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第一話「呼び出しと刃傷の扉」

 魔族がローゼンに現れてから一か月後、ローゼンは平穏な日常を取り戻していた。

 実際ローゼン内の被害は無く、ローゼン外の草原に多くの血だまりが出来ていたぐらいだった為、掃除をして土を盛れば襲撃時の前と同じ姿を短期間で取り戻すことが出来た。


「ロイド、こっちに来てくれ!」


 ロイドは退院後すぐに憲兵の仕事に戻った。

 入院時に授与式をしてもらい転生勇者の側近としての証となる紋章を新しく貰った憲兵服に付けてもらった。

 短期間でこれだけ早い昇級は例を見ない事らしく、授与式の立ち合いに同席していた試験監督だった人がこちらを凝視しながら冷や汗をかいているのが見えた。勇者の側近は地位としては上から三番目で、王の下に勇者、勇者の下に側近という形になっている。故に職権を乱用して試験監督をクビにすることが出来るのだがやらないでいた。

 僕の目的はあくまでリーリエを探す事だから本質から外れて何かやるのは気が引ける。


「どうしたんですかディアゴさん」


 野太い声で顔の堀が深めなガタイの良い男。僕と同じ勇者側近のディアゴさんに呼ばれて勇者宮廷の大広間にやって来た。


「ロイド、この仕事には慣れたか?」


「えぇまあ――」


 実のところ、側近てのは名ばかりで仕事のほとんどがデスクワークで収束しているので慣れるも何もなかった。

 ちなみにこの側近の仕事の一番の敵は堕落としてブクブク腹が膨れやすく運動不足になってしまう事だけだ。


「そうかそうか。それは置いておいてだな、お前を呼んだ理由だがな」


 少し周囲を見た後にディアゴは耳打ちでロイドに話しかけた。


「勇者様がロイドに見せたいものがあるらしいんだ。どうやらお前だけに御用でな自室に呼んでくるようにってことだ。今から手順を言うから覚えろよ、一度しか言わないからな。  

 大広間を出て二階に上がったら202の書庫に入るんだ。

 入口から見て右奥にある暖炉の中に入ると小さなボタンが左奥に付いてるからそれを押す。

 その後に扉が開いたら魔方陣が描かれた部屋があるからそこでこう答えるんだ。

 ″電気羊は元気かい?″ってね、手順はこれで全部、覚えたな?。俺がこの部屋を出た後、お前は今の言った通りの行動をするんだ。そしたら勇者様の自室に繋がるようになってるからそこで勇者様が来るのを待ってろ、下手な真似はするなよ」


 低く覇気のあるその声に背筋に悪寒が奔った。

 唐突過ぎることに困惑しながらもディアゴの威圧感にやられて少し間を開けてから「分かりました」と言った。

 それにしても勇者様が僕に何の用なのだろうか?もしかしたらリーリエの事についてかもしれない。


「それじゃあ俺はここで」


 ディアゴは大広間を出ると玄関の扉を開き、そのまま外に出て庭園行き他の側近たちとどこかへ行ってしまった。

 ガチャリと扉が自然に締まるのを見た後、ロイドも大広間を後にしてディアゴの言っていた二階の書庫に向かった。

 そういえば書庫には一度も行ったことが無かったな、大きな本棚に本がこれ見よがしに敷き詰められているのだろうか?

 202のナンバープレートが扉の上に付いている部屋の前に付いた。この中がどうやら書庫らしい。

 ドアノブを手で握り右に回して扉を開けて中に入った。

 ホコリと本の落ち着く匂いが混じりあうその部屋は本棚などはなく本が地べたに置かれ、レンガを積むが如く上に上にと重ねられていた。

 ざっと辺りを見回してみると古く貴重そうな瓶が木の椅子の上に置いてあったり、壁紙が所々剥がれかかっていたり、とにかくここの書庫の整備は乱雑過ぎていた。

 勇者様の用件が済んだら大掃除をしようとロイドは心に決めた後にディアゴが先程言っていた暖炉に目をやった。


「書庫に暖炉・・・火事になっても知らないぞ」


 誰かにぼやく様に言った後に暖炉の外観を見た。ざっと見、縦横五十センチほどで身長170糎のロイドは四つん這いになりながら中に入った。


「キッツ!それに炭が服に、はあ―――新しい服買ってこよ」


 ブツブツ言いながらディアゴが言っていた左奥を探しているとに五糎程の壁と同色のボタンを見つけた。躊躇うことなく押してみると入ってきた扉が突然ガチャリと音をたてこの部屋の扉に鍵を閉めた。

