か生まれ持った性分なのか。
「猫ですね、あの愛くるしい仕草には誰にも抗えないでしょう!!」
君は相変わらずだね、こんな場面でも自分の信念や気持ちに素直だ。
答えを聞き終わったためかそいつは口を開く。
「そうか、では次の質問だが 衣・食・住 ならどれを優先する?」
人間ならどれもが大切なものだろう、それに優劣をつけることは不可能だと思うが…。
「では今度は私から、住ですかね?状況にもよりますが安全が確保されないと疲弊していきますから。」
もっともな意見に感じる、休めなければどうにもならない場合もあると思う。
「ん〜、俺は食かな?腹が減っては戦もできぬってな!」
質問に答えるのはいいが、なんのためだ?
「最後に 生まれ変わるならどれ、人類、亜人類、獣類。」
性格判断でもされてるのか?それともゲームのキャラ作成でもするのか?
「なんでもいいんじゃないか?一言で“類”と言われてもはっきり言ってわからないし。」
言われてみれば細かい部分がわからない以上答えにくい質問ではある。
「二人とも同じ考えなのかい?困ったな、時間もそれほどあるわけではないし…」
時間がないとは、次の講義でも入っていたのか?
「夢」か「思い出」だとばかり思っていたが、寝ぼけてしまっていたのだろうか。
次の講義を確認せねば!?
「まぁいいか、さほど困る事ではないだろう。二人ともお疲れ様、楽しみにしててよ!」
言い終わると同時に聞き慣れたチャイム音が鳴り響く。
音に導かれるように「俺ら」は意識を失った。




