思わぬ再会
とぼとぼと歩いていたら向かい側から高そうな車がこちらに向かって走ってきました。
きっと誰かが会場へ向かっている所なんでしょう。
誰だか知らないけど、私の分まで楽しんできてくれ。
とか思っていたら私の横で車が止まり、窓が開きました。
「あれ、何処に行くんだい? 会場は逆だよ?」
「え」
横を見れば、何故か制服姿のルーシス様。
え?
何で制服なの?
ドレスコードは?
いや、そもそも何で話しかけてきたの。
見過ごしてくださいよ、そこは。
「あ、え、あ」
驚きすぎてアリアより話せなくなってるわ、私。
母音しか口から出てない。
「もしかして足がまだ痛むのかい? それだとヒールとか履けないよね」
あぁ、何と心優しい!
もうそう思っていただけただかで十分です。
ありがとうございます。
私、明日からまた女の子探し頑張りますから!
「良ければ一緒に来ないかい? 一緒に会場に行こう。 君が踊らなくても大丈夫な席へ案内してするし、ドレスも用意してあげるから」
「え? い、いえ、そんな! そこまでしていただくなんて!」
とか言ってると助手席から出てきた黒のサングラスをつけた体格の良い男の人に背中を押され、気付けばルーシス様の隣に座らされていました。
その間、僅か30秒。
人拐いってこんな風にされているのね、きっと。
って嫌々、何乗せられてんの、私!
「ルーシス様、私は…!」
「ん?」
行きたくありませんって言おうとしたのに横顔がイケメン過ぎて鼻血出そう。
あとこの車、ルーシス様の匂いが少しする。
あとあと、距離が近いよ?!
「ナ、ナンデモアリマセン」
私のバカ、降ろしてくれ、行きたくないのだと何故言えないのだ。
いや、もうルーシス様に出会っちゃってる辺りアウトなんだけどね。
行っても行かなくてももうどっちも意味ないわ。
ここはもう諦めるしかないわね。
心を無にするの、きっとそうすれば何か良い考えが浮かぶはず。