え? はじめからでお願いします
明日また経過を診せる約束をした後に保健室のドアを開ける。
「あ、良かった。 探してたんだよ」
「えぁ?!」
おう?!
どうして扉の前にルーシス様、それも生ルーシス様がいるの?!
そんな爽やか笑顔を向けてくるなんて何事?!
足の次に私は目も人生もやられるんですか?!
「さっき足引き摺っていたから心配だったんだ」
心配してくれるのは嬉しいけど、私の人生はここでバッドエンドを迎えそうなんですが?!
え、『はじめから』って出来ませんかね?
やり直しできませんか?
私、1からやり直ししたいんですけど?!
できないんですか?!
「………ご、ご心配をおかけしすみません。 でも、私……大丈夫なので」
どんなに願ってもやり直しできないようなので渋々答えましたよ、えぇ。
うわ、それより…。
近くにいるせいか、ルーシス様から凄く良い香りが…こんな爽やかな香りがするんですね、ルーシス様。
死ぬ前に知れて良かったです、はい。
こんなに近くでお顔も見れて、会話も出来て何も後悔することはありません。
いっそのこともうここで終わりにしてください、と思いながら頭を下げる。
「君、1年生だよね。 クラスは何組だい? 心配だから着いていくよ」
え?
いやいやいやいや。
何を申しますか、私は大丈夫とお伝えしたのですよ?
ルーシス様。
「いえ、ホントに大丈夫ですから」
「遠慮しなくて大丈夫だよ。 はい、手を貸して。 体重こっちにかけて良いから」
うわぁ綺麗な手、まるで芸術品ですね、じゃなくてですね?!
「その子、捻挫しちゃったみたいだから頼むよ、ルーシス君。 先生ちょっと席外すから頼んだね」
え、裏切るのね、先生?!
何処に行くの、私も連れてって!とルーシス様の前で言える訳もなく。
「じゃあ行こうか」
「…………はい」
渋々頷くしかなかった。
手は仕方ないので掴みました、ちょっと。
数センチだけだから!
暖かった…ゲームじゃ分からないけど、ルーシス様の手って暖かいのね。
あぁ、もう私、死んでも良いわ。