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結界八つ裂き光輪乱れ撃ち(出てきません)


結界師への転生(片岡直太郎)

https://ncode.syosetu.com/n3631do/


 転生したときすでに奴隷商人のものだった主人公は、売られてリノスと名付けられ、結界魔法を中心として様々なスキルを叩き込まれます。ところが色々事件があって、重用してくれていた貴族家が没落してしまいます。


 もともと現代の成人であったリノスは教養も高く、流浪しても活躍の場があって某国皇帝の知遇を受け、ついには育ての親の後継者という扱いで、故地に領地を得ます。同盟者も増えていき、2万の常備軍を動かす国王にまでなります。


 某帝国で結婚話が出てきたあたりから、この続き物でご紹介してきた作品の中では、この作品は群を抜いてエロいです。よくノクターン送りにならなかったものだと思います。最新章ではすでに年長の子供も相当に大きくなり、もう妻は増えないと思いますが、余計なネタバレなので妻子の人数は伏せておきます。あれ何人だっけ。


 最初はひとりで、やがてパーティ規模で戦っていたリノスも、部隊を率いるようになって組織や戦術が必要になってきます。結界は防御技術であるのはもちろん、内部の状態を変えることで攻撃にも使え、移動手段とも結びつきます。伝令に使える生物の協力や念話の習得で、現代軍人を超える部隊管理能力を得たリノスは、ほとんどの戦いを圧倒的に優位に進めます。むしろそうした能力の細部が広く伝わらず対策されず、令名だけ轟いていることがご都合主義というべきかもしれません。


 基本的には魔法兵の加わった中世戦闘ですから、戦国期にあった戦術が取られていてもそれほど不自然さはなく、まあ上記のように圧倒的にリノス側に有利な条件があるため、多少の不自然があってもなくても勝利は揺らぎません。歌舞伎関係の元ネタやせりふ回しがちょくちょく出てきますから、そうした方面にお詳しい方でしょうか。


 たまに家族の望み・願いが物語の発端になりますが、多くの章では他国の王族や有力者が歪みや愚かさを持った行動に出て、リノスたちを脅しつけたり害をなしたりして、最後にはリノスたちに成敗されます。「いろんなダメな偉い人」のバリエーションが、そのまま話のバリエーションになるわけですが、必ずリノスが直接関係者に会い、検分したうえで処断します。非常に連続時代劇のフォーマットに近い作品です。逆に言うと悪い女神様とか、ゴルゴムとか、そういった「シリーズを通しての悪役」がいないわけです。


 ただ、それぞれの王国・帝国は内部構造がシンプルで、「将軍」「宰相」といった部門代表はいても、利害の異なる複数のグループが妥協したり対立したり……といったシーンはほとんどありません。だから君主や太子や妃といった個人の愚行がストレートに国を損なうわけですね。


 わかりやすくていいのですが、社会ってもっとたくさん層があるわけですね。例えば日本の江戸時代には「郷士」と総称される、大っぴらに農業を営む下級武士があちこちにいました。江戸時代の少し前にはそうした農民指導者層を殿原(とのばら)と呼ぶことがあり、苗字もないのに領主と書状を交わしている例もあるそうです。イギリス貴族社会では、代々貴族の従者を務める上級従士一族をヨーマンと呼び、のち農奴制度がなくなると比較的大規模な自作農もヨーマンと呼ばれました。ナポレオン戦争以降、イギリスは社会的身分がいまいちな陸軍常備軍兵士をあまり増やしたくないので、本土を守るための地域志願兵予備役部隊(外征には連れて行かない約束)を増やしましたが、その騎兵連隊にはよく「ヨーマンリー」が名前に入りました。


「抑圧されている」「国は俺たちを守ってくれない」という意識の人ばかりだったら、よほどその弾圧にお金をかける警察/兵営国家になるか、偉い人だけが私兵で安全を買っているような国になるかですよね。そこまで行かない国には、「俺たちも名誉ある国の一員だ」と思っている人たちが、たくさんいるはずなのです。ドイツ騎士のゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン(1480-1562)は「俺のケツをなめろ」という台詞で知られていますが、強盗まがいの争いを繰り返した独立自営騎士でした。王や大領主の言うことを聞かないドイツ騎士たちは、やがて農地を持たないサラリーマン軍人(次男坊以下)が増えていき、特にプロイセンで言わば「王の与党」となりました。議会が創設されたころ、農場の労働者をユンカー地主が引き連れてぞろぞろ投票場に向かうことがあったそうで、農場主が投票先を指示していたことはお察しです。当然、こういう「国を支えている」意識の人たちは、国にも自分たちの利害を守るよう期待し、要求するわけです。


 獣人差別は異世界物のお約束のようになっていますが、もし差別された獣人が、その国にとってなくてはならない労働力(または専門職集団)であるとしたら、そのボスには副王並みの権力と責任があるはずです。そうして国と獣人の関係を安定させないと、その国は保たないくらいの。

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