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Mark2 人型加速指輪騎士2  作者: 三価種
Chapter1 三都襲撃
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No.8 独断専行

 動きに支障は……ないとは言えない。体中に鈍い痛みがある。一番痛いの は、爆風を喰らったであろう背中。次点で顔を庇った腕。左手が下だったのか、左のが損傷がでかい。



 左腕は微妙にひしゃげてる。爆風と摩擦熱、そいつらのせいで高温になって耐え切れなかったのだろうか? 改造されていなければ死んでる怪我。どういう反応をすればいいのやら。



 中身の機構は無事なのだろうか? そこが気になる。博士、発狂してないでそこらへんどうなのよ?



『あ?あ、待って。えっと……、やられたわね。左手は全滅。右手はワイヤがお釈迦になってる。銃の方は回収と発射に問題ないわ。ただ、最初300発保管してるとこに穴が空いてて、そっから弾が漏れ出すようになってるから修理必須。爆薬をその穴にねじ込まれでもしたら腕が吹っ飛ぶわ』


 掌銃はあろうがなかろうが、移動手段って点を除けば、雑魚を蹴散らすくらいにしか使えないから問題ない。



『マスター。チビロボ達がこちらに向かっていることをお忘れなく』


 わかってる。だから来られる前にケリをつけねば。



 俺の前にいるのは肩から上が消し飛んだ巨大ロボット二体。爆発で銃のある腕まで吹き飛んでくれていれば楽だったのに、吹っ飛んでいない。



 ただ、今は射撃が止んでいる。きっと視界確保が出来ていないから、致命的な部分を間違ってぶち抜かないように……とかいう配慮だろう。



 ぶち抜いてくれればいいのに。



 しかし、攻撃はなくとも互いの距離は微妙に縮まっている。「真横に並んでいれば、真横を攻撃しなければ誤射しないよね!」とかそういう発想なのだろう。



 つまり、今がボーナスタイム。腕が使えなくとも足は使える。機器に損傷が出ていようが、手足が傷ついていようが、倒立前転するくらいなら委細問題なし。



 足で大地を蹴り、勢いよく手を大地につける。天を向いた足をアトラスに向け、ワイヤを発射、巻き取ることで高速移……ちっ、やっぱそう簡単にはいかせてくれないか! ワイヤのぶっ刺さった角度とかから俺がいる位置を推測されてるっぽい。



 ほんと、銃は強い。 射程内であれば基本的に致命傷を与えられるんだから。



 慌てず右足でゴリアテにもワイヤ。撃ちながらアトラスのを回収、ワイヤを巻き取りゴリアテに接近しながら、ゴリアテの右手へワイヤ。



 こうやって射撃できないところに逃げれば、



『マスター!』


 またか。またダイブしやがった!



 回収は間に合った。巻き込まれなかったが…、アトラスに当たりかねないのによくやる。いや、当たっても構わなかったのか? 当たる時、二体の間に俺がいれば押しつぶせて万々歳……なんて、考えていそうだ。ほんと、めんどくさい。




 …俺がどこにいるかわからないからか、巨大ロボットどもは再度、近づこうとしている。



 諸共潰そうとしてきやがるなら、それを利用してやる。



 さっきと同じように倒立してワイヤ発射。アトラスは背中を向けてる。だから右足で狙うのはゴリアテのいる側の左腕!



 腕へ右足だけ接地。瞬間、アトラスがふわっと浮き上がる。それを見越して、左足のワイヤを大地へ! さらに押しつぶされる前に、ワイヤ回収&ジャンプ!



 ガギャッ!



 硬質な音がかなり近いところで響く。かなりギリギリだったようだが狙い通り。



『いい音が鳴ったわね!損傷が分かんないけど!』


 だな。音的にべこっとへっこんでくれていそうだが……。



 よし!



『ははっ、良い気味ね!』


 ほんとにな! ゴリアテの方は首らへんに当たったのか、多少、そのあたりがえぐれている程度。だが、アトラスは当たり所が悪かったのか、左腕の肘から先が千切れている。



『マスター。喜ばしいことに変わりはありませんが、周囲のロボットたちが集結を開始しています』


 それはもとから。



『ブルドーザーも、です!』


 ではなかったか。あいつらに目はない……あ、普通に動いてたか。目がどこかにあったのだろう。それっぽいところとなるとヘッドライトか?



