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Mark2 人型加速指輪騎士2  作者: 三価種
Chapter1 三都襲撃
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No.0 プロローグ

 お久しぶりの方はお久しぶりです。初めての方は初めまして。足を運んでくださりありがとうございます。最後まで楽しみながらお付き合いいただけますととても嬉しいです。が、その前に。


 繰り返しになりますが、この小説はフィクションです。本小説に登場するものは実在のモノとは一切関係のない私が好きに書いたものです。その点、ご留意お願いいたします、それでは、本文をどうぞ。

零月(れいげつ)(まこと)

「はい」


 次に呼ばれるのがわかってて、真横で待機してるんだから何もフルネームで呼ぶ必要はないだろうに。



 そう思いながらも答案用紙を受け取り、表面を見えないように腕にくるくると巻き付ける。



冷山(れいざん)穂乃香(ほのか)


 ずっとこの調子で呼んでいるから、答案返却の時はフルネームで呼べって言う何かがあるのかもしれない。



「誠。点数はもう見た?」


 穂乃果は答案を受け取って、そんなに広くもない教室で俺に追いつくために小走りで駆け寄ってきた。



「まだだよ」


 さっきの現代文のテスト返却の時間の時にさっさと見たら「なんで見ちゃうの!?」って言われたからな。



 相手が腐れ縁の幼馴染であっても女子。悲しそうな目で見るのはやめてほしい。何も言えなくなってしまう。



「よろしい。じゃあ、今度こそ、一緒に見るよ!」


 このクラスの出席番号は穂乃香が最後。色々と確認する時間をくださる先生だからあわてる必要はない。だけど、穂乃果はさっさと確認したいのか俺を押してくる。



 狭いから俺の手を取って引っ張る……ってのが不可能なのはわかるけど、押すのはもっと危ないからやめてほしい。



 無事に席に到着。注意を…しようと思ったけど、目がキラキラしてるし後で良いか。



「「せーの!」」


 タイミングを合わせて表を向ける。



「ん?んんー」

「反応に困るな……」

「だね」


 まさかの同点の89。勝っていれば「よっしゃ!勝った!」とか、負けていれば「あぁー!負けた!次は!」とか言えるのだが、同点。実に反応に困る。



 まぁ、勝とうが負けようが賭けはしていない。煽られるだけっていう緊張感のなさが、それに拍車をかけている気がする。



「ある程度落ち着いたかー?学年最高は95、平均は69だ。平均が70になるように作ったから計算通り。間違えたところはやり直して、再提出。解答はわからなかったら写しても文句言わんが、ちゃんと解けるようになっとけよ。困るのは自分だぞー」


 なら89点はいい方か。でも……、



「9割取りたかったなぁ」

「ねー」


 そうだったら平均点との差が20点以上確定だったのに! 70じゃ、79.4なのか、68.6なのかわからん! てか、普通、平均点って小数点以下第一位まで見せるものでしょうに!



 何で一の位までなのかわからん!



「とりあえず、どこミスったか見よ」

「だな」


 模範解答と自分のを見比べながら、どこを間違えたかを見る。



 ……うげ。ここでプラスマイナス逆転してる。しょうもなさすぎる…。



「ざっこ。プラマイ書き間違えて計算結果違うようになってんじゃん」

「うるせぇ」


 そういうお前は……、えぇ……。



「足し算ミスるか?」

「た、たまにあるでしょ?」

「いや、あるけど……」


 そのミスする? ”2+1=2”って、1はどこへ行った。



「む、むむー!だったら誠には受験本番で足し算を間違える呪いを」

「止めろ」


 はた迷惑な呪いをかけてくんじゃねぇ! 中間テストでからかったら受験で呪われるとか洒落にならねぇよ!?



「と思ったけど、やめとく。それで落ちられたらわたしが困るし」

「さよけ」


 ならいい。そんな頓珍漢なもののせいで落ちるとか泣けるしな。



「採点ミスないか?急いでやったけど二回見直したからいけてるはず。たまに〇や×がぐちゃってなってんのは許せ」


 さっき見た時にあってるのにバツつけられてるのは既にないことはわかってる。だから、もしあったとしても俺と穂乃香の点が一緒という事実は動かない。



 でも、あってるところも見とく。もしあったら困るのは俺らだし。



「ないね」

「だな」


 出席番号順で言うと俺らは最後。だのに線が歪んでいることすらない。寝てからやってくださったか?



「よし!なさそうだな!では、田中先生、後はお任せします」

「はい。新藤先生。では、皆さん。これで一学期中間テストは終了です。帰っていいです。が、礼儀なので起立!礼!ほいじゃあ、さよならー」


 田中先生、起立と礼はハキハキしていらっしゃるのに、何で挨拶だけはへにゃへにゃなんだろうか?



