今日は逃げないことにしました
ルーシス様の車から一緒に降りる際、またルーシス様の手に触れてしまいました。
あぁ、羨ましいわ、シェリー!
2度もこの手に触れられるなんて。
「着替えてから入るから、僕たちはこっちからね」
そう言って本来の入り口からではなく建物の裏側から建物の中に入っていく。
そうすると中にいたスタッフの方々が皆、ルーシス様に頭を下げてくる。
私も本来頭下げる側よね。
そう思いながら歩いていたら、触れていた手を引っ張られた。
「君はこっちね」
何だか迷路みたいな通路に入り込み、とある扉を開けるとさっきとは異なったスタッフの方々が部屋の中でも動き回っていた。
「ルーシス様、お待ちしてました」
「待たせて悪かったね、ルビ」
その中の一人が駆け寄ってきたんだけど、ルビってルーシス様専任の執事よね。
そうそう、こんな少年みたいな男の子だったわ。
「いえ! それより後ろにいらっしゃるご令嬢は?」
「僕の知り合いだよ。 急遽でごめんね、彼女にドレスの準備と高さのない靴を用意してもらえるかい?」
皆さん、ルーシス様にとって私はただの知り合いだそうです。
一応、私たち婚約者なんですよ、これでも。
絶対言わないけど。
「はい、お任せてください! どうぞこちらへ」
えぇい、ここまで着たら最後まで付き合ってやりましょうとも。
ルーシス様の知り合いとしてね!
そうして、ルビに連れてこられ数人のメイドさんたちに囲まれ何やかんやと揉みに揉まれ気付いたらメイクやらドレスやらヘアセットまでされてました。
もう何なの、と思いつつ出来上がった姿を目の前の鏡で見てみれば凄い美女が映っていました。
元が良いから最高ね。
ベージュのドレスも最高だわ。
胸元にはいかにも高そうなネックレスがぶら下がっているんだけど、これ一体いくらすんのこれ。
「あ、準備できたみたいだね」
鏡のシェリーに驚いていれば、もう輝かしい王子様が立っていました。
髪の毛がセットされているから普段見えない眉毛まで見えて最高。
「うん、凄い綺麗だよ」
それは貴方がです。
綺麗だし格好いいし最高です。
もう少し私に語彙力があれば尊さが伝えられるのにごめんなさいね。
「ありがとうございます… ルーシス様も素敵です」
ここにカメラがあれば何百枚も連写したのに。