 ったく、チビロボ共に比べて機動力に欠けるのによくやる。



 とか言ってる場合じゃない。二体がもがいているうちに腕を回収してやろう。



 体勢が不安定極まりないが、片足のワイヤを地面、もう一方のワイヤを千切れた腕へぶっ刺し、巻き取る。こうやればごたごたに巻き込まれずに回収できる。



 よし。さて、大量にぶっ放してきやがった弾は……ん? ほぼ入ってない?



『たぶん私らと同じで、撃つときだけサイズアップできる弾とか使ってたんでしょうよ』


 そうじゃなきゃ、スペースが持たないか。ちっ、当てが外れた。千切れた腕のところにでも、弾丸叩き込んでやろうと思ったのに。誘爆してくれねぇじゃん。



 だが、今の俺の膂力ならば……、



 千切れたアトラスの手に手をかけ、ゆっくり持ち上げる。重い、だが、これくらいなら平気。さすがに片手持ちは出来そうにないが。両手持ちの盾兼打撃武器として扱えそうだ。



 アトラスは片腕になったせいで、立ちにくそう。ゴリアテも腕がなくなった事実は把握しているのか、アトラスの邪魔にならないように動いている。



 盛大に邪魔してやろう。地面についている腕。その肘の内側めがけ、思いっきり千切れた腕を振りぬく。



 ガギッ!



 音がうるさい、手が振動で痛い。だのに一度じゃ倒れない。なら、倒れるまでやるまで。



 打ち付けた反動で持ち上げ、二度。まだ駄目。ならば三度目。



 肘がガクッとなって、バランスが崩れた。次でバランスを崩せる。飛びあがって四度目!



 勢いよく右下に降りぬかれた腕は、肘を強制的に曲げさせ、腕を地面から離れさせる。これで崩れ……ない!



 肘から先がないほうの腕で耐えている。よくやる。



 倒せないなら倒せないで仕方ない。押し倒すことは主目的じゃない。破壊することが目的。そこを忘れてはいけない。



『なんでこいつら、こんなに立とうとしているのかしら?』


 知るか。理由なんてないだろ。



『そうなのよ。理由なんてないのよ。わざわざ立たなくても、あいつらの今の武装は確認してる限り、三本の腕についてる機関銃だけ。それもたぶんそろそろ弾切れするやつ。でも、機関銃なら寝転がったままでも撃てるわよね?しかも、あんたみたいに足に武装があるなら寝転がったままの方がいい。考えれば考えるほど立つ理由がないのよ』


 機関銃が弾切れしかかってんのはあいつらも察せてるだろ。だから、立って小回りの利く踏みつけをメインウエポンにしたいんじゃないのかね。



 後、単純に上の方に来てほしくないか。首が弱点じゃなくても、上の方に弱点があるのかもしれない。寝転がってりゃすぐ行ける。



 まぁ、全部、想像でしかないのだが。



 倒立し、上空に土塊を発射。ワイヤをぶっ刺し、高度を上げる。距離が離れすぎないうちに、千切れた腕の方にもワイヤ……は、難しい。



 関節が柔らかいわけじゃないから、180°大開脚はそもそも無理。いい感じに傾いた座る姿勢になって、足を思いっきり上下に開けば……、なんとか、か。時間かけすぎるとワイヤの射程外へ出る。そうなる前に出来てよかった。



 ……かなり変な体勢で、しんどいが。



 ワイヤがピンと張り、千切れた重い腕が持ち上がる。俺と腕。二つの重さが土塊一個にかかる。最初の推進力程度、すぐに上書きされて下向きの速度に転じるだろう。



 だから、ギリギリを見計らう。



『それくらいならこっちに任せなさい。片手間で計算できるか……って、3秒ね』


 マジで時間ないな!



