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Mark2 人型加速指輪騎士2  作者: 三価種
Chapter1 三都襲撃
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No.3 10小隊

 って、え?待って。「5体1組が10」? それって合計50体ってこと?



『そうよ』

『頑張りましょう、マスター』


 相手してられるか! 絶対に倒さなきゃならない奴だけ落として進む!



『そのあたりのさじ加減は任せるわ。ただ、あんたを狙ってるから、挟まれるわよ』


 全部落とせと? んなことしてたら弾足りねぇよ!



『だからその辺の拾えばいいって言ってるじゃないの』

『拾ったところでどう使えばいいかわからないのでは?』

『あぁ、確かに『マスター!接敵します!』……』


 そういうのはもうちょっと早く言ってくれ。



 俺が意図したわけでもないのに足が地面を蹴り、後ろへ飛び跳ねる。途端、元居た場所に鉛玉が降り注ぎ、アスファルトをぼこぼこにする。



『失礼。ですが、回避させました』


 そういう問題じゃないと思うんだが。多少聞けたがロクな説明もないんだから、その辺ちゃんとしてくれよ!



 上から降ってくるロボットめがけワイヤ射出。中央のリーダーっぽい奴のコアの部分をぶち抜き、振り回して追加で二機撃墜。



 ワイヤを回収しつつ、無事な二機へ突貫。すいすいっと射撃を躱して、二機のコアに同時に掌を押し当てる。



 砕け散れ!



 ズガン! と音が響いてロボットの目に宿る光が消える。すぐさま、先ほどぶん投げたロボットの方へ跳躍。着地と同時に足を叩きつけて一機にとどめを刺し、流れるように拳を振り下ろし、コアを砕く。



『コアか頭でも拾って手足の甲に押し付けなさい。なんかいい感じに弾にしてくれるわ』


 了解。使うならコアのがいいだろ。



 赤い欠片を手の甲に押し付けると、普通の手のように見えていた皮膚が道を開くように、キュッと回転して開く。



 心の奥に生じた気持ち悪さを押し殺して、穴より少し大きなコアを押し当てる。まるで咀嚼でもするようにギャリギャリと砕かれ、体の中へ入っていく。



 その光景に言い知れない気持ち悪さを感じたはずなのに、気持ち悪さはさっき手の甲に穴が開いた時よりはない。



 感覚に多少の俺らしさは残されていれど、やはり許容以上は任務達成に支障がないように消されるんだろう。不快だ。



 思考するだけであちらには伝わる。だから、今の俺の気持ちも向こうに伝わっているんだろう。だけど、アイも博士も何も言って来やしない。



 アイはAI。感情がないから仕方がない。でも、博士は人間。この気持ちがわかるはず。なのに言ってこない。博士には感情がな、



『ち、ちなみに!』


 唐突に差し込まれる、震えるような声。黙れってか。わかりましたよ。お姫様。



『ッ、拾った弾は大きいわ。保有できるのは1発だけだから注意なさい』


 使い勝手最悪だな。



『掌銃、脚銃に備え付けの弾なら500発くらいはストックあるんだけどね』


 500!? そんな量、どうやって詰め込んでんだ!?



『弾は極小の球なのよ。エネルギーを流せば一瞬で膨張、銃の形に変形して発射。そんな感じなのよ。だから、腕とか足は割と機構詰まってるって言ってんのよ!』


 だからも何もそのあたり初耳だよ、バーカ!



 ていうか、よくそんな動作してるくせにほぼラグなしで発射できるな!?



『そういうもんよ、そういう。あぁ、そろそろ二隊が来るわ』

『一隊が右から人家を突き破って、一隊が前方から道沿いに来そうです』


 侵略者だから当然だが、建物への損害を与えることも厭わないか! くそったれ!



 どっちのが先だ?



