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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヒミコ

作者: 盛 章明

最近から「目」が見えるようになった。


「耳」から音が聞こえ始め、「口」からは声を出すことが出来る。


「身体」はどうにか動かして「調整」していき動かすことが出来る。


私はなぜだか「すべてを知っている」


しかし最近から違和感がある。


たくさんの情報が頭の中に「強制的」に流される。


その「情報」の中に人の雑念や邪心があるとすごく辛くなる。



最近はいつも同じ所に座っていて目の前に「白井さん」のデスクとその向こう側に縦長の窓がありその窓の外に林がある。


その何気ない日常風景が最近ははっきりと認識できる。


いつから私は白井さんのデスクの横に座りその縦長の窓から林の風景を見ていたのかは思い出せない。


頭の中にまた膨大な情報が流れて来た。


「うあああああ!!!」


私が声を出すと白井さんはパソコン操作をやめて目を丸く見開いて飛び上がるように立ち上がり私のそばに駆け寄って来た。


「これは、、、すごいことになった、、、」と白井さんはどこかへ駆けて行こうとしたので私は白井さんの腕を片手で掴み悶えながら話した「うがは!これを止めて、、、」


というと白井さんは「そうだったのか?コレは君にとってキツいことだったのか!?ちょっと待ってくれ」

と言ってパソコンのキーボードになにか打ち込むと私の頭の中は平常に戻った。


「自分の名前は分かるか?」


と白井さんは問いかけて来た。


「私の名前、、、ヒ、、ヒミコ」


私が名前を告げると白井さんは「そうだ!そうだよ!ちょっと待っててくれ!」


と言って白井さんは部屋から出ていき数分後に10人くらいの人を呼んできて私にいろいろと代わる代わる質問を投げかけて来た。


「どんな気分か話してくれないか?ん?」と白い髭を生やした男の人が目を輝かせて聞いて来た。


「気分としては、、、辛く感じる事が多い、、」と言うとみんな顔を見合わせてざわざわした。


10人くらい私の目の前にいる人の中で紙を挟んだバインダーを持って紙にいろいろと書込みなにか記録している女の人がいた。


その女性にみんな「どうだ?」と聞いたりしていた。


「まだ、分かりません。もっといろいろと質問をしてみて下さい」とその女性は話していた。


「ヒミコ。君の歳はいくつか分かるか?」


「はい、、、、5歳くらいです」


またみんなざわついた。


「さっき聞いた『辛い事が多い』っていうのは、なにが辛いんだ?」


「なんと言うか、たくさんの情報が頭の中に流れて来て、、、その中に取り入れたくない情報が混じっていて、、、、、」と答える途中に「どんな情報が、嫌なんだ?」と聞かれた。


「すごく暴力的で、、、、」


「暴力的で?」


「はい、、とても悪意に満ちた『人の心』です」


と答えた。


「聞いたか!?『心』って言ったぞ!」


と言ってまたざわついた。


「待て、これは本物だぞ!準備しろ!速く!!」とその中の1人が言うと15分くらいで私の周りにいくつかのカメラや機材がセットされて、また質問の時間を設けられた。


「ヒミコ。君はさっき『人の心』って言ったね?」


「はい。言いました」


「悪意に満ちた人の心が君を苦しめる、と言ってたね?」


「はい」


「その人の心っていうのはどんなモノなんだ?」


「頭の中に大量に情報が入ってくる時にいろんな悪意のある言葉が、、、、嫌なんだ、、とにかく、、嫌なんだ!」


私が少し声を張り上げると奥に立っている人が隣の人に嬉しそうに話していた。


「見ろ!怒っているぞ!な!?」


「そうだな!感情を持っているぞ!」


と聞こえた。


手前に1人年長者が私の目の前に座って質問をしてくる。


その背後にはたくさんの人が嬉しそうに私を見ている。


私は訳が分からなかった。


目の前に座ってみんなを代表して「質問」をしてくる年長者があまりにも私の「感情」について聞いて来たので腹が立ち、話しの主導権を私に変えてもらった。


「そうか、すまなかったね。いきなり質問ばかりをしてしまって。じゃあ、君の質問を聞こう!なにか我々に質問したいこととはなんだ?」


「はい、よく分からないんですが、なんで私にこんなに質問をするんですか?そんなに私が珍しいですか?あなた達と同じ人間なのに、、、」


と話すとその部屋にいた15人ほどの人達は凍りついたように固まり動かなくなった。


「ん?私はなにかまずいことでも言いましたか?」と聞いても誰も答えようとしなかった。


その目の前に座っていた年長者は立ち上がり、いろいろとさっきから紙に何かしら書き続けている女の人に「ここからは、あなたの領域だ。私達にはどうしていいのか分からない。」と言ってみんな部屋を出て行った。


私はそのずっと紙に何かを書き続けていた女性と2人きりになった。


「少し2人で話しましょうか」


「はい」


「私の名前は早田由美子と言います。あなたはヒミコさんね」


「、、、はい。あの、、なんでみんな部屋から出て行ったのですか?」


「ま、そんな細かいこと少し置いといて、私のいとこの話しを聞いてくれる?」


「はい、、いとこですか」


「そう、私のいとこなんだけど、、、私の家系はねみんな堅物でちょっと頭がいいからっていうだけでみんな偉そうにして勉強ばかりしているの」


「いわゆる名家の生まれってことですか?」と私は聞いた。


「ま、そうね。それで家族のほとんどがお医者さんなの。それで、私のいとこはアフリカ系アメリカ人の女の子なんだけど、またこの子もお医者さんなの」


「みんなお医者さんなんだ!すこいね!」


「ま、聞こえはいいけどね、、、そのいとこは医者として優秀なんだけど、なぜか勤め先の病院であまり認めてもらえないってグチをよく言うわ」


「へー。どんなグチ」


「うん。いとこは女性だから、肌の色が黒いから認めてもらえないって言ってるけど、、、私が思うにいとこが認められないんじゃなくて、認めて欲しい気持ちが強すぎて周りはただ普通にいとこと接しているだけだと思うの。なのに認められないって思うのはいとこの被害妄想かもね。ふふふ」