 土塊の速度が0になった瞬間、土塊からワイヤを回収し、千切れた腕にぶっ刺したワイヤを巻き取り、少しでも千切れた腕の高度を稼ぐ。



 少し遅れて足を戻し、体勢を安定させる。下から上がってくる千切れた腕とすれ違う寸前、ワイヤを引っこ抜き、腕を両手でつかみ、空中で一回転。



 上から降ってくる土塊をいい感じにいなし、アトラスめがけてワイヤを二本打ち込み、即座に巻き取る。



 ワイヤがぶっ刺されたからか、下でアトラスがもがいている。が、この距離と速度なら、ワイヤが押しつぶされる前にアトラスにたどり着ける。



 狙うは胸のあたり。あいつの体勢的に真横からになりそうだが、構うまい。



 ワイヤをアトラスから二本とも回収。千切れた腕を蹴り、足を上へ向ける! 体を腹筋で起こして、蹴り飛ばした腕の上へ移動。インパクト直前、重いっきり足に力を入れて踏み切る!



 ドギャッッ!!



 当たった。効果の程は不明だが、確かに当たった。



 が、まだ動いている。今のではダメだったらしい。傷だらけの突き刺さった千切れた腕を引っこ抜こうとしている。



 押し込めるなら押し込んでやりたい。が、俺が押し込む力に比べると、あいつが引き抜く力のが絶対に強い。爆発も起きるはずがなし。



 なら、近づいて弾回収機構が無事な右腕で装甲を削り取ってみるか。



 目がないからか、アトラスは腕を抜こうとしているだけ。ゴリアテに至ってはまるで「立ってみたけど、どうしよう」とでも言っているよう。



 とりあえず、胸付近から装甲を削……らなくてもよさそうか。ひしゃげ具合を見る限り、腕はド真ん中よりやや左で止まってる。人間で言えば心臓のある辺りは間違いなく、ぶち抜かれてる。



『心臓の位置は体のほぼ中心なので怪しいかと』


 ふぁっ!?



『アイの言うとおりね。まぁ、心臓の中心軸は体の中心軸よりはちょい左にあるけど。あんたをごそごそ改造するときに見たから間違いないし、解剖学なら常識ね』


 改造するときに見たって……すごい複雑な気分だ。



『諦めなさい。左にあると思うのは軸が微妙に左にあるだけじゃないと思うわ。右は肺にだけ血を送るだけでいいけど、左は全身に送る必要がある。その分、左のほうが右より筋肉が発達して、感じ取りやすくなるのでしょうね』


 なるほど。だから「怪しい」のか。装甲のひしゃげ具合的に、心臓の位置にコアがあったらぶち抜けてないかもしれないから。



 なら、やってみる価値はあるか。



 脇からぶち抜かれたせいで、お腹側はぷっくりと膨れ上がってる。ここは脆くなってるはず。手をかざし、



『マスター!』


 わかってたけど、早いな! 一瞬の逡巡さえなく、すぐそばにいる俺をぶん殴りに来やがった。



 腕を引き抜くのをやめてくれるなら、それを利用して刺さってる腕を押し込むのは……きつそうか。さすがにあいつが腕を動かす方が早い。



 とりあえず、要らない装甲を腕へ発射。キン! と甲高い音をたて、少し腕がのけぞ……った反動を生かして殴打してくる。



 が、危なげなく回避。俺の腕のワイヤが生きていれば、この機会にめり込ませることが出来そうだが、死んでるから無理。



 もう一回、装甲を抉りぬいて、突き刺さってる腕を回h……、



『マスター!』


 またか。体が勝手に動く。



 後ろに下がるのではなく横へ。俺がいたところを銃弾が通り抜けるのと同時、腕が降ってくる。



 体をひねりながら斜め後ろへバク転。手がためらいなく先ほどまで俺がいたところを通過していき、降ってきた腕に銃撃が命中している。



 バク転を繰り返し、勢いをつけて大きく跳ね上がる。そんな俺の前で、ゴリアテがアトラスにぶっささる千切れた腕を引き抜こうとしている。



 マズい。非常によろしくない。ゴリアテがアトラスの腕の位置を把握できてるってことは、俺の位置も把握されてる。どこだ? 俺の位置を把握してる奴は……。



 引っこ抜かれた腕がこちらへ投げつけられる。上……はワンパターンすぎて機関銃でぶち抜かれる。なら横……って、アイ!?



