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【本編完結】学園のアイドルは料理下手。目立たぬ俺は料理講師。~いつの間にやら彼女を虜にしていた件~  作者: 波瀾 紡
◆本編

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78/84

【78:春野日向はすっとぼける★】

 ひと通り食べ終えたところで、向かいの席から高城が日向に声をかけた。


「あんた達……いったいどういう関係?」


 ──とうとう来たか。

 そりゃ俺と日向が名前で呼び合って、息ぴったりで調理をしていたんだ。誰だって不思議に思うよなぁ。


 俺はそう思いながら、日向がどう答えるのかを息を飲んで待った。


 同じグループの三人は、さっきから何か言いたげな様子はあったけど、急いで調理をしていたこともあって、なんとなく言い出しにくそうにはしていた。


「どういう関係って……なにが?」


 日向はすっとぼけた顔で淡々と答えた。


 ──おーい、日向!

 そこをまだ引っ張るのか?


 日向はニコニコして、このシチュエーションを楽しんでるのがありありだ。


「いや、だって……日向と秋月、お互いに名前呼びしてるし」

「ダメ?」

「いや、ダメとかいいとかじゃなくて……なんで?」

「あれ? 千夏に言ってなかったっけ?」


 ──言ってない、言ってない!

 ぜーったいに言ってないだろ、日向!


「なにも聞いてないよ。なんなの日向?」

「あっ、そうだったっけ。私と祐也君、付き合ってるよ」


 日向は至ってあっけらかんと。『それが何か?』的なノリで重大なる事実を突然カミングアウトした。日向のこのイタズラ心には誠に感心する。


「えっ……? ごめん日向。私、耳の調子がおかしいみたい。まるで日向が秋月と付き合ってるように聞こえたんだけど」

「大丈夫よ、千夏。私、そう言ったもの」

「あ、そうなの? 良かった。私の耳がおかしくなった訳じゃないんだね」


 高城はそう言ったきり、固まってしまった。目がうつろだ。何が起きているのか、理解の範囲外にあるみたいだ。


「嘘だろー マジかーっ!? 祐也と春野さんが付き合ってるー!?」


 ひと呼吸置いて、代わりに雅彦が急に素っ頓狂な声を上げた。雅彦はようやく事態が飲み込めた感じだ。


 実習室の中は、「なんだなんだ」とざわめき立つ。


「ああ。まあな」

「い……いつから?」

「正式には……一週間前だな」


 雅彦と俺のやり取りをぼんやり眺めていた高城が、我に返って日向に質問をした。


「日向。それって冗談よね? 私をからかってるよね?」

「ううん。ホントだよ」

「ほ、ホントに……ホントなのっ!?」

「うん、ホント」


 日向は終始ニコニコしながら、楽しそうに高城の質問に答えている。


「えっ……? ええっ……? えええーっ!? そんなの日向のお母さんが知ったら、大反対されるよっ!」


 高城は青ざめている。そう言えば高城は日向のお母さんと会ったことがあると、日向は言っていた。


「うん、大丈夫。もうお母さんには祐也君に会ってもらって、認めてくれたから」

「そうなのーっ?」

「うん」

「秋月って、あのお母さんが認めるような人なの!?」

「うん。そうみたい」


 さらに信じられないといった顔つきで、高城はわなわなと唇を震わせながら俺の顔を見た。俺はどうすればいいのかわからなくて、とりあえずニコッと笑顔を返す。


「あ……いや……そ、それは良かったね、秋月」


 高城は、もう何がなんだかわからなくなってるに違いない。引きつった顔のまま、とりあえず祝福してくれた。


「お、おう。ありがとう」


 その時突然、周りが騒がしくなった。


「二人が付き合ってるって、やっぱりホントの話なのーっ?」

「今の話を聞いたら、ホントなんだな!」


 今まで周りのみんなは、本当の話なのかどうか、固唾を飲んで高城と俺たちのやり取りを見守っていたようだ。


 俺たちの周りに、またわらわらと人が集まってきた。


「日向~っ! その話、マジ!?」

「うん、マジ」

「日向~! おめでとーっ!」

「うん、ありがとう」


 日向は一人ひとりに律儀に答えている。こんなところが日向が誠実で優しくて、とても良いところだ。


「おい秋月! マジかよ!」

「おう、マジだ」

「すげーな、秋月!」

「おお、ありがとう」


 俺も日向を見習って、ちゃんと答えた。

 日向と仲良くしたら、クラスの男子達に嫉妬で殺されるかもと心配していたけど、そんなことはなかった。みんな温かく祝福してくれている。


 これはきっと、日向が凄すぎるばかりに、嫉妬するとかを超えているのだろうという気がする。


「秋月……ホントに日向ちゃんと付き合ってるの?」


 珍しく俺に声を掛ける女子の声がしたから、振り返ってみて驚いた。それは佐倉だった。


「あ……ああ。そうだね。俺も信じられないけど」

「そっかぁ……お幸せにね」


 佐倉は少し引きつって笑いながら、自分のグループの方に去って行く。立ち去り際に「うーん、残念……」という呟きが聞こえた。


 ──残念? そっか。佐倉は今回は違うグループだし、俺の料理を食べられないことを残念がってくれてるんだな……


「はい、はい、はーい、みなさーん! 調理が終わったグループは、試食と片づけをしなさいよーっ!」


 先生がそう言いながら各グループの調理台を見て回るので、みんなは仕方なく実習に戻る。そのおかげでお祭り騒ぎのような実習室は、少し落ち着きを取り戻した。




 そんなこんなで、日向の企てたサプライズ公表が大成功を収めた調理実習は、無事に終了したのだった。

今話で『二度目の調理実習編』は終了です。

そして(突然ですが)いよいよ次回は最終話。

ここまで本作にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 日向が思ってたよりもあっさりとした雰囲気でいったのが意外でした。もっと恥ずかしそうにとか嬉しそうに言うものだと思ってました。そして、突然の最終話発表にとても驚きました。もっとこの作品を見て…
[一言] 次で最終回、あとは、ポンコツ日向を皆の前で披露できるかどうか(笑) とぼけたりするところも「ニュー日向」ですよね 祐也も日向も、親友へのフォローは大変かもですが、弁解頑張れ 日向が東京に…
[一言] 日向さん、心臓強いですね(笑)クラスの人達と一緒に叫んじゃいました( 次回最終話ですか…お疲れ様です。とっても面白かったです!
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