 それでも、テストの結果がわかったことによる喧噪は止み、教室の話題はテストが終わって勉強から解放されたことに移る。



「かーえろっ!」

「だな」


 テストが終わったなら今日はもうこの部屋に用はない。忘れ物がないかだけ確認して、出発。



「ねーねー、時間も時間だし、どっかよってかない?」

「ご飯?じゃあ、ちょっと遠回りになるけど、『(ぎょく)』でも行くか?」

「大通り沿いの?」


 うん。あのあたりはゲーセンとかカラオケとかある。暗にそこで遊ばないか? という意図を込めている。



 高校3年生なら兎も角、まだ高校2年生の俺らはテストが終わったんだから息抜きに遊んでもいいだろう。



「むむー、でもそこって中華だよね?今日は中華よりも洋食が食べたい!」


 穂乃香が元気よく拳を振り上げると、綺麗な茶色い髪がふわりと揺れる。



 どうやら俺の「遊ばない?」という意図は察してくれているみたい。そっちはOKならば……、



「『サルデニア』?」

「イタリアン?別にいいけど……、なんであげるの全部チェーンなの?」


 ジトっとした目で見てくる穂乃香。



「個人経営のとこ行こうとすると若干、繁華街から外れるじゃん。ちょっとでも長く、穂乃香と遊びたいんだが、だめか?」

「そっかー、じゃあ、仕方ない。許す!」


 うってかわって、ブラウンの瞳が楽し気だ。喜んでもらえて何より。



 下駄箱で靴を取り、冷やかしてくる俺の友人を軽くあしらう。その横でからかってくる穂乃香の友人に穂乃香が逆撃している。



 さっさと靴を履いてしまって高校の敷地外へ。



今日は5月も半ば。桜はとうに散り、緑に色づき始めている。しかし、太陽は真夏のようにギラギラ照り付けているわけでもない。遊ぶにはちょうどいい日だ。



「そーいえば。夏、どうする?」


 夏? あぁ……、オリンピックか。



「どうもこうも……、あれ、強制参加だろ?」


 人数が足りないからボランティアに高校生使うよ! だったか。ボランティア(強制徴募)とか草も生えない。学徒勤労動員反対! とでも言っておけば撤回させられるのだろうか。



 無理だろうなぁ……。



「とりあえず、高三(こうさん)じゃなくてよかったとしかいえんな」

「だね」


 強制徴募できる範囲はせいぜい、宿が要らない首都圏だけだろう。それより遠くなると宿がいる。見物客が国内外から来るのに、見物客でない人で宿を埋めてどうする……みたいに考えるだろうから。



 だから首都圏以外はボランティアをしなくてすむ。



 それすなわち、首都圏だけが勉強時間を削られるのに、他は削られないということ。



 高二(こうに)でも正直、何が楽しくて無賃労働せにゃならないのかわからないから勘弁してほしいのに、高三(こうさん)とかもはや「死ね糞ども」としか言えないと思う。



「ワンチャン、高三は免除してくれる……」

「ないない」


 穂乃香の甘い想像をへし折る。絶対ない。



「あって「オリンピック期間中は首都圏の皆さんを応援するため、オリンピックを見て選手も、ボランティアの方も応援しよう!」ってほざくぐらいだろ」

「否定できないのがひどすぎる」


 それで何になるの? っていうな。「わかった!オリンピック見るわ!勉強しながらなぁ!」になればまだいい方。



 たいていの奴らは「わかった!心の中で応援しながら勉強するわ!(どうせ忘れてるけどな!)」だろうよ。首都圏の大学の志望率、上がるかもな。近場の首都圏の奴らの成績が下がってワンチャンあるかも!で。



 いつもはまっすぐ行く道を右折。曲がったところで大通りまで風景は変わらない。ただの住宅街。



「オリンピックが完全に流れてしまえばいいのに……」

「流れそうな兆候はあったけどな」

「あぁ、中国の」


 そうそれ。パンデミックになりそうだったけど、うまいこと封じ込めた。あの一件。



「将来、参考にならない参考例とか言われるんだろうね」

「だろうな」


 感染者焼殺&強制外出制限&従わなければ粛清。「人権?ナニソレ?食ベレル?」を地で行くトリプルコンボ。



 確かに、感染源の隔離は完璧に達成できる。でも、その方法が死体焼却ついでの殺人とか意味わからん。



 それだけ事態を重く見たのだろうが…、あの国でもそこまでするか?



