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私は物語から逃げます  作者: レイ
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何で湧くのよ

やってきました、舞台となる『ハピネス学園』。

皆が幸せになるようにと願われ建てられたとされる学園らしい。

実物は迫力あるわねぇ、と門の正面に立ち思う。

まだ入学式開始時刻まで時間があるので人が疎らである。

この門で主人公と愛しのルーシス様が出会うのだ。

お互い一目惚れから始まるなんてロマンチックよね…。

まぁ、私も一目惚れしたんだけどね、ルーシス様に。

あの輝かしい顔、スタイル、何もかもが私のツボ!

そんな彼はこのシェリーの婚約者だったりするのだけど、するのだけど!


すんごい悲しいけど、彼とはお付き合い出来ないのである。

出会って存在を知られてしまえばそれが最期よ、私。



何て血も涙もない話なのかしら。

そんな彼を一目だけでも見たくて早く来たわけなのだが、具体的にいつ主人公と出会すのが時間が全く分からない。

そんなことまで物語に書いてなかったのだ。

書いてよ、私のために、是非。

隠れてるの見られるのも不味いんだから。


門が見える所の影に隠れ、そちらを見ているがまだ主人公もルーシス様もいない。



「春先だから冷えるわね…」



長時間戦になることは分かっていたのでタオルケットやら羽織るものやら持ってきていたがそれでも冷える。

ホッカイロがこの世界にもあれば持ってきたのに。



「なら、僕の上着貸そうか?」



「え?」



声がして振り返りば、そこには。



イタズラ王子?!

何故ここに?!



思わず叫び出しそうになったのを防いだ私を誰か誉めて欲しい。

何でいきなり攻略対象出てくんのよ、出てこなくて良いから。

出会すと私の死が近付くのよ。



「女の子が身体を冷やすのは良くないよ。 ほら」



そう言って彼は上着を脱いで私に向かって差し出してきた。

そうだ、見た目は可愛らしくて派手好きな彼は女性には紳士な一面もあったんだった。

確か好きになったら一途とかなんとか。

実はルーシス様が好きすぎて他のキャラの事とかあんまり覚えてなかったりする。

すごい印象深いイベントとかなら覚えてるけど。



「あ、ありがとうございます…」



恐る恐るそれに手を伸ばし受け取ろうとするも、何故か素直に渡してくれない。

何だこいつ、実は渡す気ないのか。



「ただで渡すのは面白くないな… そうだ、君がここで何をしているのか教えてくれたらこいつは貸そうじゃないか!」



子供か、いや、子供だった。

高校生はまだ子供よ、私。

落ち着きなさい、こんなことで彼に興味を持たれてしまったらそれこそ終わる。

ここは彼の興味が湧かないようにするのよ、私。



「ちょっと人を…探してまして」



差し当たりなく答えるの、それが一番。

そうすれば彼は興味を失くすはずなんだから。



「隠れながらかい?」



「は、はい…」



さっさと興味をなくしてくれ!

もう上着なんていらないから!

冷や汗だらけで上着なんて着てらんないから!



「イオン様、勝手にいなくならないで」



必死の訴えに対して助け船が、と思えばまたもや攻略対象。

そうだよね、彼の護衛なんだからこの男も来るよね、私知ってた。

もうこうなったらルーシス様は諦めて校内に逃げるしかない。



「あ、あの、私もう大丈夫なので、こちらで失礼しますね」



そう言って私はその場から逃げた。

後ろで何か言っていた気がするが知るか!

私は関わらないんだから!

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