表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/25

第五話「螺旋階段と変人」

 ロイドの前方をグングンと歩いて行くアリスが地上に通じているであろう長い螺旋階段を登り始めた頃にロイドに向けて喋り始めた。


「お前さあ、憲兵に在籍してた時って何してたんだ?」


「何だよ急に」


「なに、気を紛らわせるためだよ、この螺旋階段めっちゃ長いから話してないと疲れちゃうんだよ」


 急に話しかけてきたのはそう言う事か・・・

 ロイドは呆れながらも話した。


「憲兵に在籍してた時は授業とレポート、それとデスクワークに魔族退治って僕の経歴が書いてある紙を持ってんだろ、それ見ろよ!」


 アリスがロイドの経歴を事細かに記した資料を持っている事に先ほど思い出し、アリスにツッコミを入れる様に言った。


「あははバレたか、まあいいや、次は真剣な質問ね、ロイド君はキエラをどう思ってる?」


「どう思ってるって?」


「そうだなあ、憎い!と尊敬している!とか、何でもいい、勇者抜きにしてキエラ個人についてどう思っているんだ」


 僕にとってのキエラ個人・・・


「憎い、リーリエをあんな体にしておいて伸う伸うと生きているのが未だに許せない、それを知っていて野放しにしている憲兵や王様にも、そしてすぐに助けてやれなかった僕も憎い」


「ありゃりゃ?キエラについて聞いたんだけどな」


「あっ、悪い」


 つい要らぬことまで話してしまっていた。


「いいよ、それを聞けて俺は三か月後が楽しみだよ」


「三か月後?」


「そう三か月後、俺らは首都ローゼンに奇襲をかけてキエラを倒す」


「ええ!、唐突すぎやしないか」


「うん、昨日の夜決めたからね」


 僕がぐっすりと眠ってる間にとんでもない事が決められていた事に驚きを隠せないでいた。


「勝算はあるのか?」


「ん?勝算はない、というか全て君次第さ」


 唐突に聞かされた挙句に勝算は僕だ?


「ふざけないでくれよ、そんな大役僕にはできないし僕は一度キエラに負けているんだよ!」


 ロイドが大声でそう吐き捨てる中アリスは顔色一つ変えずに階段を上っていき途中で立ち止り、振り返って後ろに居たロイドの鼻先に指をツンと指し、怖い顔をしながら言う。


「君を助けた時の約束、忘れたとは言わせないよ、もしできないというなら殺すし出来ると言ってくれるなら全面的に俺らはサポートをする、お前がキエラと互角に戦えるぐらいにはしてやる、どうなんだああ!」


 猛獣の怒声の様に強い声でロイドに言う、アリスは弱音を吐き捨てるロイドに我慢の限界だった。


「お前がやらねえと彼奴と同じ奴がこれからも増え続ける、お前のせいでだ!女がやだやだ言って足掻いた所で強者のキエラは憲兵に指示して勇者という絶対的な権利を乱用できるんだよ!お前が無理と言うのならここで死ね!何百何千の女の命を軽視して我知らずのまま墓に眠ってろ!」


 あって数日というロイドに向かって怒声を浴びせ続けるアリスにロイドは泣きそうになる。アリスに言われた事がじゃない、自分自身の不甲斐なさに泣きたくなる、リーリエを取り戻してから僕はネガティブな事しか言っていない。あの時のキエラの絶対的力に恐れてそれしか言えなくなっていた。そんな自分に悲しくなる。そんな自分が憎くて仕方ない。


「お前には力がある、それは確かだ。なんでそれを使おうとしない、何故それを弱者の為に使わない」


 ロイドに諭すように言う。どれだけ怒っても最終的な結論は当人にしか出せないからだ。

「僕は―――しがない村人なんだよ、リーリエを追ってここまで来てやっとの思いで彼女を助けられた。それで十分だと思っていた所にアリスが現れた。助けてくれたのは感謝してる、けど彼奴には憎しみだけじゃ敵わないんだよ」


「なら敵うだけの力を付けろ、さっきも言ったが俺らはお前にキエラと互角に戦えるだけの力を与えてやる」


「本当にそれで僕は勝てるのだろうか」


「知らないね、結果は当人の頑張りと壱パーセント奇跡だ」


 頭の中にグルグルと否定の言葉が回り続ける、それでも僕が決断しないといけない、リーリエと共に死ぬか重荷をこれまで以上に背負ってキエラに抗うか。


「アリスは何で勇者を殺すんだ」


「決まってる、自欲の為だ。どれだけな言い訳をしてもいいが本音はこれに行き着く、自分が勇者を殺したいから殺す」


「それだけ聞いたら単なる殺人鬼だな」


 ロイドがそういうとアリスはそうかもなと言って場が静まり返る。


「僕やってみるよ、この言葉を言うのは弐回目だ。最初にアリスにこの言葉を言った時はリーリエの為だった。でも今回は自分が悔いを残さな為だ。今の僕は弱い、だから僕に力をくれ、誰かを助けられるだけの力をくれアリス」


