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Mark2 人型加速指輪騎士2  作者: 三価種
Chapter1 三都襲撃
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No.7 ゴリアテ

『あと、マークス!ごめん!もう一体……ゴリアテが来てることに気づかなかった!…ん?違う。情報貰ってる諸々の衛星の映像に細工されてる!?』


 そういうこともあるだろ。



 その辺は博士の領分。任せる。転がってる間に足のワイヤの機能確認。射出、回収。両方とも問題なし。射撃も多分大丈夫。



 次はアトラスとゴリアテに撃たれまくってる状況を何とかしたい。



『それなら、どちらかの背後を取ればいいのでは?さすがに味方を撃ちはしないでしょう』


 だな。博士は落ち込む暇があったら、再発防止策とほかにいないか確認してほしい。



『わかってる。でも、ありがと。再発防止策は、マップに表示される光点を対象のサイズで区分訳分けして表示することね』


 …無言でやってくれてもいいのに。やってるアピール? 単に考えていることが口に出ているだけ?



 とりあえず、さっさとアトラスの背中に移るか。いつまでもゴロゴロ転がっていてはいずれ砲撃されて詰む。



『マスター!アイが確認にm』


 回られると困る。さっきまででもアイの補助があって十全に動けてたんだ。今の怪我をして、アトラスとタイタンに挟まれたこの状態で、アイがいなけりゃすぐにボロボロにされてしまう。



『了解です』


 頼んだ。アトラスの足に撃って背後……は一度やったから対策されそう。ならば、ゴリアテへ! アトラスの時と同じようにワイヤを発射。両方を巻き取り、一本の時より高速で移動。



 博士! 他に巨人がいないかの確認をおn



『言われずとも!さっきみたいなへまはしない』


 任せた。



 どうせアトラスがこっちを狙ってくるのはわかってる。途中で左足のワイヤを地面にぶっ刺し、一瞬だけ回して右手のワイヤともども回収。



 右にひく力が消え、左にひく力がかかり、体がゴリアテの右足を中心に弧を描く。



『付近にはブルドーザーくらいしかいなさそう。上空には最初の襲撃以来、敵影無し』


 了解。



 ゴリアテの左に出たところで、左手のワイヤも回収。右手のワイヤを側面にぶっ刺し、軌道を上へ変化させながら弧を描いていく。



『地下は不明。たぶんいないけれど、いたら困るから探るわ』


 お願いする。



 いい感じまで上がって、背中にワイヤ。これで背中に乗れた。この位置なら撃て…ちっ、普通に撃ってきやがる!



 ワイヤをうまく使いながらロッククライミングの要領で肩の上へ。足は少し違和感があるが、それだけ。たいした支障はない。



 上がっていく最中も遠慮なく撃ってくる。挙句、ゴリアテもアトラスと同じように、背中から倒れて押しつぶそうとしてきやがる。



 一体しかいなかった時より面倒だ。片方がのたうち回っている間でも、容赦なく弾が飛んで来る。当たらなさそうに見えた弾でさえ、転がるこいつの体に当たって反射。こっちに当たりそうになる……なんてことが起きる。



