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ひとひと斬っちゃうひと斬っちゃう

魔剣少女の星探し 十七【セプテンデキム】 (三枝 零一、電撃文庫)

※「十七」とは主人公の持つ魔剣の名(ラテン語)であり、第1巻のタイトルの一部です。もともとセプテンバーは7の月、オクトーバーは8の月であることは、オクトパスがタコなので明らかですね。デキムはdecim。

※書籍版本編第1巻の感想です。いくつかの無料サイトに、外伝が公開されています。


 これは、剣士の物語です。ただし、魔剣と魔剣使いたちの。基本的には書き古された物語です。ロボには命令するんじゃない。ともに戦うんだ。それゆけ大作少年、ショタコンゲットだぜ。心を通わせ、秘められた能力を引き出して力の限り生きる。その相手が動物だろうと妖怪だろうと魔剣だろうと、物語の骨格は同じです。努力、友情、勝利。斬る斬る斬る斬る。


 魔剣は剣であり剣とは限らず、人を選び、人に応えます。我々の知っている剣術と、我々の知らない剣術と、どう見ても剣術ではない何かが結び目を不規則にこしらえて、戦闘術体系をひとりひとりに編み上げます。あらかじめ計画した連携はとても期待できませんが、ひとりひとりが次々と新たな扉を、その場で開きます。作者はあとがきで基本コンセプトのひとつに『三匹が斬る』を挙げていますが、『三匹が斬るが残り全員も斬る』というべきですかね。組織はありますが組織戦闘はほぼありません。遭ったら斬る。個人藝あるのみ。


 しかし古典的なだけに、各個人の目標は……まあ『ダーティペア』とか『シティーハンター』の主要キャラ程度には……明確に掲げられていて、原風景みたいなものがそれぞれあって、そこから「いまやるべきこと」が導かれます。行動を「選ぶ」というより、「思い出す」「見つける」ことでドラマが進みます。熟練した書き手の技前を感じます。原風景が原動力であるだけに、そこに因縁が流し込まれていると、もはや命のやり取りしか残りませんね。


 伏線をばらまいて、回収していくうちに他策なかりしを悟る……という作品ではありません。事態が急変し、その事態を作り出した事情が判明し、斬る。そういう基本構成です。だから第1巻の能天気さが豪雨に変わったり、シトシトジメジメが5巻くらい続いたりする可能性もあります。チーズケーキ屋エンドなんかは、ないとも言えませんね。


追記:第2巻を読んでいるところです。第1巻には列強諸侯(の政府高官たち)と悪の結社がそれぞれ火花を散らしますが、第2巻では商業連合の大商人も加わって依頼主となります。「とんでもない依頼」が「とんでもない展開」を作り出していくのはTRPG系のストーリーテラー共通の基本パターンですね。どこか任侠味のある大商人は『マップス』のガッハ・カラカラを思い出します。いやあ第2巻は本当に時代劇的で、おじさんはこういうの好きですけど若い人はどうなんでしょうね。


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