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【本編完結】学園のアイドルは料理下手。目立たぬ俺は料理講師。~いつの間にやら彼女を虜にしていた件~  作者: 波瀾 紡
◆本編

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43/84

【43:春野日向はからかう?★】

「私ね。小さな頃からお母さんに、『人に弱みを見せちゃダメだ』『なんでもできる人間になりなさい』って、ずっと言われてきたんだ……」


 驚いた。こちらから促す訳でもなく、日向は少し悲しげな表情で、そんなことを俺に話し始めた。


「お母さんは女手ひとつで私を育ててくれたんだけど、特に経済的な苦労とか色々あったから……私に苦労させないように、そんな教育をしたんだと思う」

「そうなんだ……」


 俺はどう返事したらいいのかわからなくて、口籠ってしまった。


「だけどね。高校生になってからは、ホントにそれでいいのか考えることもよくあるんだ……」


 何でも完璧に見える日向がそんな葛藤を抱えていたなんて。彼女の口ぶりからは、それが重荷になっているのかもしれない。


「あ、ごめん。こんな話をしちゃって」

「あ、ああ……全然大丈夫だ」


 俺はそれだけ答えて、ニコリと笑顔で返すのが精一杯だった。


「こんな話、誰にも……仲良しの千夏にもしたことないのに。なんか祐也君になら話してもいいかと思っちゃった。ごめんね。迷惑でしょ?」

「いやいや、そんなことはない。悩みがあるなら、いつでも言ってくれ。俺なんか何の役にも立たないけど……」

「ありがとう。あ、でもそんなに深刻に悩んでる訳じゃないよ! 重く捉えないでね」


 日向の顔にはいつもの笑顔が戻っている。確かにそんなに深刻な悩みではないような感じではある。


 だけど日向が俺にこんな話をしてくれたのは、少しは信頼されていると考えていいんだろうか……


 そう考えていたら、急に日向がギクリとすることを言ってきた。


「祐也君も料理が上手なのに、なぜそれを学校で隠してるの?」


 確かにその疑問はわかる。『素の自分を出したらいい』なんて偉そうに言う俺が、素を出していないのだから。


「あ、えっと……」


 日向が自分の事情を隠さず俺にだけ言ってくれたのだから、俺も言わないわけにはいかない。


「いや、正直日向に比べたら、全然大した理由じゃないんだけど……」


 本当に大した理由じゃないから、言うのは少し恥ずかしい。日向は穏やかに微笑んで俺の言葉の続きを待っている。


「小学生の時に友達と特技の話になって、俺が料理だって答えたんだ。そしたらみんなから『料理が得意だなんてお母さんみたいだ』って言われて……それからしばらく『お母さん』ってあだ名で呼ばれた」

「お……お母さん?」

「うん。子供心にそれが凄く嫌でさ。それ以来絶対に料理が得意だって言わないようにしてる。それどころか料理のことは、何にも知らないふりをするようになった」

「そうなんだ……でももう高校生なんだし、料理上手をカミングアウトしても大丈夫なんじゃないかな?」


 俺のバカみたいな理由にも日向は呆れる様子も見せずに、真剣に答えてくれている。


「そうかなぁ……いいカッコしてるって思われるのが嫌だし、料理なんて全然苦手って見せといた方が気楽なんだよ」

「もう小学生じゃないんだし、それは祐也君の考えすぎだと思うな。実際に料理が得意なんだし、もっと素の自分を出したらいいんじゃない?」

「あれ? さっき聞いたようなセリフ……」


 俺がそう言うと、日向は一瞬きょとんとしてから、プッと吹き出した。


「ホントだ。祐也君と私って、実は似た者同士ってことかな?」

「いやいや。日向は何でもできるようになるために頑張り屋さんだけど、俺なんか適当に楽したいからできないように見られたいって、真逆だよ」

「でも、ホントの自分を見せるのが苦手って、二人とも根っこは同じだと思う」

「あ……そ、そうかな……」


 俺と日向が似た者同士なんて、そんな畏れ多いことは考えられない。やっぱり俺の性根は面倒臭がり屋で、日向は頑張り屋なんだし。


「祐也君が素の自分を学校で出すって言うなら、私もそうするようにがんばろうかな……」

「え? だって俺が素の自分を出すなんて、誰にもなんのメリットもないぞ」

「そんなことないよ。祐也君のカッコいいとこを、学校のみんなに見てもらいたいって気もする」


 日向はニヤッと笑って俺を見ている。これは……俺をからかって遊んでいるな。


「お……俺のカッコいいとこ? そんなところは無い」

「ええっ? あるよー! 料理するところとか、講師してるときのスタイルもカッコいいよ」

「え……? あ、いや……か、からかわないでくれよ」

「からかってなんかないよ」


 日向は目を細めて「ふふっ」と笑みを漏らした。

「面白い」「続きが読みたい」と思ったら、評価やブクマを付けていただけたら大変嬉しいです。

(最新話の下部から付けられます)


※執筆はストイックな作業ですので、読者さんが応援いただいているのがわかる反応は、とてもモチベーションにつながるのです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公とヒロインの秘密を言い合うちょっとシリアスな展開でも相変わらず面白い作品をありがとうございます。今、波瀾先生の作品が一番好きなので執筆活動大変でしょうが頑張って下さい。応援してます。…
[良い点]  母親思いの日向。 [気になる点]  日向と裕也、足りない所は補い合える様に為れば… と思うけど、学校では高城千夏が高い壁になりそう。   [一言]  今回のガトーショコラでバレンタインの…
[一言] 誰も得しないよ 俺なんてかっこよくないよー からかわないでくれ 主人公が陰キャラ話系のテンプレですね ま、祐也の場合、あえて目立たないようにしてるわけで、コミュニケーション能力には長けてる…
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