 面倒くさい。



 ッ、マジか。弾を打ち上げ、ワイヤ発射。急いで巻き取って上へ飛ぶと、足元を大砲の弾が通り抜け、ゴリアテに当たってコトリと落ちる。



 砲弾は爆発しなかった。でも、結構重量あるだろうに当たった個所に傷はない。あいつらの持つ一番強いだろう砲弾に耐えられる防御があるとか、戦艦かよ……。



『マスター。砲弾には近づかないでくださいね』


 あぁ。わかってる。あれは近づいたら爆発するやつだ。そんなものにのこのこ近づくわけにはいかない。



 …というか、そんなもの放置していたらまともに戦えないな。なけなしの弾を撃って爆破させておくか。



 砲弾に向かって弾を連続発射。二体の機関銃に叩き落とされても、どれか一個は当た……弾が出なくなった。



 ……ついに弾切れか。こいつに効きそうにないからまだいいが、両足の銃が単発銃と化した。



 射撃を諦め、アトラスの方へ。少しして俺の弾のせいで砲弾がさく裂。地面が大きくえぐれる。



 だのにゴリアテは無傷……とかいう領域じゃねぇな。そもそも爆風に巻き込まれていなさそう。



 爆風に巻き込まれるのを嫌って離れたか? となると、やはり砲台の中で砲弾を爆破させるのは有効そうだ。二体いるから面倒だが、うまくタイミングを計らねば。



 アイなら装填タイミングの把握ができたりしないだろうか。



『これまでの発射間隔からおよその見当は付きます。が、それには照準時間も含まれているでしょうから、あまりあてにならないかと』


 了解。適当にタイミングを計る。



『地下にもいないっぽいわ。だから、正真正銘、巨人サイズのロボットはそこのアトラスとゴリアテだけ。ゴリアテは国会議事堂のある方から来ていたみたい』


 議事堂から? まさか、襲撃は競技場だけじゃなかったってことか?



『たぶん。議事堂も同時襲撃されたっぽいわ。気づかなかったのは国会閉会中で、記者とかが国会にいなかったこと。競技場の惨状が圧倒的過ぎて、そっちに注目が集まりすぎたこと。そして、すぐに混乱してぐちゃぐちゃになったこと。これらのせいだと思うわ』


 理由があるにしても、このサイズのロボットがもう一体いたなら、気づいていて欲しかった…。



『仕方ないじゃない…。あなたに向かって砲撃してきたのはアトラスだけよ。ゴリアテは周辺の警察、軍関連施設を叩いていたみたい。あんたを撃つのと同じ要領で』


 俺を撃つのと同じ要領? 直接は見えないはずなのに、砲弾がぶち込まれる……ちびロボが射撃管制でもしてやがったか?



『おそらく。やつらが目で捕えたデータを共有して……とかでしょ。確かめるなら妨害電波を放てばすぐだけど…』


 ことここに至ってはやる意味は皆無。むしろ、警察無線とかを妨害してしまうから害悪でさえある。



『よね。ま、そんな情報で移動する小さい的を狙えるんだから大したものよね』


 鬱陶しいことこの上ないがな。ほんと、たいしたものだよ。くそったれ。



 で、さっき愚痴ったけど、俺もこいつを目視で発見できてないんだよな。なんでかわかるか?



『街が燃えているせいでしょう。炎の赤がゴリアテの銀色に反射して同化。それで見えなかった……というところじゃないかしら』


 愉快な話ではない。街の悲鳴が、嘆きが、それを齎したものの隠れ蓑になるなど。



『だからさっさと倒すのよ』


 だな。うまいこと砲撃を利用してやろう。



 右手からワイヤを地面へ発射。一気に地面に接近すると同時、左手のワイヤでゴリアテの足を貫く。俺の上をアトラスの砲弾が通り、ゴリアテの砲弾が……って、マジか。



 ゴリアテの足からワイヤを急遽回収。右足から弾を打ち出し、左足からその弾へワイヤを打ち込む。



 地面のワイヤを引っこ抜いて、弾のワイヤを巻き取らず、弾に引っ張られるがままに上昇。



 そうきたか。足にワイヤが刺さってるからって、それを利用して足ごと俺に砲弾を叩き込もうとしてくるとは思わなかった。これ、いつかワイヤを掴まれて、腕ごと砲弾叩き込む……とかされかねん。



