SF全振りは吉と出るや
ノヴォ・アスターテ:女神の箱庭。あるいは閉ざされた星。(白煙モクスケ)
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うちの子が小学生のころ、同級生に「ダイソン。それは新しい掃除機のかたち」とナレーションを入れてから、ずるずるずるずると一気に給食の麺類をすする子がいたそうです。今回ご紹介する作品に関係があるのは掃除機のダイソンではなく、ダイソン球のほうです。恒星を球殻で覆って、放射されるエネルギーを全部回収利用しようというアイデアです。
ただしノヴォ・アスターテは太陽系外縁部の全然ハビタブルではない軌道にある開拓惑星で、テラフォーミングの都合上、せっかくの大気をナノマシンによる球殻(天蓋膜)に閉じ込めようというもので、シェルワールドと呼ばれているアイデアに近いものですね。
https://en.wikipedia.org/wiki/Shellworld
エネルギー収支的に絶対無理な気がしますが、この世界にはマギマテリアルがあります。つまり反物質がどうにかして生産または捕集され、動力源となっています。まあその確保量と確保スピードによっては、どこにだってハビタブルな惑星は作れるのでしょう。天蓋膜の内側には人工青空や人工星空が提供されているようです。
そしてある日、天蓋膜はグレイグー化しました。ナノマシンが暴走して制御を受け付けなくなったうえ、外の世界と遮断されてしまったのです。同時にあらゆる疑似天変地異と大事故、それに次ぐ人間たちの争いが起きて、30億の人口は5億に減りました。それまでに太陽系の先行テラフォーミング惑星から移民と資源と機器・設備が持ち込まれていて、以後は広大な廃墟空間が都市鉱山のように資源を回収する場となり、したがって諸勢力の割拠し争奪する場ともなりました。
グレイグー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%BC
人類は入植惑星ごとにある程度の進化を遂げており、火星系、木星系と言った特徴が現れていますが、それに加えて合法・非合法のサイボーグ化・義体化が広がっています。ロボットの性能も、人間ほどの柔軟な判断能力はないとしても、様々なミッションを強力に遂行できるようになっています。魔法は今のところ登場しませんが、それに劣らず強力な、高度に発達した科学があります。もちろん色々な要素から、それらを利用できる人々はごく一部なのですが。ですからファンタジー世界同様、フロンティアが不規則なまだら模様を描いて存在する世界で、英雄物語を語ることができるわけです。もちろん魔法の源と違って、あらゆる装備と補給品は組織の力で管理され使用が許されるのであり、英雄は無所属というわけにはいかないのですが。
いかがですか。SF設定を説明なしに詰め込んでいるのは意図的でありフレーバーです。そして英雄になってゆきそうな人物はふたり。ハイチューンド(全身魔改造)のユーヒチ・ムナカタはウォーロイド(武装ロボット)数機を率いて最前線を張るフィールドオペレーター、孤児院出身で昔の記憶がおぼろげです。名家出の天才少女(20代)トリシャ・パティルはチームのコマンドであり、ネットを操るAAA級ウィザード。特性に合った部品のために両目を取り出したデミサイボーグです。民間軍事企業ブルーグリフォンに属していますが、会社自体があちこちからオーダーを取ってきますから上司はころころと代わります。任務に応じた相棒もつきます。
チームの性格は「強行偵察」であり、破壊力の無制限な発揮には政治的制約があり、しくじれば強大な敵対勢力に介入される口実になります。ミッションは2026年3月現在、顔見世的なものも含めて4つ目の開始準備中ですが、「奪取」「奪還」といった任務が中心です。
このふたりの個人的情念には、いまのところ方向性がありません。ミッションごとに、強い願いや恨みを持つ人間は外部にいます。そしてTRPGのキャンペーンシナリオのように、どうも天蓋膜グレイグー化を引き起こした一味のひとりらしい人物と、ブルーグリフォン所在国家の近隣にあって手の付けられない巨大自律兵器の最後の指揮官に関する情報が少しずつ集まり、チームが実績を上げるにつれてミッションのレベルも上がっているようです。
トリシャのスキルは圧倒的ですが、しばしば敵対勢力情報担当者の不出来をなじっているところを見ると、方法論に隔絶したところはないのでしょう。手掛かりなしに何でも先回りできるものでもありません。
おそらくユーヒチの消された過去が、いつかふたりに何かを強く動機づけることになるのでしょうが、いまはまだ話の骨格が見えない段階ですね。