『マスターの背中側から見られています。ので、横に出たところで意表を突けはしません。ならば、まだやりやすい上から出るべきです』


 アイの言葉を聞きながら、体が勝手に地面を蹴ると体がふわり浮き上がる。



 たっと何かを蹴ると、体が腕を越える。飛んできている銃弾めがけ、右腕から弾を発射。またふわっとした衝撃が体を襲い、何かを蹴る。



 微妙に回転しながらぶっ飛んでくる腕に着……ッ、着地失敗。微妙に当たって痛い。



『回転するものへの完ぺきな着地など、ほぼ不可能です。跳躍だけでは距離が足りなかったため、二度の弾射出による、反動利用兼踏み台作成も行ったうえで、これです。故に、これ以上は不可能です』


 なるほど。となると損害は足が微妙に巻き込まれて痛いのと、ッ、受け身を取るのに失敗した。



 が、機構が壊れてる左腕の指がぐしゃっと少し変形した程度か。



 あっちはそろそろ弾切れ、



『かと。ゴリアテは接敵が遅かったため、残弾に多少余裕はあるでしょうが…。今のでほぼ切れたかと』


 だよな。千切れた腕は既にカッとんでいった。変に攻撃の機会を狙うよりは、跳ね回って弾切れを待つ方が……あぁ、でも、偽装される可能性があるのか。



 目になってそうなロボット共はどこに何機いる?



 後ろにいる奴がさっきの腕でフレンドリーファイアされていてくれていればありがたいのだが……。



『残念ながら全周にいるわ。数はわずか10機だけど、代わりの目になることに徹しようとしてるのか、ブルドーザもチビロボも一定以上は近寄ってきていないわ』


となると、潰すには接近しないといけないか。倒しに行くのと、視界確保できてるこいつらを沈めるの、どっちが楽かといえば確実に後者。倒しに行ったところで観測隊は代わりがいる。



『いえ、待って。観測隊の外側の敵を示す光点が減ってる……』


 ん? んなもん、市民を逃がすために警官達が戦ってるからだろ?



『減ってるのは更地の中よ!これは……陸自の部隊ね』


 はぁ!? 何で……。自衛隊は戦えないって言ってなかったか!?



『たぶん独断専行。ここにいるってことは第一師団所属のはず。第一は…』

『本拠は練馬です。防衛省ともども物理的に叩かれています』


 はぁ!? いつの間に……。



『我々がこの付近を目指している間に。です』


 正論はいらねぇ。



『あんたが叩き潰した斥候部隊の数を増やした奴で速攻かましたっぽわ。省は兎も角、練馬は第一普通科師団がいたはずだけど…』

『自衛隊側の履歴を見る限り、対テロ用に即応体制を取っていたみたいですが』

『あぁ、察したわ』


 混乱したところをやられたか…。テロられるなら今回の競技場みたいな象徴的なところを叩くはず。「競技場周辺がごたごたしてる。どうしよう!」とか言ってたら圧倒的速度で殴りこまれた。反撃したけど駄目だった。そういうところか。



『てことは陸自で動いてるのは、テロ用に配備されてた第34普通科連隊、第一戦車大隊、それに、第一飛行隊かしら?部隊長は首覚悟でよくやるわ!』


 え。首!? 何故!?



『文民統制。その原則だけは守らなきゃクーデターが起きかねない。譲っちゃダメな一線なのよ』


 マジか。マジなのか。



『ま、災害派遣扱いになればセーフかもだけど。とかく、急ぎなさい。ちんたらしてると横須賀から海自がミサイルやらヘリを飛ばしてきかねないし、空自が横田から攻撃機を飛ばしてきかねないわ。やつらの目の心配はいらない。本体を叩きなさい!』


 了解。全力で叩く!

『災害派遣扱いならセーフ』

 銃火器使いまくってますので、たぶん無理です。

 戦闘用の火器を使わない災害派遣であれば、阪神淡路大震災の反省を受け、「自主派遣」の基準が決められたようです。その基準の中に「人命救助のため」や「省やその近傍が火災である」といったものがあるので、火器使ってなければセーフでしょう。火器使ってなければ。

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