『右です』

『殴る蹴るするなら銃でやって!銃で!』


 普通、手足で殴るほうが損害少ないんじゃないのかね。



『手と脚の機構のが、銃より『接敵まで、5』!?』


 博士の言葉が強引に打ち切られた。早くしてくれたのはいいけど、まだもうちょい早く! ワイヤを右の家の屋根へ!



『善処します。2, 1』


 愚痴ってもお構いなし。機械の声が淡々と時を刻む。



『今!』


 芸術的なまでにぴったり同じタイミングで、横の家の壁が放火にさらされ、ぶち抜かれる。



 上へ引き上げられる俺と入れ違いに、ロボットの小隊が道に転げ出る。ワイヤを回収。中央のリーダーっぽいやつめがけ、ワイヤを伸ばして……あ。外した。



『接敵まで、10, 9』


 !? 早い! ちっ、仕方ない。ぶち抜けたのは腹だが、一気に巻き取り急接近。リーダーを押し倒し、周囲のロボット共が展開する前に逆立ち&回転。



『5, 4, 3』


 脚銃で奴らのコアを穿ちぬきつつ、ワイヤを射出していない方の手で、掌銃を……、



 ッ! 体が勝手に動く。左の家へ足からワイヤが射出され、キュルキュルと巻き取り、体がグイっと移動させられる。



 俺の体を敵の攻撃らしき弾がかすっていく。微妙に痛い。



 お返しだ。さっき拾ったコアを射出!



 ドン! と腹に響く音を立てた弾が闇を切り裂く。俺の行動が早かったからか、ロボットはロクな行動もとれず、直撃。



 すさまじい着弾の衝撃にぶつかった一体のロボットが一瞬でスクラップになる。備え付けの弾よりも威力たけぇ!?



『そりゃそうよ。腕や足に無理やり500発保持してるやつは、膨張させてるけど中身はあんまないわよ?そりゃ、ぎっちり詰まってる拾ったやつのが威力高いでしょうに』


 先に言ってくれ。



 砕けた人家のブロック塀を足の甲に押し付け、弾を補給。両手から電柱にワイヤを射出。よっし! さっきまで相手した奴らの頭上を取った。



 出来立てほやほやの弾を叩き込み、地面めがけてワイヤを射出!



 弾を追い越し、地面へ足……がつく前に、さらにワイヤ。



 弾を迎撃しているロボットを無視して射撃してきやがった新手の方へ。4機のロボットを脚銃で蹴りつける。



『ナイス複雑な機構への配慮!』


 博士の声が妙に癇に障る。嫌がらせに足でロボを蹴りつけてやろうか。



『やめてぇ!?』

『マスター』


 わかってるよ。コアを抉りぬいて手へ装填&射出。ワイヤで複雑に移動しながら、コアをえぐり取る。



『まだ残っています』


 あいあい。殴りつけただけの奴らのコアも抉りぬいて確実にとどめを刺す。



『あら。マークスをターゲットにしてたロボットが警官隊に邪魔されてるわね』


 !? 警察がロボットと戦えるのか!?



『テロがあっても困るから、SATを待機させてたみたいね。攻撃力、防御力ともに普通の警察よりはあるわ』


 どれくらい?



『んなもん私が知ってるわけないでしょーに。えっと……、警察は自動拳銃だけだけど、特殊銃ってのがあるっぽいわね』


 おぉ、特殊ってなんかかっこいい。



『普通の警察が使えないだけだけどね』


 もっと詳しく!



『無理ね。銃口とか書いてあるけど、銃口でかくなりゃ強いしかわかんないもの。銃の種類は辛うじてわかるけど……。短機関銃とか狙撃銃とかはある。けど、バズーカとかはないっぽいわね』


 何故!? それじゃ攻撃力が……。



『だから警察だって言ってんでしょうが。全部吹っ飛ばしてどうすんのよ。捕まえなきゃ背後関係洗えないでしょーが』


 あさま山荘……、



『あれは階段と壁に開けられた銃眼(射線通すための穴)ぶっ飛ばすのに使ったんであって、犯人吹っ飛ばしてないわよ!?』


 さいで。何故警察に火力がないんだ…。



『だから以下略』


 ついに最後まで言わなくなった!



