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第二十話「キングと秘密」

「一番左……あった!、え?ここって……」


 クイーンの期間が終わりキングの期間に入った初日。

 ジャックが居ると言われた場所に着いたのだが、


「て、鉄板?」


 扉は厚く、鉄板の様に硬い何かを扉としていた。他の部屋も見渡してみるが視界に映るのは木の扉ばかり、どうやらキングの部屋だけらしい。

 気を取り直してドアノブに手を掛けて開こうと後ろに引っ張ってみるがビクとも動かなかった。


「何なんだいったい……」


 思いっ切り引っ張っても扉は動かずもしかしたらと前に押してみるがそれでも動かない、そんな扉を開ける為に奮闘していたロイドの後ろから


「何やってるんだよ」


 と声が聞こえてきた。

 どこかで聞いたことがある声、ジャックでもなければクイーンでもない、これは


「キング!」


 後ろを振り向き顔を確認してみると、そこに居たのはゴーグルを首に掛けた金髪の男性キング。おまけに手には紙パックのコーヒー牛乳を持っていた。


「何やってるんだって聞いてるんだ」


 少し怒り気味にそう聞いてきたキングにロイドは何となく弁明をしていた。


「いやこれは違うんだ。僕は唯、君の部屋に入りたかっただけで、いやその前に僕は君に会いに来たんだよ」


 少し引き気味に後ずさったキングの口から


「お前、もしかして……ホモか……」


 あぁ、どうやら僕はホモだと思われているらしい、そりゃあそうか、さっきの自分の言葉を自分に言うとしたら僕もホモかと思ってしまうだろう……


「違うよ!えっと……そうだ特訓!、期間に入ったから教えを乞うためにこうやってここに来たんだ。」


「なんだそんなことか、ちょっとそこ退け」


 ロイドの言葉を聞いてキングはあっさりと流してロイドを退かして扉の前に立った。


「開かないよその扉?」


「開かないだあぁ?!」


 なんとなくロイドがそう言うとキングは一回首を回して見た後にドアノブに手を掛けて右に押すと扉が開いていった。


「……いや、いやいや、ドアノブで横にスライドって……」


 普通そうじゃないだろ、へっこんでいる部分に手を掛ける奴やパイプみたいなのを曲げたアレだろ普通。

 なんてロイドが思っているとキングが中に入ったところでこちらを向き


「入るなら入れ!」


 と少し強気に言った。言われるがままロイドは中に入り扉を閉める。

 カチッとキングは電灯を点けるスイッチを押して部屋を明るくする。


「う、うおおおお!何じゃこれ!」


 明かりにともされた部屋を見てみると壁には大量の狙撃銃がフックに掛かっていた。


「こっちだ」


 キングはそれに目もくれずに奥のもう一つの部屋に呼んだ。

 キングに呼ばれて向かったその部屋は以外にもさっきと打って変わってあっさりとした部屋だった。


「ここは普通なんだな」


 入ってすぐにそんな言葉がロイドの口からこぼれるとそれを聞き逃すことなくキングは返した。


「あっちは俺のアトリエでここが生活スペースだ。それぐらい察せよ」


 ごもっともだ。

 ロイドとキングは机を挟んで向かい合わせにして席に座った。


「それで?特訓だっけか?」


 興味なさげにそう聞いてくるキングに「そうだ」とロイドが言うと


「ハッキリ言おう、お前に教える事はありません!」


「は?」


 キングの言葉に素で阿呆な声が漏れてしまった。


「だからないって言ってるの、無し、ノー、いや」


「最後のはお前の感情だろ、それに特訓が無いってどういうことだよ?」


 ロイドがそう問い詰めるとキングは呆れながら言った。


「よく考えてみろよ、お前はキエラと闘う事だけの人間だ。そんな奴に俺が何を教えるんだ。赤ちゃんのおもりの仕方か?銃の使い方か?マッチョゴリラの育て方か?」


 クイーンと似ている様な事をキングも言ってきた。


「ならなんでお前は一か月間の特訓期間を設けたんだ?」


「そんなの簡単さ、ただ三か月後だったから、単にそんな事だ。中身なんて関係ない丁度三か月後に攻め入ると聞かされたからそうしたまで」


 なんて身勝手な男なんだろうか、ロイドはそう思いながらも何かないかと聞いていくが、


「何もないよ、それにお前何か策があるんだろ?ならそれを試す期間にしろよ、何度も言うが俺がお前に教えてやれることは無いんだ。相手は術を封じる奴だぞ、そんな奴に使えるのは精々実弾の銃だけだが相手にはクレイもある、効く以前に通りやしない、分かったか!」


 キレ気味にそう言うキングを見て本当に教える気は無いようだった。


「それに……今のお前なら一か八かどうにかなるんじゃねえのか、ジャックに扱かれた分、筋力はついたろうしクイーンからはキエラに会う前にくたばらない為、小銃の使い方を教えてもらったんだろ?それでいいじゃねえか、俺なんか後衛でチマチマ一人ずつ撃ち落としてお前をキエラまで送る事しか出来ないんだからな」


 次に出たその言葉にロイドは少し勇気をもらった。ロイドの特訓を見ていたのか定かではないがキングは言葉にして言ってくれた。何故か照れる……


「あ、ありがとう……」


 ロイドは小さくそう言うとキングは席を立ちロイドに指を指していった。


「後ろは任せとけ、だからキエラに勝て、お前の仕事が無事に終わることを祈ってるよ」


 そう言った後にキングは勢いよくロイドの背中を押して部屋の外へと出した。


「そう言う訳だ。もうここに来るな良いな?」


「なんだよそれ」


「良いから、分かったな、後!作戦実行当日にプレゼントがあるから期待してろよ」


 首にかけてたゴーグルを装着してキングは扉を閉めた。


「何なんだろうかこの人……」


 キング、ジャック、クイーン、この三人それぞれが不思議で何故か優しい、なんとも僕の世界はへんてこなのだろうか?


「分からない」


 こんな人たちをアリスはどうして僕と組ませたのか、もっとまともな人が居るならそっちの方が何倍も良いのだが、まあ面白い分には良いのだけれど……


 なんてロイドはあやふやな感情を抱きながらキングの部屋を後にして何となく食堂に行くとクイーンが居た。


「やあクイーン、いつもここに居るね」


「ロイこそ」


 何とも普通の会話……


「元気か?」


「そこそこ」


 ……いや、これはダメダメすぎる、なんだ元気かって質問は!他に何か……


「空がきれいだね」


「そうね」


 いや、空無いから、上コンクリートだから……何かが可笑しい。


「ねえロイ」

 

「なんだ?」


 そんな時、クイーンは少し顔を強張らせながらロイドに聞いた。


「貴方、何を作っているの?」


 その言葉に戸惑う、答えていいのか駄目なのか、もしかしたら僕が思っているモノではないかもしれないし……


「もしかして手帳に書いてあったやつなの?」


 ズキンッと心臓に杭が打たれたかのようにその言葉が胸を刺し、ロイドは動揺する。


「何でそれを……」

3700pvありがとうございます。

遅れに遅れ、今頃投稿……すみません!

どうしてもパソコンに向かう時間が取れずにこんな事になってしまいました。

出来るだけ間は開けたくないのですが上手く事は進まないものですね、この一部が終わったら大改稿に今以上の空きを作ってしまうかもしれないと思うと怖いものです。

それでは次もよろしくお願いします。

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