 次にジリジリと暖炉内の右壁が上がり始め、ロイドがそちらに目をやると新たに小さな部屋が出て来た。

 四つん這いでそのまま奥に入り、新たな部屋に入ってみるとそこは先程の部屋と同じぐらいの広さがあった。


「魔術による部屋の縮小化と共に内部面積の増大化かな?」


 その部屋に目立った家具などは無く、あるのは部屋の中心にある魔方陣だけだった。

 円形の中に無数の文字と数字により作られていた魔方陣の中心、線が交差してバツの印が出来ていた場所に立ち、ロイドは言った。


「″電気羊は元気かい?″」


 言った次の瞬間視界は歪み、眩暈と吐き気に襲われた。

 眩暈と吐き気が治まった時には先程とは違う、洋風のインテリアがたくさん置いてある場所でロイドは安楽椅子に座っていた。


「え?」


 瞬間移動は初めてだったもので驚きを隠せないでいると眼の前の大きな扉が開き、そこから一人の男が出て来た。


「やあこんにちはロイド少年、戦闘以来だね」


 そのハスキーな声に聞き覚えがあった。


「キエラ様ですか?」


 あの時は意識が朦朧としている事もあり、声以外には何も分かっていなかったが特徴的な声であったのですぐに分かった。


「もしかして少年、俺の事を忘れていたのかい?」


「あの時はちょっと、返事を返すので一杯一杯でしてですねえ」


 たじろぎながら言う姿にキエラは腹を抱えながら笑っていた。


「すまない、そうだったなクスクス、少年は一人で飛び込んで行ったんだから仕方ないかクスクス」


 その笑顔はどこか幼く、それでいてどこか闇を抱えていそうな顔だった。

 新調はロイドと同じくらいかそれより少し上で茶色の髪に右目に付いている泣きぼくろと白い顔が特徴的だった。 


「それで要件は何でしょうか?」


 話題を変える為にロイドは呼ばれた理由をキエラに聞いた。


「あぁそうだった。君さ、短剣使いだろ?ここの武器庫に君に合いそうな短剣が幾つかあったから貰ってはくれないだろうかと思ってね。君今武器その手袋だけだろ?」


 前の戦闘でダガーナイフは使いものにならなくなっており、武器を無くしていたロイドは日常的に手袋だけはつける事にしていた。武器をもっていない憲兵なんてもっての外らしいので。


「良いんですか?」


 絶好のタイミングに椅子から身を乗り出してキエラに再確認すると


「本当さ、少年は面白いからね、気に入った者にはよくこうしているんだよ」


「ならお言葉に甘えて」


 ロイドがそう言うとキエラは「こっちだ」と言って奥の方へと移動した。椅子から離れキエラの言う通りに付いて行った。鉄筋コンクリートで覆われた壁が廊下に寒気を出させる中、ロイドは新しい剣にありつけるとウキウキと気持ちが高ぶっていた。


「ここが武器庫、好きなのを持って行ってくれ。それと俺は自室に戻ってるから選び終わったらさっきの居た部屋の隣の部屋に呼びに来てくれ」


 そう言うとキエラはロイドを武器庫に残し、扉を閉めて出ていった。

 武器庫には刀から拳銃、ハンマーや水晶と多岐にわたる戦闘用の武器が置いてあった。

 武器庫自体の大きさはそこまでだがその中を埋め尽くす武器の数々は圧巻でありどこからこんなに多くの武器を手に入れたのか聞いてみたいものだった。

 部屋の奥に進んでいくと大きな机の下に鞘付きの短剣が何十本も籠の中に入っているのを見つけた。それだけでなく机の上にも横一列に綺麗に並べて置いてあった。


「こんなに沢山―――」


 茫然と立ち尽くしながら圧巻の光景に心打たれていたロイドだがすぐさま我に返り、しゃがんで机の下にある籠の中に入っている短剣を一本ずつ鞘から抜いて見ていった。

 刃がギザギザと尖っているものから刃が逆になっている可笑しなものや装飾が多すぎて鞘から抜けなくなってしまっているものまであった。


「好きものにも程があるぞこれ、まともなのは無いのかよ!」


 あまりにもまともな剣が少なすぎて気が経ってしまったロイドは少し手荒になりながら自分に合う短剣を探した。


「これで籠の中は最後かって―――刃がない?」


 その短剣に刃は無く柄の出っ張りだけが鞘の中に入っていた。

 奇妙な剣だな、これはもしかしたら何か隠されてるかもしれない、一応貰っておこう。

 上着の内ポケットに鞘を外し、柄だけの状態にした短剣?を入れた。


「次は机の上っと」


 机に手を掛け乍ら立ち上がり右から順々に見ていくと心惹かれるものがそこにはあった。

 鞘は黒く外して中の刃を見ると赤色に一本の黒い線が入った綺麗な剣だった。

 即決でロイドはその短剣を貰う事にした。


「これで良いかな、よし!」


 短剣を選び終えたロイドは武器庫から出てキエラの言われた通り戻ろうとしたが何やら突っかかるものがあった。


「この道―――奥には何があるんだろうか」


 探求心ともしかしたらの心に促されるまま戻るのではなく奥の方へと突き進んでいった。

 突き進むにつれて鼻腔に強い刺激臭がするようになってきた。


「なんだこれ?硫黄?いや違う、どこかで嗅いだことがある筈だ―――そうだ血だ!」


 その匂いの正体を予測したがそれはあってはならない匂いだった。

 胸騒ぎがする。この先に行けばその答えが見つかる筈だが、それと同時に何かを失ってしまいそうで怖い。

 けれど足は着々とその異臭のする場所に向かって歩き進んだ。

 そして一つの部屋の前に着いた。

 扉の上にあるナンバープレートには数字を掻き消すように横に深い刃傷が出来ていた。

 喉が鳴る。嗚咽しそうなこの匂いと途中から聞こえてきた微かな唸り声の様なものの正体を知るべく震える手をドアノブに掛けて捻じりながら押し、扉がギギギと錆びて軋む音を鳴らしながら開いてゆき、ロイドは部屋の中に視線をやった。

 そこにあったのは――――

文章に関しては自分なりのモノがまだ見つかっていないのでコロコロと表現の仕方が変わったりしてしまうと思います。できるだけ読みずらくない文章で綴っていくようにしますのでどうぞよろしくお願いいたします。

最後に 100pv達成有難うございます。まだ三話しか出ていないのに驚きです。転生モノの人気を改めて痛感しました。それではまた―――

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