『一応、ワイヤには掴まれたときの対策としてめっちゃ滑るようにはしてあるんだけど。確かに、危ういわね』


 俺を改造するときにその辺のやばそうなとこは潰してくれてればよかったのに。



『最悪、ワイヤは根元からぶち切れるから、切りなさい。ワイヤの修復は戻ってこればいくらでも効くけど、あんたが落ちたらどうしようもないわ』


 また納期とか言われるかと思ったけど、案外まともな回答。ありがとう。



『マスター。砲撃タイミング解析に専念させていただければ、タイミングをお教えすることは可能そうです。が、マスターだけで移動するのは厳しいですか?』


 ちょっとは慣れてきたが……、やっぱ厳しい。しかも、さっきの足諸共射撃に代表されるように、あいつらの体を使った移動は逆手に取られかねなくなってる。



 挙句、慣れという要素はあっちにもある。し、こっちは経験できるユニットが俺しかいないのに対し、あいつらはアトラスとゴリアテの二つ。時間をかけると不利になりかねん。



『マスター。我々もアイが情報集積していますので、二人分経験があるといえるのでは?』


 俺とアイで? 経験積んでる体は一個だけじゃないか。アイに細かい制御ぶん投げているという要素があるとはいえ、その経験はつなぎ合わせて1になるモノ。



 そういう点ではこちらの方が劣ってる。だからやっぱり時はあっちのが味方。解析にはたぶん後数回の射撃が必要だろう。だったら、このままアイに補助をしてもらいながら潰す方がいいと思う。



『了解しました』

『待って。周囲の探査が終わったから、そっちに私が回れるわよ?』


 片手間でできるならお願いする。が、出来ないならやめておいて欲しい。たぶんないにしても、またゴリアテみたいなやつが出てきたら詰む。



 というか、周囲からちびロボに茶々を入れられても危うくなる。周囲からの干渉をほぼ完全に把握しておいてほしい。



『なるほど。なら、回れないわ。ごめん』


 了解。なら、今まで通りだ。砲台の中の砲弾に弾を叩き込んで爆破させてやる。



 ワイヤを駆使して、弾丸の嵐の中を飛び回り、タイミングを待つ。今までよりも激しくいろんな方向に移動しているというのに、三半規管が強化されているのか、気持ち悪くなりそうな気配がない、



 やはりアイに補助に回ってもらったままでよかった。これをしのぎ切る自信はない。



 砲台リロードはそろそろか?一度地面に向かって飛び、弾の間を縫うようにしながら飛ぶ。砲台の中に確かに弾があるかどうかなんて、悠長に確認している暇なんてない。



 こいつらは二門砲台を背負っているけれど、アトラスは最初の砲撃からずっと弾は一発ずつ。今まで斉射されたことはない。だから弾が入っているのはどちらかだけ。



 さっきは右だったから今あるのは左だろう。



 くるくる飛び回り、左肩に向かってワイヤ発射。一気に近づきながら、右腕に残っている300発の残りカスと、土塊を同時に叩き込み、左のワイヤを回収。



 右から地面へワイヤを射出。さらに、肩をタンっと蹴ってアトラスから離れる。



 ドーン!



 大気が震えた。少しばかり熱いが、アトラスの方がもっと熱くて痛いだろう。……ロボットだが。



 地面に降りたち、後ろを



『マスター!』



 向く前に体が勝手に倒立、手足を自在に使って弾を回避する。



 この弾丸の量はゴリアテだけじゃ無理。アトラスのも混じってる。あれで落ちないのか。



 アイに感謝しつつ、制御を取り戻す。回避行動はそのままに、少し顔をアトラスへ向ける。



 ……肩から上が吹っ飛んでんのに、動けるのか。効いてないかと思ったけど、効いてる。なんか意外だ。



 ……顔がないのに動いているのがシュール。顔の意味よ。



『動力源はあそこになかった。ただそれだけのことよ。それに、はなからさして顔に意味なんてなかったのよ。動力がある限り動き続けることが出来る。思考制御ユニットがあれば、思考し続けることが出来る。姿勢制御ユニットがあれば、姿勢を把握することが出来る。唯一、今できないのは自分自身の目で周囲の環境を捉えること。きっと今は、ゴリアテの目から得たデータを頼りに動いてる。だから若干、狙いがガバい弾があるのよ』


 なるほど。なら、ちびロボがアトラスの目になりに来る可能性はあるか?



