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作戦術は策士の業

 この原稿を書いている数日前、私の同人本最新刊『作戦級の世界』をBOOTH(pixiv)で発売しました。作戦級指揮官というのはだいたい連隊長あたりから軍団長、せいぜい軍司令官くらいまで、マイソフのイメージでは部下1000人から数万人くらいまでを指します。


 その本の中で、1990年代以降のアメリカ軍は、作戦術をゲームのスキルというより、ゲームデザインのスキルととらえているのだ……という話をしました。


 例えばウクライナ戦争では、何度もロシア軍の司令部や指揮所が位置をつかまれ、ロケット弾やミサイルで攻撃を受けています。そうなると近隣の部隊は、命令をくれる相手がいなくなって、しばらくバラバラになってしまいます。逆にウクライナ軍は夏季攻勢に入るとき、供与された最新鋭戦車を何両か失いましたが、それは大規模な部隊が互いに連絡を密にして一斉行動することに慣れておらず、遅れや突出が生じたのが損害のもとになったのだという報道もあります。小部隊ずつの独立行動に戻して、ウクライナ軍の損害は減ったというのです。


「連絡のつく相手の範囲」が変われば、指揮官にとって取れる行動の幅は広くなったり、狭くなったりします。そして時々刻々、新しい情報が入ってきます。「いま相手に与えられる損害」と「自分が受けるかもしれない損害」を見比べながら、「自分にとっていちばん有利な決心」を選ぶのが作戦指揮だとすれば、それは「ゲームに勝つため(プレイヤーとして)押すこと・突くこと・斬ること」よりも「今自分がやっているゲームのルールを知ること・利用すること」に近いのです。頼りになる味方と連絡がつかなくなったら、自分が取れる行動はそれだけ減ったということです。相手の攻撃力や防御力もだんだんわかってきますが、「予測される上限と下限」もあるでしょうし、互いに攻撃力や防御力を相手に誤認させようとするでしょう。そして互いに、できるだけ部隊の位置をさらすのを避け、遅らせようとするでしょう。味方の攻撃力や防御力はわかっているつもりでも、最新の損害報告は届いていないかもしれませんし、損害報告は過大・過少かも知れません。自分がゲームのルールを誤認するほど逸機と損失が生まれますし、相手の誤認を誘い、利用できれば味方に有利です。


左遷されたギルド職員が辺境で地道に活躍する話~なお、原因のコネ野郎は大変な目にあう模様~(みなかみしょう)

https://ncode.syosetu.com/n7417hy/


 この作品では、主人公サズが『発見者』という能力を持っています。いろいろな情報を素早く上手に処理し、直観的な理解や真相への気付きが早くなるという能力です。サズ本人の戦闘力はそれほど高くないのに対し、相棒のアーニャは『怪力』という能力を持っています。ですからサズは強敵に遭うと、アーニャが敵に肉薄するタイミングや、狙う部位を指示します。他の冒険者パーティや兵士たちが指揮下にある場合も、それらに指示を出して報告を受け、過去の記録を読んだ記憶なども合わせて、敵の位置や、敵の侵攻が止まる条件を推測します。


 ただ、こうした作戦指揮能力の発揮は、やはり物語としては地味なのですね。判断材料から選択が「自明のこと・当然のこと」にならないよう少しずつ置きに行く過程が必要ですし、ブワーッと吹いてズシャアアッと斬るたぐいの戦闘に比べて、爽快感の演出が難しいところはあります。



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