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第十六話「透明化と手帳」

「お・・お・・い・・・起きろよッ!」


「はいッ!」


 草原に顔面から突っ伏していたロイドの背中にジリジリと何かがめり込む感覚に襲われ意識を取り戻し、勢いよく起きたロイドだったが


「ちょっ、痛ッ!外で死骸に変わり果ててると思ったら急に何よ」


「えっ?あぁクイーンか」


 寝ぼけまなこで傍らを見てみると尻もちをついたクイーンが半泣きになってこちらを見ていた。


「何してんだよこんな所で?」


「それはこっちの方よ!地上に上がってきた途端私の視界にロイが映り込んだから心配して駆け寄ってきたのに」


 ロイドが差し出した手を取り立ちながらクイーンがそう言ってくるが


「いやどうせ僕が寝てるのを良いことに背中をガシガシ踏みつけてたんでしょ、なんか妙に背中が痛いし」


「そ、そんなことないわよ!特訓始めるわよ」


 そっぽを向きながらクイーンはそう言って結界を出現させた。


「僕が何であそこで気絶してたのか聞かないのか?」


「気絶してたの?!はぁ~どうせ阿保みたいにジャンじゃかマナを大量に消費してたんでしょ」


「・・・はい、そうです」 

 

 呆れ顔でロイドにそう言ったがクイーンの予想が的を射ているので何も言い返すことが出来なかった。


「そんな事よりも今回はボマリン倍増で特訓よ、分かってるわよね」


「ああ勿論!昨日のうちに対策は考えたさ」


 鼻息を荒げながら自慢げにロイドがそう言うとクイーンは口角を上げてニヤリとしながら


「そう、なら期待してるわ、精々頑張って」


 指を鳴らしボマリンを六体召喚した。

 ロイドも自分の位置に就き、スコープ越しにボマリンの一つに照準を向けた。


「それじゃあよーいどん!」


 手を振り上げたと共に急激に加速してロイドに向かってくるボマリンを前に


「記幻の魔術よ、マナの路を開き我に力を与えよ【ゲデヒトニススタグネーション】【ダダダダダダダダダダ】」


 ロイドは詠唱後すぐさま連続射撃を始めた。


「ほほぉ~面白いじゃん」


 クイーンがそんな事を呟いてる間にもボマリンはロイドの連射に避けきれず爆破していき残り一体にまで追い込んだ。


「これなら楽勝、ってえぇ!」


 目の前に居たボマリンが一瞬にしてどこかへ消えてしまった。


「言っておくの忘れたけどボマリンの一つに透明化の魔術をしておいたから頑張ってちょ!」


「ずっりい!それ先に言えよ!」


 ロイドはクイーンの言葉を聞いてどこにいるかも分からないボマリンから避ける為壁の隅に近い右に走り始めた。


「見えない敵とか相手絶対にいないよねえ!こんな事してもキエラとの戦闘で役に立ちませんが?!」


「ガタガタうっさいわねえ、キエラだけが敵だと思ってんなよ、お前が所属してた憲兵も相手なんだからな、キエラすぐに会えるなんて思うなよ!」


「そんなあ~」


 ロイドが相手にするのは国でありキエラ一人だけじゃないと再認識して愕然としながら見えないボマリンから逃げていると

 ギランッ!と何やら近くで光ったのが気になり目を向けてみるが時すでに遅くボマリンが右脇腹にボンと当たりながら爆発した。


「はい終了~~~」


 クイーンはすぐさま結界を解除してロイドに近寄った。


「戦闘に集中しなきゃダメだろ、あくまでこれは特訓だけど実戦になったら死んでるんだぞロイ、もっと私にかまけてないでないでボマリンに集中しな」


 爆発して飛び散った部位が戻っていき痛みが消えた頃にロイドが


「は、はい」


 とどこか不服そうにクイーンに言うと


「もう一回だ。マナはまだ残ってるだろ」


「分からないけど残ってると思う」


「ならやろう、身体に特訓で得たものを染み込ませなくちゃ」


 すぐさま結界を出してロイドを定位置に向かわせてボマリンを新しく六体出現させた。


「準備は良いかい?ロイ」


「は、はい・・・」


 何とか定位置までは走って来たもののマナよりも爆発や走りった事による体力消費が激しかったので汗がダラダラと額から落ちてくる。


「二戦目!よーいどん!」


 先程と同じ様に術を唱えた後連射に移り、残り一つまで難なくこれたのだが


「クッソ!また来た」


 その場から走り出して見えないボマリンを必死で探すが文字通り見える訳もなくただ走るのみだった。


「走るだけじゃ勝てないよロイ!」


「分かってるよそんなの!でも見えない敵にどうやって対処しろって言うんだ!」


 クイーンの言葉にキレ気味に返答し、聞いてみると


「透明化と言ってもその場に隠れるのが基本だ。その状況を少し変えてみると良い」


「なんだよそれ・・・」


 走りながらクイーンの言っている事の意味を探ってみる


(隠れるのが基本・・・状況を変える・・・ならあれか?)


 ロイドは片手で小銃を地面に向けて詠唱を唱え始めた。


「幻視の魔術よ、マナの路を開き我に力を与えよ【ヴァイスラウホ】【射出】」


 地面に撃ちこんだ弾から白煙が一瞬にしてその場を包み込むと一瞬ジリッ!と何かが光ったのを見て


「【ダダダダダダ】」


 小銃を構えて見えた場所に撃ちこんでみるとボマリンが爆発する音がした。


「あちゃ~ヒントがデカすぎたか、今度は気を付けないと」


 ロイドがボマリンを撃ち落とすのを見たクイーンは小声で少し反省交じりにそう言いながら結界を解き、またロイドに近づいた。


「いやはやさっきよりも早く終わっちゃったよ、ざっと十分かそこらとは」


「そんなもんなんですか?」


 ロイドの体感では三十分は掛かったんじゃないかと思うほどの疲労とマナの消費量だった。


「それにしてもロイは凄いね!色々な術を持ってるなんて」


「いやそんな言われるほどでもないですよ、術自体の強さはほんの少しです。弾を飛ばすのだって凄くマナを使うんで向いてないかもだし」


「そうだよね、分かるうん私もそう思う」


 深く頷きクイーンは次に


「それじゃあ今日はこの位で良いでしょ、次回は透明化六体だから頑張ってね!」


「ちょ待て、透明化六体って逃げんな!」


 クイーンの肩を掴んで最悪の言葉について追及しようとするがロイドの掴んだ上着を脱ぎ捨てすぐさま下に降りていった。


「この上着どうしろと?」


 クイーンの上着を手に持って立ち尽くしていたロイドであったが昨日シャワーをしそびれたのを思い出してクイーンの後を追う形で地下に降りて行きクイーンの上着を自室に投げて着替えと歯ブラシを持ってシャワー室に向かって行った。


「お邪魔しま~す」


 隣の部屋に隠れていたクイーンがロイドの自室に入り自分の上着を手に取り帰ろうとする中机から落ちた古びた手帳を見つけた。


「何だこれ?・・・!」


 何となく開いて中をパラパラと捲りながら見た後神妙な面持ちでクイーンは手帳を机に置くとすぐさまその場を後にして行ったのだった。

2800pvありがとうございます。

近いうちと言いながら今日のうちに出す謎多めな私ですがまあ大丈夫でしょ!(何が?!)

それではまた。

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