『あるかもね。でも今はそれよりも、さっきの仮説に基づくなら、アトラスかゴリアテの後ろに回ってゴリアテの視線を切ってしまえば、攻撃されなくなると思うわよ?』


 なるほど。ちゃんとした視界もなしに射撃して、アトラスの中枢をぶち抜いたらかなわないものな。やってみようか。それでうまくいけば儲けもの。いかなかったらいかなかったで、別の視界確保源があるってわかる。



 行くか。ま、博士の推測は正しそうだが。爆破の後、少しの間だけ射撃が止んだ。今、射撃再開されているが、ゴリアテの位置は直接。俺を目視できる位置。



 地面を走ってゴリアテへ接近。奴の二門の砲台が俺に向けられる。



 この距離では砲台の中に弾を叩き込んでやることは出来ない。だというのに、砲台の中にはしっかり一発ずつ装填されている。



『そりゃそうでしょうに。あんたの都合に合わせる必要なんて、あっちにないのよ』


 博士の尤もなツッコミに少し遅れて、二門が同時に火を噴く。地面にワイヤを二本ぶっ刺し、急加速。



 後ろで爆発する砲弾を置き去りに、右回りに一息で後ろに抜ける。よし! 後ろ取った!



 攻撃が一気に鎮静化した。推測は正しかったらしい。砲台のとこまで上がって、砲台の中に入り込んでやろう。弾を貯蔵している場所、もしくは弾を生成する場所があるなら、そこを叩いてやりたい。



 ……ん?回転しだした? 回転して意味は……あぁ、背中をアトラスの方に向けられるな。え。まさか。



 あわててアトラスの方を見ると、手の先がくるくる回転し、薬莢と火炎をばらまいている。



 うそん。当たる可能性あるなら、見えなくても撃つと? んなことやるくらいなら、後ろダイブでもした方がマシだろうに! 



 狙いはまるっきり駄目。俺よりゴリアテの上半身に命中している弾の量の方が多そう。だというのに、アトラスは攻撃をやめないし、ゴリアテは俺を振り落とそうともがいている。



 ちょっとしがみつきにくくなるが、その程度。撃ってこないならそれでも構わない。



『マークス。なんかちっこいロボットが結構、こっちに向かってきてるから注意』


 アトラスの目になりに来たか? ならば、それをされる前にゴリアテの目も潰してやる。



 さっきから何度もやっているが、手をひっかけやすい部分はあまりない。が、ワイヤを二本もぶっさせば安定する。動き回られるのがうざいが、たぶんロッククライミングとそう変わらない。



 やったことないけど。



 着実に上がっていき、背中側から肩の上、



『マス』


 ドーン!



 爆音が耳を突き刺し、すさまじい衝撃が頭を揺らす。上下左右関係なく滅茶苦茶にシェイクされるような感覚。その中で鋭い「痛い」という信号だけが着実に脳で翻訳される。



 グッ……。何かに叩きつけられるような感触。



『あいつらやりやがった!ほぼ自爆じゃない!』

『マスター!少々、アイが動かします!状況把握をしてください!』


 揺れるように体が回る。ひらりひらりと動いている間に、感覚が戻ってくる。



 改造されているおかげか、何かあったにもかかわらず、景色が見えるし、音は聞こえる。



 手についている赤いものは、たぶん俺の顔から出た血だろう。結構熱いから、アイがとっさに顔をかばってくれて、叩きつけられたときに腕が顔に押し付けられて、火傷したんだろう。証拠に、顔がひりひり痛い。



 博士。何をされたかわかるか?



『何もかんも、あいつら、アトラスの砲弾をゴリアテの肩に叩き込んで、誘爆させやがったのよ!』


 なるほど。俺一人を確実に殺しに来たってわけか。どおりで、アトラスよりゴリアテの方が、左肩が大きく吹っ飛んでると思った。

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