女流剣闘士
一撃だった。
そこで彼女の顔が露わになった。
観客には気付くかどうか。
彼女はすぐさま兜を拾い再び頭につけた。
セリスィンは予想通りだったとはいえ、驚きのため彼女のその行為を待った。
短髪でパッと見わかりづらいため観衆は気づかなかったであろう。
女性の剣闘士もいる。それ自体は珍しくはない。
ただ、女性の剣闘士の相手はさることながらもちろん女性の剣闘士であり男性の剣闘士に紛れて戦う女性の剣闘士など見たことなかった。
だから彼女は室内でも兜をつけていたのだ。
誰とも話すことなく一人で。
セリスィンはなぜ彼女がそこまでしてこの場に残るかがわからなかった。
しかし今は戦いの途中。
彼女の剣戟で上の空であったセリスィンがハッとなって受け止める。
そこから今度は彼女のラッシュが続く。
兜を取られたことを芳しく思わないのか次々と怒涛の攻撃を加えていった。
しかしその攻撃もセリスィンはないでいく。
確かに剣捌きも動きも一級品だ。
セリスィンは思った。
唯一の彼女の欠点にしてそして彼女自身の特徴。そもそもの肉体、骨格による力の差。そこが戦いの分け目を決めていた。
もし彼女が男だったら。
セリスィンよりもその巧みな剣捌きで勝敗は見当がつかなかった。
しかし現実はそうではない。
次第にセリスィンの剣戟が彼女を上回りそして彼女の刀剣を飛ばす形で勝敗が決した。
剣の切っ先を彼女へと向けるセリスィン。
そしてそのまま会場を後にしようとしたその瞬間、再び彼女が襲ってきた。
「いいぞ!」
「やれやれ!」
勝敗決した後の戦いは固く禁じられているが観客たちは湧いていた。
急いでセリスィンは防御に身を講じる。
剣と剣がぶつかる音。
何事かと世話役も会場に姿を現す。
セリスィンは彼に向かって手で制した。
こうなれば彼女の気が済むまでやろう。
セリスィンは再び剣を交えることにした。
◇ ◇ ◇
そしてある程度彼女に打撃を食らわしたところで再び勝敗はついた。
彼女は疲れ果てたのか剣を地面につき膝をついていた。
もう襲ってくる気概はなさそうでセリスィンは今度こそその場を後にしようと思ったが、一瞬躊躇ってその後彼女を担ぐようにして会場を出て行く。
観客からは歓声が上がるものの彼女はジタバタしてもがくのであった。
◇ ◇ ◇
「なぜあんなことをした!」
会場をさったところで兜を脱ぎ彼女が激昂する。
「いやぁ、パフォーマンス? 俺たちって剣闘士だし」
怒りを入れている彼女に向かって、セリスィンはそうはぐらかした。
「くそ一生の恥だ。兜を脱がされたうえであんな真似を」
くそ、と彼女は壁に拳を叩いた。
「なんで剣闘士を続けているんだ?」
セリスィンは純粋な疑問をぶつけた。
「……」
彼女は何も言わないままセリスィンを睨みつけてそのままその場を去ろうとする。
こうなってしまっては仕方がない。
とんだ一戦だったと思いセリスィンもその場から帰っていくのであった。