 一度決意を決めたはずなのにこんな事言うのは可笑しいってのは自分でも分かってる、もうこの言葉は変えられない、三度目なんて無くていいんだ、僕はもうこちらから抜け出す事なんてできないのだから。


「そうか、なら善は急げだ」


 一度目に見せたあの顔と同じ笑顔でアリスは言い、ロイドの鼻に向けた指ともう一つの指でパチンッ!と鳴らした。


「おそいぜアリス様」


「悪いなジャック、こいつが赤ん坊みたいに駄々をこねるから叱ってやってたのさ」


 視界が白ボケをしたと思ったら眼の前は先程の螺旋階段ではなく草原に居た。


「もしかして転移?」


「なんだロイド、これで三回目だろ?もう慣れてると思ったぞ」


 草原の次に目に下のはアリスの呆れ顔だった。


「なれるもなにも転移ってのはそんじょそこらの平々凡々には新体験過ぎて絶対になれないぜ、そう思うだろ坊主」


 低く軽やかな口調で言いながらロイドの肩をガシッと抱き寄せてくるおっさんが居た。


「え?誰?」


 先程シリアス展開だったというのに急にほのぼのとしたこの空気に馴染めない、本当になんなんだこれ?


「俺か?俺はお前さんと奇襲の時に班を組むジャック・ノイザー、ジャックでいいぞ坊主」


 抱き寄せたロイドの頭をわしゃわしゃとかき乱しながら大声で言うジャックに反抗して離れようとしていうが


「離れろよ!って・・・すみません」


 自ら元のポジションに戻る。巨漢な上に顔がオークよりも怖いし気分を害されたら殺されてしまうかもしれない、そんな野生の感により僕は彼の手元に静かに戻った。


「先輩怖がられててウケル、クスクス、やあロイド君だっけ?私はクイーン・パトリオ、クイーンって呼んで、こいつガタイはすげーけどメンタルボロボロだからな、肉塊」


 少しお調子者そうな雰囲気を醸し出し、長く青い髪を靡かせる女性が僕に近づいてきて固まっている僕の手を無理やり掴んでよろしくと言いながらそう言うとジャックはいつの間にか消えていた。


「そんなごどいわなぐでいいじゃん!ずぎでごんながらだじでるんじゃないやい!」


 探してみると半べそ掻きながらいつの間にか彫られていた穴の中に入って丸まってクイーンに向かって言っていた。


「ほらなロイド、お前もジャックのダルがらみが嫌ならこのぐらいズバッて言ったら離れてくれるから使うと良いよ」


「――――やめときます、なんかどっちもどっちなんで」


「五月蠅いなあ、巨漢くそオークとギャルは黙ってろよ」


「誰がギャルじゃ!」


「オーク!ぶわああん」


 火に油を注ぐ形に声がしてきた方向を注視すると誰かが草原に寝そべってるのが見えた。

 歩いて近づいてみるとゴーグルをクビに下げて横に狙撃銃のような物を置いた二十歳くらいの顔立ちの良い男が草原に寝そべっていた。


「あぁ?、ああ~ロイドだっけ、ロジェ・キングだ。呼ぶ時はどちらでもいい、さあ戻った戻った。眠りの邪魔だ」


 片目を開けて僕を視認した後そう言い、シッシと虫を掃うように手首を動かしてきた。


「アリス、こいつらは何なんだ?」


 最終的にアリスに近寄って聞く。


「ジャックが言ってた通り、お前が奇襲作戦の時に組む奴らだ。どれも腕は一流だ心配するな、それとお前をキエラと同等に戦わせるように訓練してくれる教官でもあるな」


「は、はあ?!」


「まあそう言うこったい、気張れよロイド、こいつら容赦ねえから死なねえように頑張れ、それじゃ」


「ちょっアリスって」


 アリスはロイドを残して転移でどこかに行ってしまった。


「あはは、これからよろしくお願いします」


 ジャックは穴の中で泣き、クイーンは寝ているキングの処でガミガミと言っており誰もロイドの言葉なんか聞いてすらいなかった。


「はあ、本当に大丈夫かこれ―――」


 螺旋階段で言ったあの言葉をこんな変人たちを見て撤回したくなるロイドであった。

900pvありがとうございます。

前のサブタイトルに決意なんか入れといて本命はこっちでサブタイトルにしたのを後悔している今日この頃です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