 陰謀論者が元気になるのはいつものことだが「感染してないはずの政敵を業火の中にぶち込んだんじゃ?」という言説は一定の証拠っぽいものまである。



 カオスではあるが、中国の歴史に刻まれる一大事であるのは間違いないだろう。これをきっかけにさらに中央の力が強まるのか、分裂するか……、どう転がるかね。



「てか!そんな話はどうでもいいの!どうする?」

「ボランティアの配属か?」

「そうそう!」


 元気よく頷く穂乃香。確かに脱線しすぎていたけど……。



「考えるだけ無駄だと思うぞ?」

「なんで!?」


 目を丸くして本気で驚いているっぽい穂乃香。



「いや、だって……、俺らの希望を聞いて配属!とかすると思うか?パンクするわ。どうせ学校ごとにドーン!って割り当てられて、そこに押し込まれるだけ。考えるにしてもその枠決まってからじゃねぇかな」


 ……あれ? オリンピックって確か7/22日からだったよな? 後、2カ月切ってんのに未だにないって相当やばくないか?



「先生らが忘れてるのかも。携帯で確認してみる!」

「ん。了解」


 穂乃香も同じ想像に達したみたいだな。



 まぁ、さすがに先生が忘れてるのはねぇと思うが、言わない。言ったところでどうせ同じ結論(携帯で調べる)に達するから。



 携帯弄って待ってるか。会話アプリから何件か通知来てたような気がするし。



「一応、端によっとけよ」

「もちもち」


 歩きスマホは危ないからしない。ちゃんと立ち止まる。制服が汚れないように気をつけながら、民家の塀に寄っておく。



 うん、特にたいしたものはないな。友達から赤点出た! とか来てるけど、知らんがな。あんだけやっとけって言ったのに。



「ねぇねぇ!今日、その枠組み発表されてるよ!」

「え?」


 ほら! と見せつけてくる穂乃香。



 マジかよ。今までなんもなかったくせに……って違うっぽい? 仮発表はあったぽいな。これが正式発表か。全然気づかんかったぞ。強制動員するならせめて仕事して。



 見る限り、どこの学校がどこ配属とかの調整に時間喰ったっぽい? 茨城の北の方や、山梨の一部さえ引っ張られてるこのカオス度合い。俺らはもちろん動員されるな。



 そんだけ無茶するなら高三に慈悲が……ないわ。高三も動員。ご愁傷様。



 あぁ、今、高三じゃなくてよかった!



「明日決定かな?」

「だろうな」

「なんか希望聞いてくれるなら一緒んとこ選ぼうね!」

「もちろ……ん?」


 何だこの音は?



「どったの?」


 不思議そうな顔で覗き込んでくる穂乃香。



「大きな車が走ってくるような音が聞こえないか?」

「え?……確かに」


 穂乃香も周囲に気を配ったらすぐに聞こえたらしい。ということは聞き間違えじゃない。



 ここの道はそんなに広くない道。こんな音を立てるような車が走れるような道ではないはずだが。



「音は近づいてきてる?」

「ような気がする」


 なんか嫌な予感がする。とりあえず引き返……、



「誠!」

「え?ちょっ、嘘だろ!?」


 突如曲がってきた10トントラック。そいつが道の両側の電柱をなぎ倒しながらこっちに来る!



 こんなところをそんなので爆走して何がしたいんだよ! 糞が!



 悪態をついてる場合じゃない。走って横道にそれる……のは無理。トラックのが早い。なら、



「穂乃香!ちょっと我慢しろ!」


 荷物を放り投げて、穂乃香を抱き上げて、塀の上に乗せる。



「離すぞ!」


 返事も聞かずに離す。塀が狭すぎて向こうに落ちたっぽい。すまん。でも、そんな場合じゃない。



 ついでに、ごめんなさい。知らない人。不法侵入します。でも、緊急事態。許してください。



 塀に足をかけ……微妙に高いな!?



「誠!」

「あぁ!」


 すぐに立ち直って穂乃香が手を伸ばしてくれる。それを掴んで俺も……あ。駄目だ。間に合わない。



 だったら、せめて……!



「穂乃香!逃げろ!」


 伸ばされた手を押し、穂乃香を突き倒す。これで穂乃香の手は巻き込まれずに済む。



「誠!」

「ぐがっ……」


 安堵の息を吐く暇もなく、追突してくるトラック。



 体がふわっと浮き上がる。突撃で即死するかと思ったが、まだ意識があるのか。



 どうせ、地面に落ちるまでの命だろうが。

 

 

 せめて糞運転手の顔だけは……。薄れゆく意識の中、必死にトラックに顔を合わせ、運転席を見る。



 微妙に焦点の合わない目で、必死に運転席を……、え? 運転手は……人間じゃない?



 そう思った瞬間、強烈に地面に叩きつけられ、意識が暗闇に落ちた。

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