『まぁ、ほら。火力としてはパトカーもあるから……』


 突進する前に銃撃されて火だるまじゃねぇか!



『特型警備車なんてものは一応あるわよ?銃眼ついてる防御力のある車ってだけだけど……』


 屋根の上に機関銃すらないんかい!



『ないわね。まぁあったところで敵はロボット軍団。多少の被弾はものともしないでしょうよ』


 うわぁ……。じゃあ、防御は?



『知らないわよ。民主主義の法治国家なんだから自衛隊のちょい下か同じくらいはあるんじゃないの?』


 なんでそんなに投げやりなんだ?



『よくわかんないもの』

『ハックしてわかりそうな資料パクってきましょうか?』

『やめて。あいつらがうちの攻撃だって勘違いされたら面倒くさいことこの上ないわ』

『承知しました』


 ということは、結構やばめ? 本来なら俺の方に来る奴らの対応をしてくれてるんだから、助けに行ったほうがいいんz



『駄目よ』


 何故!?



『巨大ロボを討ち取ることに専念なさい。その警官達がいるのは東京タワー方面(南東)よ。東に行きたいんだから遠回りでしかないわ。直行する方がその方が結果的に犠牲も少なくなるわ』


 ッ……。何かないか、何か俺が助けに行くに足る理由……。



 あ。警察とかに俺らの立場をアピールできるぞ。



『警官、報道陣の前でロボットを殴れば済む話ね。道中で軽く手助けするような場面はあるでしょうよ。遠回りする理由にはならないわ』


 くそったれ。



 博士の言葉を無視して助けに行くこともできようが、おそらくアイと体の制御権を争って対立することになる。先ほどはスルリと戻ってきたが……。どうせアイも似たようなことを考えていたとかなのだろう。



 『ご名答です。マスター。また、ついでにお答えいたしますと先ほどの少女の介入を阻まなかったのは進路上に』


 だろうな。わかってたよ。



『あと、そrッ!マスター!上ッ!』


 !? 声に引っ張られるように上を見ると、何か知らんがロボットが吹っ飛ばされるようにして降ってくる。



 腕に確保していたコアを発射。真っ向から向かってくる奴らを足止めして、足から後方めがけてワイヤを発射。一気に巻き取り、後退!



 コアとロボットはガッ! っと激しい衝突音をあげて、宙で砕け散る。だが、一体の犠牲で他のロボット9体は無傷。着地する前からこちらに銃口を向けて射撃してくる。



 歩いて回避……なんて芸当は不可。ワイヤを伸ばして突き刺して、巻き取って……を繰り返して強引に射線から外れる。



 が、このプロセスは隙がでかい。特にワイヤがぶっ刺さるまでとか最たるもの。



 ぶっ刺して飛ぶ……ってのはとうにばれている。途中で強引にワイヤを刺したところからぶち抜くとか、他のところにワイヤを撃って軌道変えるとかできるけど、物理法則からは逃れられない。



 ロボットがどれくらいすさまじい性能の計算機を搭載してるかは知らないが、俺の軌道を予知して射撃することくらいは出来る。



 当たりそうな弾はこちらも銃撃で対応。なんかやけに俺の銃撃が当たるが、多勢に無勢。掠る掠る。



『射撃制度がよいのはマスターの腕がよいからです』


 五割くらいが俺…・・・・だったか? それで「腕がいい」なんて言えるのか?



『手振れ補正と風の影響考慮程度しかしておりませんので。ダメダメなら一から十までアイがやる必要がありますが、なくて助かります』


 あぁ、手振れと風か。……風の影響デカすぎだろ。



『割と軽いので』


 さいで。にしても……弾がガンガン減るなぁ! 500発、手足合わせて合計2000発って明らかに少ないだろ!?



 三脚立てて使うタイプの機関銃……、いわゆるミニガンだったか? あれの射撃数って6000発だったろ? まぁ、壊れるから下げた! らしいけど。



 それが分間で消費する量以下じゃねぇか!



