表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】学園のアイドルは料理下手。目立たぬ俺は料理講師。~いつの間にやら彼女を虜にしていた件~  作者: 波瀾 紡
◆本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/84

【29:水無雅彦は紹介したがる】

 俺に会ってみたいと言う女の子がいる。雅彦の彼女である亜麻ちゃんと同じクラスの子らしい。

 雅彦はそう言うが、俺はいったいどうしたらいいのか。


 でもやっぱり、付き合う女の子を紹介してもらうなんて気が乗らない。


「いや、俺はいいよ」

「まあそう言うなって。祐也がこの話をなかなか信じないのはわかるけど、アマンが『祐也君の見た目が好みだっていう女の子も、案外いると思うよ』って言ってたぞ」

「そ……そうなのか?」


 まさか。そんなことを言ってくれる女子が、この世に存在するなんて考えられない。もしもいるとしたら、よっぽどの変わり者だ。


「ああ。でも俺の方が圧倒的にイケメンだって、アマンは言ってたけどなー あはは」

「何があははだ。結局雅彦は、亜麻ちゃんとラブラブだって言いたいだけじゃないか」

「おう、それは否定しない。だけどお前に女の子を紹介したいってことは本当だ」

「雅彦が本気だってことはわかった。だけど俺は、やっぱり遠慮しとく」


 自分でもなぜだかよくわからないけど、彼女なんて絶対に要らないという訳でもないけれど、女の子を紹介してもらうということにあまり気乗りがしない。


「まあ待てよ、祐也。俺もまだそれが誰なのかは教えてもらってないんだけど、アマンいわく、めっちゃ可愛い子らしいんだ。このラッキーマンめっ!」


 めっちゃ可愛い? そんなの嘘だ。きっと変わり者なヤツに決まっている。


 ……あ、いや。もしも本当に可愛い子なら紹介を受けるのかと言うと、それは違う。


 自分が好きでもない女の子と付き合うなんて気は毛頭ないし、そんな気持ちでその子に会うのは失礼な話だ。


「いや、それでもいいよ。遠慮しとく」

「ええっ? なんで? もったいない……」


 雅彦は訝しげな目線を向けてきた。別に怒っているという感じではない。せっかくのいい話をなぜ俺が断わるのか、理解できないといった感じだ。


「なんでって……今はそんな気になれないからだよ」

「まさか祐也、お前……誰か好きな人がいるのか?」


 雅彦の『好きな人』という言葉を耳にした瞬間、なぜか日向の顔が思い浮かんだ。


 ──いやいやいや。なぜ日向の顔が思い浮かぶのか?


 確かにこの前、日向とは友達になった。だけどそれは男とか女とかではなくて、あくまでもただの友達だ。

 そして春野日向は多くの男子が憧れる、スーパー過ぎる美少女である。


 ──ということはつまり。


 春野日向は美少女過ぎて高嶺の花であるが故に、俺にとっては恋愛の対象にならないということだ。

 だから俺の好きな人に、春野日向が入ることは……決してない。


 人として好きかどうかと言われたら、もちろん俺は日向を好きだ。だけど雅彦の言う『好きな人』とは、恋愛のことを言っているのだから。


「いや、いないよ」

「なんだよ、今のは? ホントは好きな人がいるんじゃないのか?」


 雅彦のヤツ、しつこい。このまま話していても、ずっと追求され続けるかもしれない。

 だからちょっと話を逸らせてやろうと考えた。


「えっと……ああ、ホントは好きな人ならいるな」

「やっぱりー! 誰だよっ!?」


 雅彦は目をひん剥いて、驚いている。今まで俺が、冗談でもそんなことを言ったことがないから、驚くのも当たり前だ。


「それはお前だよ、雅彦。俺はお前が友達として大好きだ」

「はっ? そういう意味じゃねぇって! 恋とか愛とか、そういう意味での好きな人だよっ! 祐也、お前わかってて言ってるな!?」


 もちろんそれはわかって雅彦をからかっている。そして女の子を紹介するということから、話を逸らせたいだけだ。



 しかし……実のところ、俺は恋とか愛とかいうものはよくわからない。

 なんとなくわかる気はするが、俺は今まで本気で女の子を好きになったことがない。


 だから恋とはどういうものなのかが、本当の意味ではわかっていないのかもしれない……と、時々不安になる。


「恋とか愛とか、そういう意味って言うけど雅彦。恋って、いったいなんなんだよ? 恋愛博士の雅彦なら、さぞかしよくわかってるんだろうなぁ」


 俺はわざとニヤッと笑って、雅彦にそう尋ねてみた。


「ふふふ祐也、そう来たか。なかなかいい質問だ!」


 俺はふざけて訊いたふりをして、結構真剣な気持ちで雅彦に訊いてみたのだった。


「ある辞書によるとだな。恋とは、『人を好きになって、会いたい、いつまでもそばにいたいと思う、満たされない気持ち』のことなんだって」

「おいおい、辞書の解説かよ! そんなのなら、俺でもわかるさ」


 俺でもわかると偉そうに言ってはみたものの……

 辞書にはそう書いてあるのかと、新鮮な驚きだ。


 なるほど。その解説は頭ではわかる。だけどそんな気持ちの実感は、俺にはない。


「まあつまり、俺がアマンに思ってる気持ちも、アマンが俺に持っている気持ちも、それは恋だな。だって俺達は、いつもお互いに会いたいって思ってるんだから!」

「ああー、はいはい。ご馳走様! 訊いた俺がバカだったよ!」


 俺は肩をすくめて、わざと大げさに首を振った。


 ホントに雅彦ってやつは、バカだ。純粋で一途という名のバカだ。

 でもこんなに一途になれる相手がいるというのは、ある意味羨ましくもある。


 だけどやっぱり、今は女の子を紹介して欲しいという気持ちになれない。自分でもなぜだかわからないけれども。


 ここはやはり、はっきりと雅彦に断わりを入れておこう。そうじゃないと、俺の知らない間にその子との話を進められても困る。


「雅彦。女の子を紹介してくれるっていうのはありがたいお話だけど、今回は本当に遠慮しておくよ。今はそんな気になれないんだ。またいずれお願いするよ」

「あ……ああ。わかった」


 あまりに俺が真剣な顔で頑なに拒否するものだから、雅彦は何か言いたげなのを飲み込んで、女の子を紹介するという話をようやく引っ込めてくれた。


 うーむ、それにしても……

 恋ってやつをちゃんと理解するのは、案外面倒くさそうだなぁ……などと思ってしまう俺なのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[気になる点] 恋愛脳で周りが見えていない雅彦(笑)裕也の周りに善意で地雷を敷設中。 [一言] いつも楽しく読ませていただいています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