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虚弱少女漫遊記

おおかみひめものがたり【WEB版】(とりまる ひよこ。)

https://ncode.syosetu.com/n7499hd/


 いろいろな売れ線要素を煮詰めた作品ですが、古典的な小説形式を踏んでもいます。


 まず貴種漫遊譚です。貴種流離譚は長い伝統と広がりを持つジャンルですが、すでに権威を確立した人物が旅先で政治干渉を繰り返すパターンは、幕末に講談として成立したとされる水戸黄門漫遊記が元祖でしょうか。狼人である主人公アリスと双子の姉スフィは老いた錬金術師に育てられ、両親のことは不明ですが、ただの血筋でないことは初期から様々なヒントがあります。錬金術師の遺言で、両親がふたりを待っているという遠国アルヴェリアに旅立ちます。


 アリスだけが転生者ですが、転生元は地球であり日本であるとはいえ、我々の知っている日本と少し違うようです。そこでは研究機関に囲われた存在で、そのとき知り合った存在が転生後もアリスの行く手に関わり、だいたいは味方をしてくれますが、なにかたくらんでいそうな存在もいます。


 そしてチートその2、錬金術師の教育と、遺産。存命のうちにアリスは一人前の錬金術師としてギルドに登録され、製薬や材料加工の技能を身に着けます。錬金術師の研究ノートは焼き捨ててアリスの記憶の中にだけあり、それは現在の軍事技術の焦点となっているものです。それを含め、「あのお方の最後の弟子」を派閥に加えようと錬金術師たち(と鍛冶師など関連業界の皆様)がさや当てをします。割の良いアルバイトをもたらしてくれるありがたい技能ですが、厄介ごとも持ち込みます。


 チートその3、精霊との親和性と、強力な仲間。この世界の精霊は強力ながら、人間の制御しづらい存在として恐れられていますが、アリスにはどの精霊も好意的で、なついたり家に居ついたりします。道中道連れになりアルヴェリアでも学友となる人々はみんな有能を越えて異能の人です。しかしそれぞれ、攻撃は強力だがどこに飛ぶかわからないとか、強い制約を受けています。


 アリス自身は極めて虚弱で、長時間の戦闘ができません。魔力も少ないので普通の魔法使いとしては微力で、魔力(ある程度の幅で各種燃料を受け入れるらしい)を貯める魔道具を持ち、その残量を意識しながら行動しています。一緒に行動する人々の組み合わせ、(奴隷商人、邪教集団、貴種だらけの友人たちのお家騒動まで何種類かいる)敵と戦場の性質を考えて、アリスは毎回毎回柔軟にリソース配分計画を立て、突発事態に対応していきます。敵も、突然差し伸べられる援助も多様ですが、「悩んだ末の取捨判断」が中心にあることで、「こらしめてやりなさい」といった画一的な結末を避け、昔ながらの小説形式になっています。


付記: 危機ごとに人に相談し、たまたまそこにいた知人やスタッフを巻き込んで「チーム作り」をするのでドラマが生まれるのですが、それぞれの立場(組織・個人)がしっかり意識されているので「非存在のリアリティ」が高いやり取りになっています。



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