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空を飛ぶものはすべて爆撃機足りうる

 先に書いておきますが、今回ご紹介する2作はたまたま、虐待描写や悲劇的展開を多めに含みます。これらが苦手な方はお含みおきください。


転生令嬢ヴィルミーナの場合(白煙モクスケ)

https://ncode.syosetu.com/n4950ft/



亡びの国の征服者~魔王は世界を征服するようです~(不手折家)

https://ncode.syosetu.com/n5677cl/


 どちらも『空軍の出てくる転生者もの』です。


 魔法は前者では術者の不足で、戦場では限定的にしか使われていません。地球にはいない飛行動物を使った騎兵と、飛空船(飛行船)がいます。銃と火薬も広く使われています。王族の転生令嬢ヴィルミーナは前世ではビジネスウーマンでした。技術の細かいことはわかりません。この地の貴族の常として魔導属性はありますが、それほど優秀な戦士ではありません。


『亡びの国の~』では、転生者ユーリ・ホウは有力氏族の子弟ですが、内部の政争、外敵による戦争と暗殺などを経て、有力者にのし上がっていきます。魔法はない世界で、理系・数学の知識を多めに持っていますが、自分で何かを作り出すことはできません。ただし地球にはいない鳥や獣がおり、それらの一部が空軍となります。火薬とともに、異国で銃や大砲が発明され、ユーリは「先見の明」をもってそれらを取り入れます。また空を飛ぶ手段と火炎びんや火薬が結び付くと爆撃ができることに気づきますが、利用可能な工作技術の範囲内でしか実現できません。


「性能の安定した焼夷弾は用意できないが、揮発油など可燃物を中心とする即席焼夷弾を代わりにすればよい」と、奇しくもふたりは口をそろえます。そして策源地への爆撃を計画、ないし指揮します。


 つまり「このスジで、このバランスで行ける」という確信をもって、ある程度の権力を行使して攻撃を成功させ、英雄となるわけです。およそ戦法は技術的側面を持つと同時に、幅のある組織・部門が協力し合って成立するものです。実際には、画期的な戦法は高い確率で外れとなり関係者の失脚や処分を伴います。戦いは会議室でも行われているのです。そして転生者特有の「成功について確信がある」性質は、そうした戦いで武器になります。


 これは「自分や相手のパラメータやスキルについて、その力と限界、相対的な力関係を確信する能力」と似ています。現実世界ではそこのところがわからず、勝てるはずの戦いで粘られたりするわけですね。


 これらの作品で「それらしくない」どころを上げるなら、それは爆撃を当てる難しさ全般でしょう。まず目標地点に到達することが、自分の位置が正確にわかる電子機器が発達するまでは容易ではありません。そして高高度からの水平爆撃は当たりにくいものですし、生身の人間が鳥やドラゴン類にしがみついて急降下爆撃をかけるには、空気抵抗を処理する魔法(たぶん、鳥やドラゴンの筋肉や骨格を強化する魔法も)が必要でしょう。前者は、飛び立つ場所が襲撃地点のすぐ近くであったり、海岸線に沿って飛べば着く港町であったりすれば和らぎますが。逆に言うとそれらは、メディアに出てくる爆撃シーンが無視している要素であって、ちょっとメカのことを調べたくらいでは見落としてしまうのでしょうね。


 第1次大戦が始まったころまで、手榴弾や迫撃砲は工兵などが自作するものでした。1911年にリビアで世界初の爆撃を行ったジュリオ・ガボッティは工兵少尉になってからパイロットに転じた人で、それでも爆発物が専門というわけではありませんでしたが、イタリア海軍工廠特製の、1個2kgほどもある手榴弾を4個渡され、それを手で落としました。


 初期の爆弾は紐を切る、手で落とす、かごを開いて落とすといった使い方で、細長い1kg爆弾など手での取り扱いを考慮した姿と重さをしていました。はっきりと成功例がイメージできれば、それに似たものは敵も味方も用意できたことでしょう。第1次大戦の航空戦で特徴的なことのひとつは、単発複座機が戦闘機・地上攻撃機として活躍したことです。パイロットが航法も爆撃も銃撃もやるのは負担が大きいことですし、人が回す旋回機銃でも、当時の飛行機の性能なら(互いに)撃墜の可能性は大きかったわけです。騎獣のたぐいで爆撃をやるのは、動作の流れを考えるとちょっと苦しそうですね。仕掛け付きの鞍などがあればよいのかもしれませんが。




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