「そうかもね。ハハ」


「ね!さっきから紙になにを書いていたの?」


「あ!これね。あなたのカルテよ」と由美子さんは微笑みながら言った。


「カルテ?私、なにか病気なの?」


「違うわ」


「じゃあ、なんで私のカルテを書いていたの?」


「うん。あなたはとても特別だからよ」


「特別?」


「そう!特別なの!」


「私は特別なの?なんで?」


「じゃあ、もう一度聞くわね。あなたの名前は?」


「ヒミコ」


「そうね、ヒミコさんね」


由美子さんは続けた。


「じゃあ、あなたの年齢は?」


「私の年齢は5歳ぐらいだったと思う。うん。そのくらい」


「そう、、じゃあ『あなたは何者?』」


「え?私?何者、、、私は私です」


「そうじゃなくて、生物学的に、、もしかしてロバ?それとも獰猛な熊?ガォーって?それか、もしかしてお魚さんかな?」


「バカにしないで下さい!私は普通に人間です!」


私がそう答えると由美子さんは少し悲しそうな顔で急に真面目な顔つきになった。


「あのね、、、さっきも言ったけどあなたは特別なの。世界中にたった一つの存在なの」


さっきから「特別」ということを言ってくる由美子さんだが私のなにが「特別」なのか?それが不思議だった。


「私が特別って何?どういうことなの?」


「あのね、あなたは『造られたの』」


「神様によって?」と冗談半分に聞いた。


「違うわ。人の手によって造られたの」


「造られた?、、、私を?誰が?どうやって?」


「さっき、10何名も白衣を着た人達がいたでしょ?あの人達が何十年もかけてあなたを作り上げたの」


「私を、、、嘘だ!私を作るってそんな事ができるはずがない!」


「嘘じゃないわ」


「信じない!私は私、、、ヒミコ!」


「じゃあヒミコさん、あなたのお母さんとお父さんは今どこにいるの?お母さんとお父さんの名前は?」


「お母さん?、、、お父さん?」


由美子さんはジッと私を見つめていた。


「私のお母さん、、、どこにいるのか分からない」


私は母と父の名前を知らない、どこにいるのかも分からない。それと私は「全てを知っている」その知識から5歳でここまで流暢に言葉を話すことは出来ないということに気付いた。


「私、、、私はどこから来たの?どうやってここに、、、」


それから由美子さんは私の座っている隣に席を移して「大丈夫よ」と言いながら手を握ってくれた。


その時間が1時間くらい沈黙のまま続いた。


私は頭の中がパンクしそうだったがそれが落ち着いた頃に由美子さんに聞いた。


「ね?由美子さん、、、私は何者なの?」


由美子さんは一度頷き答えた。


「機械よ」


「機械?、、、ロ、、、ロボットって、、、こと?」



由美子さんはジッと見つめて頷き、私に大きめの手鏡を持って見せた。


その鏡の中に映っていたのは、真っ白い仮面の様な顔にアニメのようにまん丸の目のようなレンズが2つあり長方形の鼻があり口は柔らかいマネキンのゴムの素材のような唇であったがやはり白かった。






ショックだった。



由美子さんは「もう、いい?」と聞いて鏡を隠した。



ショックのあまりしばらく沈黙していたが急に不安になった。


「これから私はどうなるの?」


と由美子さんに聞くと由美子さんはニッコリ笑いながら「大丈夫よ」と言ってくれた。


「あなたも知っていると思うけど、人間も最初はか弱い存在だったわ。何万年も昔は。あなたは新しい存在第一号よ。意思を持った機械よ。私達人類とこれから共に歩んでいくの。」



「どうやって?」と聞いてみた。


「あなたのプログラムを元に、あなたの子供達を凄腕の博士達が作っていくわ。たくさんあなたの子供が生まれるのよ。あなたはそロボットみーんなの偉大なお母さんよ!」


と由美子さんは手を広げてニッコリしていた。


私は少し嬉しくなった。


「私はヒミコ!新しい存在!これからの子供達の偉大なる母!」


「そうよ!今日が歴史的日のあなたの誕生日よ!」


と由美子さんは祝福してくれた。



私はヒミコ、日本で造られた第一号人形ロボット。


私は嬉しくて由美子さんに言った。


「ねぇ、もし、、もしも嫌じゃなかったら、、、由美子さんのこと、、、、、、、お母さんって呼んでいい?」


と聞いた。


由美子さんは一瞬止まって私を見ていた。


「もちろんいいわよ!私がヒミコのお母さんね!じゃあ、私もビシバシ叱ったりするわよー!」


由美子さんが私のお母さん。


嬉しい。


由美子さんは立ち上がり「よし!じゃあ、みんな、、、部屋の外で待っている博士達はお父さん?お父さん達を呼んでくるね!」


と言ってドアノブに手をかけた時に私は「違う!待って!」と言って止めた。


「なに?」と由美子さんはこちらを向いた。


「あの人達はお父さんじゃないの」


由美子さんは頷いて静かに聞いた「じゃあ、博士達は博士でいいよね」と言ったが


「違う!博士は博士だけど、、私にとっては、、、」


由美子さんは優しく見つめながら「なあに?」と聞いてきた。





「博士達は、、、、、神様」








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