私を離してください
よし、こうなったらやったことないけど、掴まれた腕を利用して腕をひねり上げるっていう何か合気道の何かありましたよね。
あれできないかな。
やったことないけど、とか考えていたら。
男はさらに身を近づけてきたので、私はその分下がりましたよ。
近寄らないでください、近寄っていいのは私のルーシス様だけなんだから。
画面から出てこれないから近づくのはいつも私だったな。
寂しいときなんかゲーム機に顔を摺り寄せて寝てた覚えがあるよ。
なんて現実逃避始める前に何とかしないと。
じりじと近づく男にその距離分下がる私。
それを繰り返していたら後ろを歩いていた人にぶつかってしまいました。
いや、ぶつかりすぎでしょう私。
「すみませ」
ん、と言おうとすると、私は嗅ぎなれた香りが近くからするこに気が付きましたよ。
この香りは!
ルーシス様の香りじゃないか。
どこにいるの、ルーシス様。
私はここですよ!
「ここにいたんだね」
そうそうここにって、あれ何か背後から声がするな。
「急に居なくなったから探しちゃったよ」
「ル、ルーシス様!」
何と振り返ればルーシス様が居ましたよ。
さっきぶつかったのは彼だったようです。
助かったよ、ルーシス様。
早くこの手を掴んでいる変な男どうにかしてください。
「な、何だその男」
「君こそ何だい? 僕の連れに何か用かな?」
さりげなく男の手を叩き落とし、掴まれていた所をルーシス様に掴まれました。
男と違って掴み方が優しいわ。
「彼女が一人で寂しそうだったから相手してやろうとしただけだ! 悪いか」
いや、本当にひとりだったとしても相手しなくて良いです。
「彼女を一人にしてして寂しい思いをさせてしまったのは僕の責任だ。 そこは反省するよ。 だけど、嫌がっている女性に対してそれは良くないと思うな」
ルーシス様が怒ってる?!
口調とか一切変わらないけど、こんなこと言うんだ。
初めて知った、じゃなくてですね。
何という構図とセリフ。
まるで乙女ゲーム。
いや乙女ゲームなんだけどね。
キュンキュンしちゃうわ。
そんなこと私のルーシス様にも言って欲しい。
ぜひともボイス付きで。
いや、フルボイスだったから音声付だろうけども。
男は何か言おうとして、諦め走り去って行きました。
こんなイケメンに勝とうなんて100万年早いってね。
「ごめんね、シェリーさん。 怖い思いさせて。 大丈夫だった?」
男が走り去って行ったのを確認した後にルーシス様は私を心配そうな顔で見つめてきましたよ。
掴まれている手はそのままで、逆の手は肩に乗せられました。
いやぁ、照れる。
こんな展開想像してなかったけど、これは恥ずかしい。
「だ、大丈夫です。 ルーシス様のおかげで」
視線をどこに向ければいいか分からなくて、ルーシス様がいない所ばかり見ていると、手を引っ張られました。
お?
次の瞬間、私はルーシス様に抱きしめられておりましたよ。
何事ですか、これは?!
「良かった… 何もなくて」
いや、今何か起きているんですがね?!
私を殺すつもりですか、ルーシス様?!
「一人にしてごめんね」
いや、私の頭がちょっと違う所にお出かけしてたから何でルーシス様何も悪くないんですよ、はい。
だから謝らないでください。
そして早く私を開放してください。
出ないと茹で死ぬ。
ドキドキ死する。
「わ、私は、大丈夫、です、から、あの」
お願いです、私を離してください。