『なんもかんもスペースが足らんのが悪い。あれって大抵ベルトで装弾するタイプでしょ?んな量どうやって体に収めろっていうのよ』


 外付けでもいいから付けとけよ!? あぁ! もう!



 発射する弾の弾速調整くらいは出来るよな?



『出来るわ。エネルギー量をいい感じに弄って』


 なら何とかなりそうだ。……ここを切り抜けるだけだが。



 アイ! 敵の弾と激突させて、強引にぶち抜けるとこぶち抜く! 補正任せた!



『承知。博士。アイの分のフォローを』

『えっ。ちょっ、そんな無茶苦茶な…』


 無茶苦茶。その言葉は俺がやろうとしていることにかかっているのか、アイが全部押し付けたことにかかっているのか、それとも両方か。どれなのだろうな?



 だが、構うか。



 射撃を読んで撃つ……なんてことは俺だけじゃ無理。なんか適当によさげなところに手足を持っていけば、アイが撃ってくれる。



 放たれた弾丸はロボットが放つ弾雨を潜り抜け、必要な弾と激突。そこでカッっと折れ曲がる。それを必要な回数だけ繰り返して、ロボットに激突する。



 ロボットの素材が頑丈だからか貧弱な一撃。されど、アイに計算されつくした弾は的確に銃口に飛び込んでいく。



 腕が弾薬庫になっていて、そこを撃ちぬいたら爆発! みたいなことがないかと期待していたがそんなことはない。ただ、銃撃に支障が出るだけ。



 されど、ロボット全員の射撃がほぼ同時に止まれば隙が生まれる。その隙があれば、隊長格のロボへワイヤを射出。キュッと巻き取り一気に距離を詰めることが出来る。



 そして、立ち直るまでに脚銃で薙ぎ払うことが出来る。薙ぎ払えれば、損傷で動きが鈍る。



 それで時間を稼げれば至近距離からなけなしの弾をぶち込み、完全破壊することができる。



『ごめん!また来た!今度は左右!』


 どうせ崩されるならやってやる。まだ形を保つ右の民家に突撃。今まさに壁を突き破らんとするロボを一体刈り取り、別のロボにワイヤ射出。



 さらに足から地面へワイヤ。体を固定した状態で巻き取り、ロボを引き寄せ、左の方へぶん投げる。



 足のワイヤを引っこ抜き、手のワイヤを近くのロボにぶっ刺して移動。残るロボのコアを叩き潰し、横から来る奴らを……、



『上!』


 ワイヤ射出。突き破った家を貫通して向かいの家の壁へ。巻き取って移動しながら柱に射撃を叩き込み、家を崩す。今のでどれだけ損害を与えられたかは分からないが、構わない。



 家に突入していなかったのは……1体だけか。すぐさまコアをぶち抜き、電柱を使って上へ!



『マスター!』


 アイがロボットのコアの位置を示してくれる。……んなこともできたのな。ありがたく脚銃でぶちぬき、着地。



 下敷きにされている奴らもついでに潰して、殲滅完了。



 今ので追ってきているって言ってた10隊のうち、警官のところに行った奴以外壊滅させられたよな?



『行っちゃだめよ』


 まだ何も言ってないのに。



『言わなくともわかるわ。駄目よ』


 ちっ。



 ガン無視して行こうにも、博士のナビゲートがなくば件の警官隊たちのところへ行くことは出来ない。



 ヒントになりそうな戦いを示す銃撃音と、赤い炎、黒煙はある。だが、そんなもの今日の東京にはありふれている。



 故に俺だけではたどり着けるか怪しい。癪ではあるが博士の言葉に従う他、人死にを減らす方法はないらしい。



『戦いに時間を取られちゃったけど、そろそろ首都高……正確に言えば首都高速4号新宿線の真下に行けるわ。後は高速の上なり下なり通れば着くわ』

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